喉の奥に「臭い玉」なぜできる? できやすい人の特徴は? 原因と除去・予防法を耳鼻科医が解説
2023-10-20 09:30 eltha
■“臭い玉”は死滅した細菌のかたまり つぶれると強い悪臭あり
Q:喉の奥にできる“臭い玉”の正体は何ですか?
【甕院長】 “臭い玉“は、扁桃腺につく白い膿(うみ)で、正式には「扁桃膿栓(へんとうのうせん)」と呼びます。喉の奥の左右にある扁桃腺は、細菌など口内に侵入した異物をつかまえるためのリンパ組織で、表面のくぼみの部分で侵入した細菌を捕まえます。その後、それらの死骸が白い塊となって堆積します。これが“臭い玉“です。細菌の死骸のほか、食事の残渣も若干混ざっているといわれています。
Q:そもそも、“臭い玉”はなぜ臭いのでしょうか。口臭の原因ですか?
【甕院長】 口臭を起こす代表的な物質は「揮発性硫黄化合物」です。“臭い玉“の構造を分析したところ、内部のほとんどが死滅した細菌のかたまりで、それらの細菌の多くが「揮発性硫黄化合物」を産生する菌であったとの研究報告があります。白い塊、“臭い玉“をつぶすと臭いニオイがするのは、内部の「揮発性硫黄化合物」が外にでるためです。
つまり、扁桃に“臭い玉“が付着しているだけではニオイ成分の漏出は少なく、つぶれない限りはそれほど強いニオイは出てこないということです。口臭は“臭い玉“がついていない人にも、扁桃腺を摘出した人にもあります。“臭い玉“がとれた途端に口臭が消えるわけでもないため、“臭い玉“はあくまでも口臭の原因の一つに過ぎないと言えるでしょう。
Q:できやすい人の特徴はありますか? 子供にもできますか?
【甕院長】 “臭い玉“の正体は、口内の細菌の死骸が固まったものです。口腔乾燥は口内の細菌増加につながるため、唾液分泌が少ない人や、歯磨きの習慣の少ない人は注意が必要でしょう。口呼吸の人も口内が乾燥するので出来やすいかもしれません。
しかし、通常でも扁桃腺があれば小さな“臭い玉“の付着、脱落は常に繰り返しおきているものです。大きな白い塊にまで“臭い玉“が大きくなる人は扁桃腺の形の問題であり、扁桃腺に深いポケット状のくぼみができており、そこに“臭い玉”がはまり込み脱落しにくいため、塊が大きく育つことになります。したがって、“臭い玉”があるからといって体質がおかしい、口腔が不潔だ、と必要以上に心配しないようにしましょう。
また、子供にもできますが、子供はそもそも扁桃腺が小さく“臭い玉“がたまる場所も浅いため、すぐに落ちてしまってあまり目立ちません。
■無理に自分でとってはダメ、気になる時はうがいを
【甕院長】 喉に痛みもなく熱もないのに扁桃腺に白い塊がついていた、という場合は通常の“臭い玉“ですのでそのまま放置しても健康上の問題が出ることはありません。ころりと外れて飲み込んでしまっても心配ありません。“臭い玉“の塊が大きくなり「喉の異物感がとれない」「異臭が気になる」などの悩みがでたら除去するのが良いでしょう。
喉が痛い、微熱を伴うなどの症状が出ている時に扁桃腺に白い塊がたくさん付着していた、という場合は急性炎症がおきている可能性が高いため早めの医療機関受診が必要です。
Q:“臭い玉”ができたら、どのように取り除けば良いでしょうか? 歯ブラシなどを使って取っても大丈夫ですか?
【甕院長】 “臭い玉“は扁桃腺に正常でも付着する膿栓であり、小さなものは気付かぬうちに落ちたりしています。大きくなった“臭い玉“は簡単に脱落できないような場所にはまりこんでいるからこそ大きな塊になったといえます。逆に言えば容易に外に出られないような深い溝にはまり込んでいるということであり、無理にご自身で取ることはおすすめしません。とくに、歯ブラシやピンセットなどで取ろうとするのは粘膜に傷をつける可能性が高いのでやめておきましょう。ご自分では、ガラガラと喉の奥でうがいを試みる程度にとどめておきましょう。
白い塊のある部分の周囲を綿棒で押すとうまく押し出せることもありますが、やはり無理をなさらず耳鼻いんこう科へ受診されることをおすすめします。
Q:“臭い玉”の予防方法を教えてください
【甕院長】 扁桃腺があるかぎり“臭い玉”は発生しますが、まずは、口腔内環境を清潔に保つことが予防の基本になります。ただし、清潔にしたいがあまり殺菌力の強いマウスウォッシュ(洗口液)を頻回に使うことはかえって常在菌を減少させ、口内の違和感、舌が黒くなる(黒毛舌)などの副作用がおきますので注意をしましょう。
また、口腔内が乾燥状態に近づくほど細菌は増殖するため、こまめに水分をとり、口呼吸の人は口内の乾燥につながるため鼻呼吸をこころがけましょう。異常に口が乾燥する、口呼吸しかできない人はその症状自体が問題ですので医療機関を受診することが必要です。
記事監修/甕 久人(もたい ひさと)
「もたい耳鼻咽喉科」院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医、日本聴覚医学会会員。名古屋市立大学医学部卒業後、大学附属病院ではがんを専門に研究、豊橋市市民病院にて臨床経験をつんだのち、地域に根ざしたクリニックの実現のため「もたい耳鼻咽喉科」を開業。