子どもの「生きづらさ」を「らしさ」に変える【ギフテッドを知ると見えてくる、子育てのヒント Vol.2】(きほん編)の続きです。
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『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』楢戸ひかる著
知能が高いことで知られる
ギフテッドですが、
学校や日常生活で困ることがあり、配慮や支援が必要ということを前回の記事【きほん編】でご紹介しました。
今回の【インタビュー編】では、『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』の著者であり、Webメディア「みんなの教育技術」でギフテッドの担当をしているライターの
楢戸ひかるさんに、
日本のギフテッドの現状や課題についてお話を伺います。
ギフテッドについて知ることは、
これからの時代を生きる子どもたちの生きやすさにも関わってきます。
また、
個性を潰さないためにどのような教育環境を整えればいいのかというヒントにもなるはずです。ぜひギフテッドについて一人ひとりが理解を深め、社会全体でより良い議論ができるようになることを願います。
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『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』楢戸ひかる著
「うちの子、ギフテッドかも?」と悩んだ場合Q. 我が子はギフテッドかも… と感じたら、最初にすべきことはなんでしょうか?
また、どこへ相談すればいいでしょうか? 学校への説明などでアドバイスがあればそれも含めて教えてください。
A. 手前味噌で恐縮ですが、今回の著書『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』をまずは読んで欲しいと願います。
日本でのギフテッドに関しての論議は、始まったばかりです。多角的にノウハウを蓄積している専門機関はまだ少ないのが正直なところです。
でもお子さまの特性が心配になった場合には、まずはひとりで悩まずに誰かとつながる場所を見つけることが大切です。書籍でも紹介している「一般社団法人 ギフテッド応援隊」についてはこの続きをお読みください。
また書籍では家庭の中に「ギフの湯」を登場させる方法についても書かれているので、ぜひこちらも読んで欲しいと願います。
情報の海で溺れるのは、本当に辛いですよね……。この応援ブックは、厳選したベーシックな情報で構成しました。気持ちの整理をする際に、浮き輪のつもりで使って下さい。
そして、『まずは、お母さんの心の居場所を確保して下さい!』と、お伝えしたいです。お母さんの心が安定していれば、たいていのことは何とかなります。
居場所の確保という意味では、一人でもいいから子育てのことを本音で話せたり、相談できる相手がいることが重要です。一般社団法人ギフテッド応援隊だと、ギフテッドの子育てに共通理解がある人に出会いやすいと思います。
この応援隊は、全国規模で活動する保護者の自助団体です。会員専用SNS内では、相談機関の情報なども共有されていると聞きます。先輩のお母さんから方から、経験談なども聞けるとよいですね!
学校への説明の際は、そのギフテッド応援隊が提供しているサポートブックの使用をおすすめします。会員の方は、サポートブックを会員専用SNS内から無償でダウンロードできますが、一般の方への販売も行っています。(楢戸さん)
まわりにいるギフテッドの子との接し方Q. 身近にギフテッドの子がいる場合(兄弟やクラスメイト)、子どもたちにはどう説明すると理解しやすいでしょうか?
また接し方で注意すべき点やアドバイスがあれば教えてください。
A. もし私に読者の方と同世代の子ども(未就学児や小学生)がいたとしたら、ギフテッドという言葉は使わずに、ギフテッドの子の特徴(周囲との違いや困っていること)を、『そういう子も、当たり前にいるよね』といった気持ちで子どもと対話をしてみると思います。
たとえば…
『チャイムの音、〇〇(お子さんの名前)より、うんとびっくりしちゃう子がいるんだよね』
『もし〇〇が、悲しい気持ち、うれしい気持ちが、いまより10倍強く感じたとしたら、どうかな?』
… といった感じでしょうか。
人はそれぞれ異なるということ。ギフテッドをひとつの入口にして、いろいろな角度から子どもと話をしたら楽しいと思います。
ギフテッドだからといって、接し方で注意すべき点は、とくにありません。ただ、ギフテッドの子がもし我が家に遊びにきてくれたとしたら、私はその子自身にあらかじめ声かけをしておくかもしれません。
たとえば、『人はそれぞれ違うから、△△ちゃんが嫌だなとか思うことがあったら、教えてもらえると助かるな。私、気が付けないと嫌だからさ』といったように。
私が実際に出会ったギフテッドたちは、繊細で聡明。1を見て10を知るみたいな感じの子どもたちでした。
私も最初の取材時は『ギフテッドと、どう話せばいいんだろう?』と、緊張をした記憶があります。でも妙に構えず、率直に話しをすれば、楽しく会話ができました。
もしかしたら、“子ども扱い”はしない方がいいかもしれません。ギフテッドは姿かたちは幼児でも、確固とした自己を確立しているお子さんも多いからです。(楢戸さん)
日本での現状のギフテッドの課題Q. 最近になってギフテッドへの認知が、徐々に広まってきているように感じます。
長年取材をしてきた楢戸さんがいま感じている『日本におけるギフテッドの問題点や改善点』について教えてください。
A. ギフテッドと発達障害が混同されている点が気になります。
“ギフテッドの特性”と“発達障害の特性”はそれぞれ分けて考えた方が、その子が必要とする支援ニーズを整理しやすく、結果として必要な支援に辿り着きやすいと考えます。
ギフテッドという言葉が広がることで、発達障害に対する対応が遅れてしまうことを懸念しています。とりわけLD(学習障害)は、専門の配慮や介入が必要なので、見過ごさないで欲しいと思います。
また、ギフテッドという言葉を、日本では“稀にいる天才”といった意味だと誤解している人がいることも気がかりです。本連載でお伝えしたように「ギフテッド」とは、知能が高いだけでなく、“学校や日常生活で困ることがある”お子さんのこと。それぞれに適したサポートが必要なのです。
欧米の国の中には、公教育の中でギフテッドの教育保障をしている国もあります。私が取材した範囲では、ギフテッドの割合は約5〜7%と見積もられていました。日本の35人学級で換算すると、1学級に1〜2人はギフテッドがいる計算です。
日本も文部科学省が2023年から予算をつけ、ギフテッドの支援事業を開始しました。ギフテッドの教育が、公教育の枠組みの中で実施されることが大切です。(楢戸さん)
ギフテッドに関心を持ったあなたへ今回初めてギフテッドについて知った方へ、メッセージがあればお願いします!
この記事をご覧になってくださったあなたは、いまどんな状況でしょうか?
ご自身のお子さんの強い個性を『発達障害の文脈だけでは、どうにも腑に落ちない…』と感じていたならば、『うちの子、ギフテッドなのかもしれないな』と思われたかもしれません。
お子さんは、学校に行けていますか?
『不登校の子の中には、ギフテッドとしての対応が必要な子どもがいることを念頭に、具体的な支援が必要な時期に来ている』と指摘する研究者もいます。
『うちの子とは、まったく無縁の話だわ』と思われる方も、もちろんいらっしゃるでしょう。
けれども、お子さんのお友だちのなかに、ギフテッドがいる可能性はあります。
今後、お子さんとギフテッド傾向のある子がお友達関係を築いていく上で、ギフテッドの知識が多少あった方が、お母さんご自身も安心なのでは… と思います。
世界ではギフテッドの論議が進んでいますが、日本ではギフテッドの論議はまだ始まったばかり。
でも、日本にもギフテッド当事者の声に耳を傾け、真摯にサポートをしている支援者、教育実践者、研究者たちがいます。
私が取材したギフテッド情報をどのように伝えれば、多くの方に関心を持っていただけるのだろうか? 私自身、まだまだ試行錯誤をしています。読者のみなさまと一緒に考えていけるとうれしいです。(楢戸さん)
『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊)![](https://beauty-cdn.oricon.co.jp/img/column/1/E1701843595243/detail/bdc167fa7659e2d73a45d86bdbbb101fd8e96b5ea12851cbb0368c1ac1b42035.jpg)
2023年10月3日発売
定価1,760円(税込)/192ページ
著:楢戸ひかる
監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授)
取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊
マンガ:黒川清作
著者:楢戸ひかる プロフィール
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ライター。息子の通級をきっかけに、「特別な教育ニーズのある子どもたち」を軸に教育記事を執筆。通級を経験した母親として、当事者目線の発達障害理解教育の講師活動も行っている。主事業の最適化を考えるサイト「主婦 er」運営中。ウーマンエキサイトでも執筆中。
HP:https://hikaru-narato.com/
(佐々木彩子)