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薄毛女性「私がいるだけで気まずい空気になる」“ハゲだよ”自虐で和ませることも…「薄毛はカッコ悪くない」活動の意義

2022-07-30 eltha

 自らを「薄毛女子=“すげじょ”」と名乗って活動するすげじょのやまもとさん。薄毛治療の体験談などをエッセイ漫画で発信していたが、ある時から「薄毛は悪くないし、恥ずかしいことでもない」と思い直し、治療を止めることを決意。現在は、薄毛女性が生きやすい偏見のない社会を目指して、さまざまな活動を行っている。女性が抱える“薄毛であることの生きづらさ”について、詳しく話を聞いた。

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“ハゲだよ”自虐ネタで場の空気を和ませ…「自分が我慢さえすればいい」

――エッセイ漫画『おんな薄毛道』は、薄毛の治療や対策などさまざまなエピソードが描かれています。

すげじょのやまもとさん漫画を描き始めた2016年頃は、“こじらせ女子”という言葉を耳にするようになり、女性が「女性らしくない」ことをネタにしたエンタメ作品が出始めていた頃でした。私も、自分のコンプレックスを題材にして、読者に笑ってもらいながら共感してもらえるような作品を描けたらと思い、『WEZZY』というウェブメディアの編集部に企画書を出したところ、候補として挙げた項目の中から編集長の目に留まったのが「薄毛」だったんです。

――当時27歳でしたが、薄毛に悩まれていたのですか?

やまもとさん薄毛になったのは21歳の頃でした。自分は何とも思っていなかったのですが、「女なのに薄毛」みたいな視線をとくに男性からすごく浴びて、「女なんだから、治すか隠すか対処したほうがいいよ」っていう無言の圧力みたいなものも感じるようになったんです。だんだんと、「薄毛を何とかしない自分は悪いんだ」と思うようになっていきました。

――まわりの反応によって、コンプレックスが作られてしまったのですね。そんな世間の冷たい視線にどのように対処していたのですか?

やまもとさんあまり人目を気にしない性格なので、薄毛をなんとかしないととは思わなかったんです。だけど、私の存在によって場が気まずい雰囲気になることが多々あって、「私の薄毛が迷惑なんだ」って考えるようになっていました。でも、どうしたらいいのか対処法がわからない。だから、男性社会でよくある“薄毛いじり”をならって、自分から「ハゲだよ」って何とか場を和ませました。そういうことが言える相手や雰囲気でない時は、夏でもニット帽をかぶって過ごしました。自分が我慢さえすれば、まわりの空気がよくなるって思っていましたね。

「女性の髪はこうあるべき」社会から刷り込まれた価値観

――そんな状況から、漫画を描くことをきっかけに治療に取り組まれるようになりました。

やまもとさん漫画を描くにあたって、その女性編集長から「自分もストレスでよく円形脱毛症になるので、そういうことを話しやすい空気を作りたい。女性の薄毛を可視化したい」と言われたことがきっかけでした。私の体験で、少しでも悩んでいる方々の力になれるならと思い、髪にまつわるいろいろなことを学び、情報収集し、いろんな治療法も実践しましたね。それを漫画にして公開していったんです。
――女性の薄毛問題は、原因や治療法など、あまり広く知られていません。

やまもとさんそうですよね。薄毛によって悩みを抱える女性の中には行動には移せない方も少なくありません。なので私が先陣を切ってクリニックで治療を体験し、薄毛業界の闇をあぶり出してやる! といった潜入調査のような漫画を当初は描いていました。しかし髪も生えずそもそも薄毛に関する知識もなかったので行き詰まりを感じました。そこから薄毛治療に関する書籍や医学論文を読んだり、ネットに蔓延る情報の捉え方、薄毛ビジネスの歴史やジェンダーの違いなど、薄毛をあらゆる角度から徹底的に調べ、治療法を実践したり、情報を発信していました。

――髪を生やす、増やすことに専念していましたが、漫画開始から2年後の2018年に、「治療も隠すこともしない」と決意しました。

やまもとさん髪を失った女性の生きづらさを、社会学の観点から研究する吉村さやかさんに取材を重ねたことがきっかけです。吉村さんは脱毛症の当事者であり、女性が髪を失ったことによって生じる問題は、髪を失った状態そのものではなく、それを問題と捉える社会に問題があると提言されています。それまで私は、「女性の薄毛は治すべき、隠すべき」だと思い、うまく対処ができない自分が悪いと思っていたので、目から鱗でした。もしかしたら私自身の価値観も、本意ではなく、社会から作られたものではないかと自分を疑ったんです。

 そして社会学関連の文献を大量に読み、吐くほど自分の気持ちを紙に書くなどして本心を探っていきました。すると、やはり…というか、自分は薄毛であることをさほど気にもとめないし、隠したいとも思っていないことに気づいたんです。そこで、いったん治療を止めて、自分に選択肢を与えてみたんです。

――薄毛の治療を止めて、気持ちの変化はありましたか?

やまもとさん最初はソワソワしましたが、次第に考えは間違ってなかったという気持ちになっていきました。何より、これまで対処に費やしてきたお金を好きなことに使えるようになったのはよかったです。

「ようやく世間のムードが変わってきた」活動終了への想い

――やまもとさんの活動は、今年で終了とのことですが…。

やまもとさんお伝えしたいことは、すべて漫画で出し切りました。それに時代の空気も変わり、いろんな事情で生きづらさを感じている人の声が取り上げられ、ようやく個人の気持ちが尊重されてきたことの安堵もあります。あとは活動終了まで、当事者さん同士の交流会やイベントを開催して、YouTubeで動画を上げるなどして、できる限り情報を残していくいくだけです。

――それでも「まだ活動をやめないで」という声がたくさん上がっていますね。

やまもとさんもったいないと言われることもあるんですが、インフルエンサーになることが目的で活動してきたわけではないですし、薄毛に関して、全部やり尽くし、出せるものは全部漫画に出しました。私が漫画やSNSで残した情報を、今後はみなさんで共有していただければと思っています。

 たとえば、明らかに高額なウイッグを押し売りされたり、メチャクチャな治療法で勧誘したりするクリニックはたくさんあります。もし治療をするなら、長い年月と費用がかかりますから、行き詰まらないために何を知り、何を計画し、何を始めるか。自分の心と身体、環境や経済状況を踏まえた治療法やクリニックをどう選ぶかなど、あらゆる角度から、全ての“すげじょ”さんに届けという一心で描き切りました。ぜひ読んでください。
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