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発売前に増刷も…LGBTQ+当事者にインタビューした小学6年生作家による“多様性の絵本”が話題

2022-10-30 eltha

小学6年生の作家のういさん

小学6年生の作家のういさん

 小学6年生の作家・ういさんによるLGBTQ+当事者へのインタビューを絵本にした『みんな えがおになれますように』(Gakken)が、発売された。子どもの視点ならではの率直な質問と、一般の方やオードリー・タン氏、杉山文野氏、ロバート キャンベル氏といった幅広い分野の当事者による真摯な回答は、子どもにはわかりやすく、大人にはハッとさせられる気付きがたくさん詰まっている。柔らかなイラストと希望にあふれ、爽やかな読後を残すこの絵本の著者・ういさんに話を聞いた。

似ている人はいても、同じ人はいない…人間をわけることはできない

 愛知県に暮らす小学6年生のういさんが「LGBTQ+について知りたい」と思ったのは小学3年生のときのことだった。

「Eテレの番組でトランスジェンダーのことが紹介されていて、お母さんに『こういう人たちって本当にいるの?』と聞きました。そうしたら『いるよ』って。だけど番組だけではわからないことがたくさんあって、知りたいことがどんどん湧いてきたんです。お母さんに聞いたら『その人たちにお話を聞いたほうが、もっとよくわかるんじゃないかな』と言うので、これを夏休みの自由研究に決めました」

 2人のトランスジェンダー当事者へのインタビューを行った小学3年の自由研究は、小冊子『小学生の私たちが知っているだけで、せかいをかえることができる。』としてまとめられた。これをきっかけに小学5年生になる少し前に、『Forbes JAPAN』でオードリー・タン氏へのインタビューが実現する。

「オードリーさんのお話で一番印象に残っているのは、『人間は虹みたいなもの。グラデーションのようにみんなちょっとずつ色が違っていて、同じ人間は1人としていないんだよ』という言葉でした。私がほかの人と違うのはどんなところかな? って想像してみたら、目や鼻の形もみんなと違う。似ている人はいるかもしれないけれど、同じ顔の人はいない。それはきっと心の中もそう。ちょっとずつ違ういろんな人がいて、世界は作られているんだ。そしてみんなちょっとずつ違うんだから、人間をわけることはできないんだ、ということが納得できました」

“みんなちょっとずつ違う”ことを子どもの頃から知っていたら、いじめもなくなる

 絵本は柔らかいタッチのイラストとともに、ういさんによる質問とLGBTQ+当事者による回答の一問一答で構成されている。子どもならではの視点による率直な質問には、「トランスジェンダーの人は何に困っているんですか?」「ふつう、あたりまえという言葉はいやに感じますか?」など、大人にとってはつい配慮が先回りして聞くのを躊躇してしまうものも多い。

「質問は、まず自分で考えてからお母さんに見てもらいました。お母さんは『相手の方はもしかしたら、嫌な気持ちになるかもしれない。だけど疑問に思ったことを聞くのはいいことだよ』と言ってくれて、インタビューの前には必ず『失礼なことを聞いてしまうかもしれませんが、教えてください』と言うことを決めました」

 ういさんの素直なインタビューに当事者の方々は、真っ直ぐな思いをわかりやすい言葉で答えている。

「絵本にしようと思ったのは、私よりも小さい子にも読んでもらいたいと思ったからです。いろいろ調べたら、小学生やもっと小さい頃から自分の性別について悩む子どもが、たくさんいることがわかりました。ロバート キャンベルさんは、12歳の頃に周りの友だちと違って“男の人っぽく”しなかったことで、仲間外れにされたそうです。『みんなちょっとずつ違う』ということを、みんなが小さい頃から知れば、いじめもなくなるんじゃないかなと思ったんです」

 小学校では道徳の授業で多様性についての学びも行われている。しかし、子どもの心の発達には個人差がある。幼い女の子が「お母さんのお嫁さんになりたい」と言うこともあるように、特に恋愛や性については、年齢などによる理解の差が大きい。現代の子どもたちのなかには、性別も含めた「みんなちょっとずつ違う」の意識はどこまで根付いているのだろうか。

「LGBTQ+という言葉は教科書にも載っています。でもちゃんと理解しているかどうかは、人それぞれだと思います。私も国語は得意だけど算数は苦手で、勉強もみんなちょっとずつ違うんです」

 ういさんは「苦手なところを友だちと補い合って勉強している」と言う。子どもから子どもへ伝えたいことが込められたこの絵本は、学校の一斉授業とはまた別の視点からの学びがたくさん詰まっている。

子どもも大人も「まず知る」ことが大切 「何か行動しよう」と思ってくれる大人がいたら嬉しい

 ういさんが初めて本を書いたのは、小学2年生のときに自費出版した小冊子『しょうがっこうがだいすき』。小学3年生で『しょうがっこうがだいすき 〜しょうがくせいになるまでに、やるといいこと。しょうがくせいになったら、やるといいこと。』(Gakken)を絵本として出版し、これから小学校に入学する“後輩たち”に向けたこの本は、累計10万部のベストセラーになっている。

「これからの未来を作るのは、私やもっと小さな子どもたち。大人になっていく前に、いろんなことを『まず知る』のが大事だと思って本を書きました。だけどもう大人になっている人たちは、知ったら『行動』もできると思うんです。この絵本を読んで、『何か行動しよう』と思ってくれる大人がいたらとてもうれしいです」

 ではインタビューを通して、ういさんが描いた未来とはどんな姿なのだろうか。

「例えばオードリー・タンさんが暮らす台湾のように、女の人同士、男の人同士で結婚できる国は、どんどん増えています。またトランスジェンダーの人たちが困っていることで、自分たちだけでは解決できない問題もたくさんあることを知りました。誰もが自分らしく生きられて、ちょっとずつ違うみんなが仲間になれる世界になったらいいなと思います」

 小学6年生のういさんが願う「誰もが自分らしく生きられる世界の実現」は、大人たちに渡された課題とも感じ取れる。しかし何よりもまず「知る」ことが大切なのは、大人も子どもも同じ。LGBTQ+や多様性を「難しいテーマ」と捉える前に、親しみやすい言葉とイラストで綴られたこの絵本をおすすめしたい。

(文/児玉澄子)
『みんな えがおになれますように』
【作】うい
【絵】早川世詩男
【監修】松中権
【定価】1540円(税込)
【対象年齢】小学生(2年生以上)
【発売元】Gakken
◆『みんな えがおになれますように』公式サイト
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