リブランディング後に発売された「重力ケアブラ(ノンワイヤー)」
自分自身が納得できることを選ぶ。その考えは購買行動にも影響していると坪内さんは見る。「最近はものを買う時、商品だけではなく『その背景にも納得できないと好きになれない』という方が多いんです」。ブランドの背景・ストーリーまで知って、共感を持った上で購入する。しかしワコールは下着という普段人に見せないものを扱っているセンシティブさもあって、これまではそういったエモーショナルな部分よりも、商品の機能性に焦点を当ててプロモーションを行ってきた。その部分の改善を試みたことが、今回のリブランディングにおける難所のひとつだった。
これまで“女性の美”は様々なかたちで世に打ち出されてきたが、今の時代、その価値観は定められるものではない。様々な思い込み、偏見がいまだ蔓延るなかで、いかにユーザーに共感していただけるのか。ブランドメッセージ、ポスターのクリエイティブ、売り場展開…旧態依然としたままであれば、このようなアウトプットにならなかった…? とも言える、大改革が進められた。
まず、リブランディング後の新たなブランドメッセージは「愛するわたしへ。Love your moment.」に。社員からは、「なぜLove your moment.なのか?」という声もあがったが、メッセージには「一人ひとりが自分を見つめて、自分を愛することができる瞬間を持っていただきたい」という思いが込められていると坪内さん自ら社内の関係部門へ出向き、伝わりきるまで説明を続けたという。
「人には優しくできるけど、自分には優しくできなかったり、仕事や家事・育児優先で自分のことを一番に考えられない方ってたくさんいらっしゃると思うんです。でも自分のことを一番愛せるのは自分だと思いますし、その気持ちが周りの人にも繋がっていくのではないかと考えています。その手助けができる企業でありたいと思いました」(坪内さん、以下同)