この度、インテリアデザイナー片山正通が率いるWonderwall(R)は日本郵船株式会社が2027年春に就航予定の、東京湾をクルーズしながら食事を楽しむ新クルーズ船「AMANE」の本船トータルデザインを担当いたしました。本船は、東京湾で36年にわたり多くのお客様に愛されてきたレストラン船「LADY CRYSTAL(レディ クリスタル)」の後継船となります。
1885年の創業以来、約140年にわたり日本の海上輸送を支えてきた日本郵船の新たな取り組みの拠点となる本船において、Wonderwall(R)は日本郵船が紡いできた客船文化の歴史をひもとくところから始めました。その中で最初に想起したのが、日本郵船の歴史にも関わる岩崎彌太郎の長男・岩崎久彌の本邸として建てられた旧岩崎邸庭園です。片山が、以前からその空間に惹かれ、たびたび訪れていたこの場所を改めて見つめ直す中で、邸宅と庭が呼応しながらひとつの空間体験をつくり出していることに着目しました。
そこから導き出したのが、「庭園としての東京湾」というコンセプトです。東京湾を庭に見立て、その水上に浮かぶ邸宅のような船上空間を構想。日本古来の精神を大切にしながら、西洋の様式や技術を取り入れ、両者を調和させてきた「和魂洋才」の思想を、Wonderwall(R)は「AMANE」において現代の船上空間として再解釈しています。
本プロジェクトでは、各分野を牽引するパートナー陣との共創が行われています。プロジェクト発足時から参画する株式会社タイソンズアンドカンパニーの寺田心平氏(プロジェクトコンサルティング)が、陸上ラウンジから船上まで一体となった顧客体験を設計。また、船名に込められた「広くあまねく」人々に想いが届くようにという願いと、穏やかな航海や心地よい海の音が聞こえてくるような情景を表した「海音」を表現したブランドロゴは、平林奈緒美氏が手がけました。
定員約90名(着席時)という規模を活かし、個室へのバトラーをはじめとする一人ひとりに寄り添ったきめ細やかなサービスを提供。日本郵船の客船の伝統を受け継ぎ、国産の旬を取り入れたフレンチのコース料理が、Wonderwall(R)のデザインした邸宅のような空間と一体となり、上質なおもてなしを実現します。
日本郵船グループ初となる水素燃料電池システムを搭載したハイブリッド型電気推進船です。従来の船に比べて振動や騒音、燃料特有の臭いが大幅に低減されており、より静かで快適な船内空間を実現。デザインの美しさだけでなく、次世代エネルギーの可能性や海運の脱炭素化に向けた取り組みを、クルーズ体験を通じて直接体感できる環境配慮型の船となっています。

【新クルーズ船「AMANE」概要】船名:AMANE(海音)
就航予定:2027年春
全長:約48.0m
全幅:約9.5m
喫水:約2.1m
総トン数:約480トン
定員:約90名(着席時)
クライアント:日本郵船株式会社
本船トータルデザイン:片山正通
(株式会社ワンダーウォール 代表)
ロゴデザイン:平林奈緒美
プロジェクトコンサルティング:寺田心平
(株式会社タイソンズアンドカンパニー 代表取締役社長)
建造:前畑造船株式会社(長崎県佐世保市)
1. 外観
船内空間とデッキの関係性を一体として捉え、そのつながりを外観へと反映させながら、船上全体がひとつの空間体験となるよう、船が本来持つ曲線を生かしてデザインしています。
2. 桟橋
桟橋は、乗船前から船首の個室や船内の様子が視界に入る構成とし、光を効果的に取り込みながら、船へと自然に導きます。
3. 1F 廊下(ギャラリー)
廊下には、アーティスト・山口幸士が「AMANE」のために描き下ろした作品5点を展示予定です。船内を移動する過程でアートに触れる構成とし、邸宅を巡るように各空間へと進んでいく体験をつくっています。
4. 1F メインダイニング
メインダイニングは、船上の邸宅における中心的な空間として計画しています。日本建築に由来する格天井を現代的に取り入れ、ピラーが空間に出ない構成とすることで、食事の場としてだけでなく、イベント時にもフレキシブルに対応できる空間としています。ダイニング内には、サービス機能としてのバーを組み込んでいます。
5. 2Fバーラウンジ
バーラウンジは、海との距離を身近に感じられる船尾側に計画しています。開放できるガラス面により、海風を感じながら過ごすことも、ガラス越しに東京湾の風景を楽しむこともできる構成としています。風の影響を受けにくい船尾の特性を生かし、船内と海との境界をやわらかくつないでいます。
6. 2F 個室(船首)/船首・デッキ
船首側の個室は、風や運用上の条件を踏まえながら、東京湾のパノラマを最も印象的に受け止められる場所として計画しています。船首デッキを備え、室内と外部が連続する構成とすることで、着席での会食に加え、立食や複数テーブルでの利用にも対応できる空間としています。
7. 個室
6名用の個室を2室計画しています。少人数での会食に適した空間としながら、各個室から個室前のデッキへ直接出られる構成としています。
8. 3F フライング・デッキ
フライング・デッキは、「庭園としての東京湾」というコンセプトを最も開放的に体感できる場所として計画しています。海上ならではの風、光、視界の広がりを取り込み、眺望を楽しむ場であると同時に、パーティーやレセプションにも対応できる空間としています。

photo Kazumi Kurigami
■Wonderwall(R)/片山正通プロフィールインテリアデザイナー
株式会社ワンダーウォール 代表
武蔵野美術大学 名誉教授
1966年岡山生まれ。片山正通率いる株式会社ワンダーウォールは、コンセプトを具現化する際の自由な発想、また伝統や様式に敬意を払いながら現代的要素を取り入れるバランス感覚が国際的に高く評価されている。ブティックからブランディング・スペース、大型商業施設の全体計画まで、世界各国で多彩なプロジェクトを手がけている。
www.wonder-wall.com
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