森永乳業、研究所が主体となった『生理痛体験会』を実施 発案者の女性「意識を変えられた点で、すごく意義があった」
2025-03-08 eltha

森永乳業 研究本部 食品開発研究所 ウェルネス食品研究室 副主任研究員 元吉智美さん
「社内で開催しない限りは、なかなか体験の場がない」と痛感

生理痛の痛みを体験する男性社員
「『生理痛体験会』も研究所のフェムケア啓発活動の一環ですが、この啓発活動は弊社が将来的にフェムケア、フェムテックの商品を開発するにあたり、開発するための土壌を整える活動となります。フェムケア製品を出した時、開発者自身がその分野を知っていなければいけないですし、男女の相互理解が深まった職場で作った製品でないと、お客様に伝わらないし、説得力もありません。まずは開発する本人たちが知識をつける必要性を感じて、この活動を始めました」(元吉さん/以下同)
今回の「生理痛体験会」を企画したきっかけとなったのは、研究所全体で、フェムケア、フェムテックに関する詳細なアンケートを取ったことだった。
「仕事と両立する上で問題になるような健康課題や悩みがありますか?」という設問に対し、男女の回答にすごく差がありました。男性は悩んでいる人が少なかったのですが、女性は思ったよりも人数が多くて。しかも自由記述欄に書かれた意見が、かなりの割合で生理痛や生理休暇に関する内容でした。女性の健康に関しては、”生理周り”が最も関心が深いことを実感しました。人によって生理痛の強さが違いますし、そもそも男性は『経験しないから分からない』という声もあったので、生理痛体験会をすれば、もっと理解を深められるかなと思いました。
実は以前、私はある展示会で生理痛体験をやってきたんです。その日たまたま男性の上司もその展示会に行っていたのですが、『生理通体験しましたか?』と聞いたら『女性がたくさんいて、とても入れる雰囲気じゃなかった』と。ということは、社内で開かない限り、男性はなかなか体験できる機会がないんじゃないかと思ったんです」
4段階の生理痛を体験、他者の気持ちを理解する貴重なきっかけに

生理痛が体験できる専用パッド
「こうしたイベントでは、当日キャンセルする人が一定数いますが、今回は皆さんきちっと時間通りに来てくれました。それだけ関心が高かったのかもしれないですね」
体験者は、まず専用パッド(2つ)をおへその下の筋肉(腹直筋下部)に装着。スタッフが専用デバイスのスイッチを入れると、パッドが振動し、数分間生理痛を体験することができる。レベルは1、2、3、4の4段階。レベル1、2は鎮痛剤を飲めば対処できる程度だが、レベル3、4になると医者に行く必要もある強い生理痛を想定している。生理のある人が毎月痛みと並行して業務を行っていることを体感でき、部下や同僚の気持ちを理解するきっかけとなる。自身の生理痛が他の人と比べてどのくらいかを確認でき、より痛みが辛い人への配慮にもつながるという。

生理痛の痛みを体験する男性社員
伝わりにくいフェムケアの本質「啓蒙活動を続けていきたい」

「疑問に思ったことを質問される方もいましたし、その場で生理休暇の制度について確認して『何日取れるの?』と話している方々もいました。直前まで『痛いの嫌だな、止めようかな……』と躊躇していた男性も、やり終えて『やって良かった。すごく考え方が変わった』と言っていました。皆さんの意識を変えられた点で、すごく意義があったと思います」
昨今フェムケア、フェムテックという言葉が生まれ、世の中の認知も上がってきている。しかし、「本質の部分はまだまだ伝わり切れていないので、さらに啓発活動を続けていきたい」と元吉さんは言う。
「フェムケア、フェムテックはちょっとした流行などではなく、義務教育の頃から誰もが一般常識ぐらい当たり前に知っているべきこと。でもそこがなかなか伝わりきっていないなと、この啓発活動を通して強く感じました。全ての人がこの分野を知り、健康に生きるために行動できるようにすべきだと思います。私たちも今は研究所で啓発活動をやっていますが、今後は本社や関連部門と協力しながら、この啓発活動を全国の部署に広げる働きかけをしていきたいと思います」
取材・撮影/水野幸則