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辻凪子、“憂鬱”の乗り越え方「めんどうくさい日常も、考え方次第で愛しく思える」

2023-04-20 eltha

辻凪子

辻凪子

 喜劇女優を目指して高校時代から舞台経験を積み、大学在学中には『べっぴんさん』『わろてんか』『まんぷく』『おちょやん』などNHK朝ドラに立て続けに出演、昨年はテレビ東京連続ドラマ『晩酌の流儀』で注目を集めた気鋭のコメディエンヌ・辻凪子。「日本一の喜劇女優」を目指すかたわら、映像監督としても邁進し、評価を得てきた彼女に、コロナ禍で気づいたという「日常の大切さ」と、「憂鬱を面白さに変えるコツ」を聞いた。

「撮影現場で生まれるユーモアもたくさんある」自然体だから気づけたこと

(C)『凪の憂鬱』

(C)『凪の憂鬱』

━━大学卒業後、大阪から単身上京し、3年が経ちました。東京での生活はいかがですか?

辻凪子 幼馴染が10人くらい住んでいるご近所付き合いが密な環境でずっと育ってきたので、できれば今も大阪の実家から通いたいんですけど(笑)、自立して自分で生きていくという経験も、今の自分にとっては大事なのかなって思っています。東京には面白い人がいっぱいいるし、時には疲れることもあるけれど、毎日が刺激的ですからね。ただ、コロナ禍を経験して、意識と生活はだいぶ変わりました。

━━どんなふうに変わったんですか?

辻凪子 大阪にいた学生時代は、とにかく作品に出たくて、仕事がしたくて、めっちゃ焦って突っ走っていましたが、コロナ禍になって、家でご飯を作るのも楽しいし、映画はもちろん、小学生の頃から好きだった巨人戦を観るのも楽しいし、日常の中にも面白いことがたくさんあるんだってことに気づきました。前だけを見てアウトプットしかしてこなかった生活から、趣味が増えて、インプットを楽しめるようになった感じです。

━━大学在学中に手がけた映像作品が国際映画祭で入選したり、昨年は活弁映画『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』も注目を集めるなど、映像監督としても活躍されていますが、監督業においてもその気づきはプラスになっていますか?

辻凪子 そうですね。私は今まで、ファンタジーに突っ込んでいくタイプだったんですけど、日常の中のユーモアを描きたいと思うようになりました。あと、これまでは、台本を書いて、絵コンテを書いて、ガチガチに決め込んで作品を作ってきましたが、撮影現場で生まれるユーモアもたくさんあるということに、昨年、磯部鉄平監督と作った映画『凪の憂鬱』で気づかされたんです。大阪のおじいちゃんおばあちゃんたちとゲートボールをしたシーンなんですけど、みんなカメラとか気にせず、自由に発言して、それがめっちゃ自然で面白くて、すごくたくさんの発見がありました。

受け入れることで“憂鬱”を忘れる主人公「見習いたいと思いますね(笑)」

(C)『凪の憂鬱』

(C)『凪の憂鬱』

━━『凪の憂鬱』(4月21日より順次公開)は、磯部監督と「気が向いたときに」制作するというスタンスで、これまで短編映画の『高校生編』(2018年)と『大学生編』(2020年)を発表され、今回は、初の長編、劇場公開作として、社会人1年生になった凪の“憂鬱”が描かれるそうですね。

辻凪子 今回も、社会人になって初めての有給休暇に彼氏にフラれ、直後に、友達から怪談やゲートボールに誘われたり、仕事の呼び出しが入ったり、親友と大喧嘩したり、その時点では憂鬱なことだけど、終わって考えてみたら、笑えるネタになるようなことがいっぱい起きます(笑)。

━━“憂鬱”な状態でも、友達からの誘いを断らず、マイナスなことをユーモアに変えていく凪にはいつも励まされます。

辻凪子 憂鬱なことがあると、ふつうは誰にも会いたくないっていう感情になりますよね。でも、凪は、「なんでやねん!」って言いながらも、人を受け入れるんですよね。『ちびまるこちゃん』の永沢くんみたいに、小杉くんや藤木くんの悪口を言いながらも一緒にいるみたいな(笑)。文句を言いながらも、好きな友達といて、帰ってきた後に、家で思い出し笑いをしながら、行ってよかったなって思っている感じ。で、いつの間にか憂鬱だったことを忘れている。

━━憂鬱を抱えて殻に籠るのではなく、日常生活を普通に送ることで、憂鬱を乗り越えているんですね。

辻凪子 その乗り越え方はエライなって思うし、見習いたいなって思いますね。生きていると憂鬱なことって山ほどあるけれど、めんどうくさい日常も、考え方次第ですごく愛おしく思えたり、忘れがたい一瞬になったりすると思うんです。たとえば、憂鬱なバイトも、お客さんのしぐさを観察する楽しみを持つだけで、楽になりますよね。それができる人は、凪のように、日常の小さな幸せに気づけるんだと思います。

あと、凪は、常に、客観的に自分のことも人のことも見ていて、めっちゃ人のことを考えているんです。だから、喧嘩になっても、友達のために言いたいことはちゃんと言う。平凡な日常の中にも、随所に凪が確信をつくてくるシーンがあって、グッときます。

「チャンスがある限り、いろいろな作品や役柄に挑戦してみたい」

(C)『凪の憂鬱』

(C)『凪の憂鬱』

━━辻さんご自身は、憂鬱なことがあったときには、どのように乗り越えられているんですか?

辻凪子 オーディションに落ちたときとか、落ち込んだときは、必ず、ハンバートハンバートさんの『恋の顛末』を聞きます。最初の歌詞に「終わったことは終わったことと片づけて次に行けばいい」っていうのがあって、それを聴いて、うん、もう終わったことだ、次に行こう!って思っています。

━━まさに凪ですね(笑)。

辻凪子 そうかもしれません(笑)。私も嫌なことがあるとTwitterで笑いに変えたりしていますので。でも、凪とは、考え方は違う部分もあります。たとえば『大学生編』で「歌手になりたかった」というセリフがあるんですけど、凪は子ども時代は夢を持っていたけれど、今は現実を見て生きている。一方、私はというと、今も夢見がちで、小さい頃に目指した芸能界でお芝居の道を突き進んでいる。ただ、目指している方向は違いますが、本質は一緒だと思います。磯部監督も、あてがきのような感じで台本を書いてくださっているので、私としては、まったく力を入れずに、リラックスして演じられるし、凪として楽しんで存在しているだけで作品ができていく。今までなかった経験ですね。

━━映画で描かれる憂鬱のネタのアイデアは辻さんからも出されているんですか?

辻凪子 自転車を盗まれたりとか、日常で起きた憂鬱な出来事は、けっこう磯部さんにLINEしていて、映画のネタにされています。磯部さんも「凪の憂鬱なエピソード、なんぼでも思いつくわあ!」って言っていて、それがとってもうれしいです(笑)。

━━辻さんのコメディエンヌとしての演技力あってのことですね。女優としては、今後、どのような目標を持っていますか?

辻凪子 コメディに限らず、チャンスがある限り、いろいろな作品や役柄に挑戦してみたいと思っています。そして、30代までには、みんなに知られているようになりたいです。監督作品としては、昨年、活弁映画『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』で自分はこれだというものを作れたので、できれば、女優としても、代表作と言われるような作品を作れたらと思っています。あとは、おばあちゃんになるまでお芝居を続けていたいので、『凪の憂鬱』も、おばちゃん、おばあちゃんになるまで続けて、自分にとって寅さんみたいな映画になれたらいいなって思っています。

(文:河上いつ子)

「凪の憂鬱」

(C)『凪の憂鬱』

(C)『凪の憂鬱』

関西インディペンデントシーンで最注目の俳優・辻凪子と、監督・磯部鉄平が気が向いた時に制作される短編作品「凪の憂鬱」シリーズの長編映画化最新作『凪の憂鬱』。
2018 年の「高校生編」、2020 年の「大学生編」を経て、3 作目にして劇場公開となった本作は、契約社員となった主人公・凪の、いつか懐かしくなる素晴らしき平凡な日常を描く長編作品。主演は、映画・ドラマ・舞台など幅広く活躍するコメディエンヌ・辻凪子。映画監督としても活動し、監督作の活弁映画『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』公開で全国的に話題を呼んだ。凪を囲む仲間たちに『シュシュシュの娘』の根矢涼香、『裸足で鳴らして
みせろ』の佐々木詩音、『君は愛せ』の佐藤あみなど注目若手俳優
たちが集結。監督は、「凪の憂鬱」シリーズと同じく撮影から 5 年越しの映画『コーンフレーク』が絶賛上映中の磯部鉄平。SKIP シティ国際 Dシネマ映画祭にて 3 年連続受賞快挙をなし、国内外映画祭にて多数入線受賞する監督が、等身大の凪を追い続ける。

http://bellyrollfilm.com/nagi/
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