子どもが産まれてから、その存在の意味が変わったお年玉。
自分の時は母に預け、そしていつの間にかなくなっていた…というよくある話なのですが、育児を経験し、育児にかかるお金事情を知った今は、それも仕方ないなと…目には見えなくても確かにそのお年玉は私を育むために使ってもらえたのだなという実感があります。
そんな経験を経て今、ある問題が生じます。
息子、お年玉を全部使いたがる問題です。
■お年玉、全部使いたい!今まで娘に対しては、いただいたお年玉の中から年齢に合わせて渡す金額を変え、その一部を渡していました。
自分で使うことでそのありがたさを感じてもらえたら、と思ってのことでしたが、娘はそれに対してなんの疑問も持たず、素直に喜び、感謝してくれていました。

しかし、息子は違いました。
「この中で、5000円そうまは使っていいから、あとはママがそうまの口座に入れておくね〜」
「いやだ!」「……いやだ!?」

確かに息子はお金が大好き。
お小遣いをせっせとためて一万円以上するおもちゃをドカンと買うこともあります。
そして何より計算が早い。一緒に買い物へ行くと、店員さんよりも早くお釣りの計算をします。
そんな息子はいただいたお年玉をすべてチェックし、計算し、
これでアレが買える…! としっかり計画していたのでした。

なんの疑いも持たずに素直な娘に対し、計算が早く鋭い息子。
確かにこうなることは、いつかこうなることは、わかっていたのですが…。
■なんでお年玉、親に預けるの?確かに、祖父母がそう多くないわが家のお年玉はそれほど多くなく、リッチなご家庭の毎月のお小遣いの方が多いくらいかもしれません。
ですが、息子はまだ小1。
私は、まだこの金額を使わせるには早いんじゃないか…と思ってしまうのです。
なんで? と言われてしまうと返答に困るのですが、大きなお金をその時の気持ちで一気に使って、後悔してほしくない…。
いやしかし、息子は結構ちゃんと考えてお金を使うタイプだし…でも…。
考えれば考えるほど、なぜ預けなければいけないのか、息子を納得させられるような返答は思い浮かびませんでした。
これからあなたたちが生きていくには、大切なお金がたくさん必要だから…と言っても、そんなの私が頑張って働いて、黙ってためておけばいいわけです。
なぜ「あなたに」と渡されたお年玉が、親に奪われるのか…。
同じくいつの間にかお年玉が消えていた夫はその悔しさがよくわかるらしく「だよなぁー!」と息子の肩を持ちます。

お金のはかなさは、使ってみなければわかりません。
その時の気持ちで大きな買い物をしてあとで後悔することになっても、それも良い勉強になるのかもしれません。
私はなんで息子にすべてを渡せないんだろう…。
幼い頃、お年玉を使えなかった私は息子に嫉妬しているのか…!?
■それでも母が貯金するワケ息子に疑問を投げかけられ、私は改めていろいろなことを考えました。
そして数日後、私は息子と、そして娘と、ある取り決めをしました。
「それだけほしいものがあるなら、一個だけ買っていい。だけど、それで残ったお年玉は、貯金させてほしい」

息子のほしいものは一万円を超える大きい買い物。
ですが息子は、一度買ったものは何年も何年も擦り切れるまで遊んでくれるタイプです。
そういう部分では、安心感がありました。
「それでいいかな?」
「うーん…」
「今ほしいものを手に入れることも大切な経験だけど…この先、なんていうか…」
「そうまがもうちょっと大きくなった時に、制服を買う時に、学校が変わる時に…」
「この制服を買ったお金には、あの時おばあちゃんがくれたお年玉が含まれてるんだよってママが思いたいんだよね…」

父を早くに亡くした私も年を重ね、子どもたちをともに愛してくれた祖父母の死を経験しました。
今は亡き祖父が買ってくれた娘のランドセルは今も祖父の思い出とともにあり、私はこの先も、こうして子どもたちの周りに誰かしらの気配を残したいのだと思います。
「だから、ちょっと預けさせて…!! お願い!」
「……」

「ほんと!?」
こうして、息子は納得。
特別ほしいものがなかった娘にも同等の金額を渡し、自由に使ってもらうことになりました。
結局、わが家の場合はこんな感じで落ち着いたのですが、お年玉事情もご家庭それぞれ。
とりあえず、息子がいただいたお年玉はピカピカのおもちゃになって、わが家の真ん中に鎮座しています。
おばあちゃん、ありがとう!
(たんこ)