「俺に迷惑かけるなよ」「感じ悪いぞ」ワンオペ妻がブチぎれ、“もう限界！”モラハラ夫に起こった天罰とは…

　妊娠中のつわりで苦しむ日々を過ごす中、「子どもが欲しいって言ったのはお前だろ」、「妊娠は病気じゃない」などと心ない言葉を投げかける夫。産後もその態度は変わらず、ほぼ“育児放棄”の状態。自分勝手な夫に期待するのをやめた妻は、慣れない育児に悩み追い詰められていく。そして訪れたある悲劇をきっかけに、夫は“男性が妊娠出産する”パラレルワールドに飛ばされてしまう。漫画『俺、今日から妊夫になります』（comico）で描かれるのは、SFテイストを盛り込みつつも女性の負担や心境を理解しようとしない男性が、自分が妊娠することで徐々に心を入れ替えていくというリアルな物語。「うちの旦那に読ませたい」と読者から大反響を集めた同作者のしおのこうじさんに、作品が生まれた背景について聞いた。

――夫・真也は、妻の真綾が産後も仕事を続けることに「俺に迷惑をかけるなよ」と発言するなど、モラハラ言動がリアルです。

しおのこうじさんインターネットで夫に言われた言葉や、こんなことをされたというエピソードをいろいろ調べて、自分のなかで印象に残ったものを盛り込みました。私の友だちの旦那もわりとモラハラタイプでして、彼女がされたり言われたりしたエピソードも多いです。

――お友だちから旦那さんへの悩みを聞いていたんですね。

しおのこうじさんそうなんです。お金遣いがすごく荒くて、自分の稼ぎ以上の買い物をしてしまうそうです。さらに「俺が稼いだ金なんだから好きにしたい」と、経済的DVみたいなこともしていて、友だちは悩んでいました。

――それはつらい状況ですね。

しおのこうじさんあと、私の父親も結構モラハラ的な発言をしていました。母に対しては、「メシ、風呂、寝る」という態度で、育児はお前の仕事、俺は稼ぐ、土日は寝かせてくれという感じです。昔の人なので、それが当たり前みたいな感じでしたが…。

――妊娠、出産中のエピソードもリアルで、読者からは「共感しかない！」といったコメントが多かったです。

しおのこうじさんあまり自分だけの意見で偏らないように、友だちの妊婦さんや出産経験者にいろいろ聞いたり、思っていることをお互いに話し合ったりしました。ただ、「女性はこんなに苦しんでいるんだぞ」というエピソードだけだと、読者が押しつけられているような気分になって「なんだよ」と思ってしまうので、なるべく客観的に描くよう気を付けましたね。

――出産シーンはかなり緊迫感がありましたね。陣痛から出産にいたる病院でのシーンなど、お互いを思いやる夫婦の関係性が印象的でした。

しおのこうじさん出産シーンは、自分でもかなり頑張って描いたなと思っています。キャラクターの心情を丁寧に描きたかったので、何話を出産シーンにするか担当編集さんと話し合いました。描いているうちに、自分が出産した時のことを思い出して腰が痛くなりましたよ（笑）。

――陣痛や出産直後の感覚など、具体的な表現で描かれていたので感情を込めて描かれたことが伝わります。

しおのこうじさん作品中に流産をしたキャラクターが出てくるのですが、そのキャラクターの気持ちを描く時に、悲しくなってしまったこともありました。じつは私自身が流産と死産を経験しているので、感情移入しちゃいましたね。

――それだけ想いのある作品ということですね。物語は妊娠出産を通して、かつて妻にひどい態度をとっていた夫の気持ちが変化していきます。

しおのこうじさんやっぱりつらさや苦しみを体験することで、一番変わるのかなと思います。出産を終えて気持ちが変化するシーンは、漫画を描き始めた時点で、こういうラストにしようというのを決めていました。

――夫婦が生活するうえで大事にするべきことは何だと思いますか？ この作品を通じて感じたことを教えてください。

しおのこうじさんシンプルですが、基本は“あいさつ”だと思っています。「おはよう」「おやすみ」「ありがとう」、これを言い合えれば、とりあえずの問題はクリアできるのではないでしょうか。男性は妊娠出産を経験できないので、女性が苦しんでいても「ほかの人はこうだから…」と言いがちになってしまうと思うんですけど、決してそういうことはないということも伝えたいです。不調は一人ひとり違うので、パートナーの様子を見ながら寄り添ってほしいと心から思います。
（取材・文／渡辺麻美）