坪内有ワコールブランドマネージャー
”型にはまった女性像”を打ち壊す、”美意識”のリブランディング 立役者に聞く女性たちの変化【国際女性デー】
2025-03-08 eltha
PROFILE 坪内有
ワコールブランドマネージャー兼ワコールブランド商品部 商品営業一課
ウエルネス事業部で営業・MD、ワコールブランドでボトムMDを担当後2019年に商品営業チーム課長に着任。23年〜リブランディングを統括し24年より現職
判断されるものから、自分で選ぶものへ 日本人女性にとっての”美の変遷”
その際話し合われたテーマのひとつが、「現代の日本人女性が考える“美しさ”とは何か?」。坪内さんは当時の話し合いをこう振り返る。「これまでは美しさを考える時に、“人から見られる、判断される”という視点がかなり強かったと思います。でも今は“多様性”という言葉もあるように、個々が求める美がそれぞれ違っているなと感じますね。美の基準・正解がないというか」。SNSの繁栄で情報へのアクセスが容易になったことで、選択肢が増え、そこから自分にとって美しいものを選ぶ、選択の機会も増えた。そこで「“美”は判断されるものから自ら選ぶものへと変化していったのではないか」と考察する。
これは、近年エンタメコンテンツにも現れている要素だと言える。朝の連続テレビ小説『おにぎり』やオーディション番組『No No Girls』など、ポジティブなかたちでフィーチャーされる“ギャルマインド”。ギャルの見た目ではなく、精神に注目した言葉だ。周囲を気にするのではなく、自分の感性を貫く。ポジティブな思考をするというギャルのマインドが令和の今、改めて評価されている。坪内さんも『No No Girls』の視聴者だったというが、奮闘する彼女たちの姿を観て、「充分才能溢れる素敵な子たちなのに、他人からのNOだけでなく、自分自身が納得していなくて、自分で自分に”No“と言っている。自分自身が納得できないと、満足感は得られないんだと感じました。改めて他人軸だけではなく、自分がいかに納得できるかが追い求められる時代なんだと」。
現代女性を見て感じた、自分自身が納得することの大切さ
リブランディング後に発売された「重力ケアブラ(ノンワイヤー)」
これまで“女性の美”は様々なかたちで世に打ち出されてきたが、今の時代、その価値観は定められるものではない。様々な思い込み、偏見がいまだ蔓延るなかで、いかにユーザーに共感していただけるのか。ブランドメッセージ、ポスターのクリエイティブ、売り場展開…旧態依然としたままであれば、このようなアウトプットにならなかった…? とも言える、大改革が進められた。
まず、リブランディング後の新たなブランドメッセージは「愛するわたしへ。Love your moment.」に。社員からは、「なぜLove your moment.なのか?」という声もあがったが、メッセージには「一人ひとりが自分を見つめて、自分を愛することができる瞬間を持っていただきたい」という思いが込められていると坪内さん自ら社内の関係部門へ出向き、伝わりきるまで説明を続けたという。
「人には優しくできるけど、自分には優しくできなかったり、仕事や家事・育児優先で自分のことを一番に考えられない方ってたくさんいらっしゃると思うんです。でも自分のことを一番愛せるのは自分だと思いますし、その気持ちが周りの人にも繋がっていくのではないかと考えています。その手助けができる企業でありたいと思いました」(坪内さん、以下同)
「ワコール」ブランド キービジュアル
ユーザーが今の自分に最適な商品を選べるよう、“年齢”ではなく“ニーズ”を軸とした3つの商品群へ再編成された
「当社の販売員って、私が言うのもなんですがみなさん優秀なんです。だからこれまでも『あなたはこの年代だからこのブランド』と当てはめるような接客はしていません。ただ今回のリブランディングは、お客様が納得できるものを選んでほしい、そのために商品の選択肢を増やす商品配置が求められていました。そのコンセプトをみなさんにしっかり理解して取り組んでいただきたかった。だから店舗をできる限り巡回しましたし、販売員が集まるタイミングに駆けつけて説明する。これらは欠かすことができませんでした」。坪内さん自らが現場に足を運び、顧客の選択肢を増やすための改革であることを強調。社内への説明機会は40回以上にのぼるという。「やっぱり直接お客様に接するのは販売員。その販売員や社内のメンバーが納得できなければ、お客様におすすめできませんから」。
かくしてリブランディング後、店舗へ訪問した顧客の滞在時間は増加。年代ごとに分けていたサブブランドの枠を外すことで顧客に広い選択肢を持ってもらうという構想は数値の上でも成功を示し、好調なスタートを切った。
”下着の持つ力”で多くの人を後押ししたい
リブランディング構想開始からまだ一年半、短期間でスタートまで走り抜けてきた坪内さん。その原動力は、やはり自社製品への愛だ。「下着って、人の目にあまり触れないからこそ自分の個性を表現できると思うんです。自分だけの満足を追求できるからこそ、心にも体にも自信が持てて、勇気とかパワーが生まれる。ワコールはこれからもそんな自分に自信を持つ後押しができる企業でありたいですし、私もそのために働いていけたらいいなと思っています」。
取材・文 原智香