「パパ浮気してるよ」「気付いちゃったかー」笑顔で返す母、離婚を勧める娘のために人生をかけた反撃

2022-08-31 07:00 eltha

　妻を“格下”あつかいし、女友だちと不倫に明け暮れる夫。それでも妻は、学生時代の“憧れの彼”が「こんな自分と結婚してくれた」と感謝する日々を送っていたが、ある日、小学生の娘から「ママがいじめられるのを見たくない」「パパと離婚しちゃえば？」と衝撃の提案を受けてしまう。『パパ、浮気してるよ？娘と二人でクズ夫を捨てます』（KADOKAWA）で描かれるのは、娘の人生のために未来を立て直そうと奮闘する母親の覚悟が描かれる物語だ。“いい母親”を演じ、いい家族を築いてきたはずの主人公は、なぜこんな指摘を娘にされてしまったのか。著者の芸子さんに話を聞いた。

『パパ、浮気してるよ？娘と二人でクズ夫を捨てます』（C）芸子／KADOKAWA

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■唯一の取り柄は「“憧れの彼”と結婚できた自分」、調子に乗り続ける自由奔放な夫

――学生時代の憧れの人気者と結婚した主人公の妻・香澄は、“彼の妻”であることが唯一の取り柄だと思っています。「お前はダメなやつ」などと見下され、不倫をされても、離婚は踏みとどまっていました。

【芸子さん】学生時代だったら相手にしないような自分なんかと結婚してくれた、という想いが根本にあるんだと思います。学生時代のヒエラルキーの名残って、とくに田舎に行けば行くほど根強く残っていると思うんですよね。それに、「１軍だった男性と結婚できた自分」と自己肯定するからこそ、なかなか離れる事ができなかったんだと思います。

――香澄は、自分の気持ちに蓋をしてまでも周囲に気遣いを見せるタイプです。献身的に夫を支える“いい奥さん”に見えますが、自己評価は低いですね。

【芸子さん】こういう要素って、誰にでもあると思います。周囲からのイメージに応えようとして、自分の首を締めてしまうとか…。読者の方に「わかる！私もそういう所がある」などと少しでも共感してもらえたら、ストーリーでの感情移入をしてもらえるかな、と思います。

――夫の洋介は、家事育児はろくに手伝わない様子で不倫まで…。自由奔放ですね。

【芸子さん】究極の甘えん坊というか、ずっと香澄に対して“試し行動”をしているようなキャラクターです。洋介の母親は、香澄に暴言ばかり吐いて嫁イビリをするシーンがあるように、とてもキツい性格なんです。それで洋介は、存分に甘える事ができなかった幼少期を過ごしているので、香澄と出会ってから幼少期をやり直しているようなイメージですね。根っから悪いやつではないんだけど、無償の愛を注いでくれる香澄に対して、それが当たり前になってどんどんエスカレートしていったという…。

■“不倫した父親と娘”の複雑な関係性「身勝手な大人に振り回される子どもの感情を描きたかった」

――洋介の不倫相手である絵美は、学生時代からの女友だち。彼女もヒエラルキー上位にいそうなキャラクターで、香澄に対して図々しく舐めた態度を取っています。

【芸子さん】絵美は強烈ですよね。実は私は、絵美みたいな同性からめちゃくちゃ嫌われそうなキャラクターって大好きなんです。もちろん、現実社会で絵美が側にいたらすごく嫌ですけど（笑）。香澄とは真逆のタイプの女性を描きたかったんです。香澄のキャラクター像には共感してもらいたくて、絵美のキャラクターには拒否感を抱いてもらいたいです。

――香澄は、夫が女友だちと不倫していることを知りつつもガマンし続けます。娘には気づかれていないと思っていましたが、じつはそうではなかった。それが冒頭の衝撃的なセリフでした。

【芸子さん】育児をしている中で、子どもは大人が思っているよりも鋭いし、空気を読むんだなと思う事がよくあります。自分が子どもの頃も、親たちは気づいていないと思っているみたいだけどバレてるよって思っていたことがいくつもありますし、それを汲んで大人の顔色や空気を読んで発言していた気もします。「子どもは色々わかっているよ。大人が思うよりずっと…」という想いが、冒頭のシーンに込められています。

――本作は、不倫した父親と娘の関係性も描かれています。

【芸子さん】夫婦が離婚したとして、書類上では離婚届を提出したら成立してそれで終わりでしょうが、心の中の整理ってそんな簡単につくとは思えないんです。とくに子どもは難しいと思います。本作では、そうした心情にこそ重きを置きたかったんです。作品が誕生したきっかけも、不倫という大人の身勝手さに振り回される子ども側の感情にフォーカスした話を描きたいと強く思ったことからでした。

――各書店でランキング上位入りの大反響ですね。

【芸子さん】本当に反響にはびっくりしています。読者のコメントも読ませていただいてますし、嬉しい感想もたくさんいただきました。不倫がテーマのハラハラした物語ですが、登場人物たちの表情や心情なども、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。