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耳の聞こえないアイドル・中嶋元美が歌って踊るワケ「手話で歌って踊り、自分らしさを表現したい」

2022-12-30 eltha

 川口春奈主演ドラマ『silent』(フジテレビ系)で手話監修・指導した中嶋元美さんは、佐倉想(目黒蓮)と同じ中途失聴者で、ZERO PROJECTでアイドルとしても活動している。夢は「ミュージカル俳優になること」と言う彼女に、どのように乗り越えたのか、エンタテインメントの現場でどのような活動を行っているのか聞いた。

手話と出会い、再びステージに立ち生まれ変われた

――高校生のときに耳が聞こえなくなったそうですが、どのような状況だったのでしょうか?

中嶋元美 いま考えると、おそらく生まれつき感音性難聴だったと思います。もともと聞こえにくかったのですが、中学生の頃から補聴器をつけてなんとか生活していました。全く聞こえなくなった時は、本当にショックでした。スピーカーを大音量にして聞こえないことを確かめたり、どうやって生活していけばいいのか迷いもあり、親との喧嘩も増えました。夢だったバレエダンサーの道も諦め、お先真っ暗だったのを覚えています。

――どのように乗り越えたのでしょうか?

中嶋元美 母が手話パフォーマンスを見つけてくれたことでした。手話に出会い、生まれ変わったような気分でした。難聴だった時は、自分の意見は言わずに周りに合わせて生きていたので、辛いことが多かった。いまは、手話で話せて目で見てコミュニケーションが取れるので、自分の意見をしっかり持てるようになりました。周りからたくさん影響を受け、自分に自信がついたことで、乗り越えられました。
――“歌って踊る”人前に立つ仕事を志したきっかけを教えてください。

中嶋元美 3歳からバレエを習い、将来の夢はダンサーでした。毎日レッスンに通い、コンクールも挑戦しました。中学生で感音性難聴が発覚し、ダンサーの道を進むか悩みました。でも補聴器を着けていれば踊れたので、そのまま続けていたのですが、高校1年生で全く聞こえなくなりました。

――聞こえなくなって諦めようと思わなかったのでしょうか?

中嶋元美 諦めかけた時に、母が手話で歌って踊る劇団を見つけてくれて、手話パフォーマンスに興味を持ちました。それをきっかけに手話という言葉に出会い、同じ仲間と出会いました。「手話は空中に描くアート」そんな素敵なパフォーマンスをやりたいと思い、再びステージに立つようになりました。幼少期から人前に立つことが大好きで、聞こえなくなってからもステージに立ちたいという想いがあったので、手話と出会ったことで夢を追いかけられようになりました。

手話という言語でのエンタテインメントがある「ミュージカルに挑戦したい」

――夢は“ミュージカル俳優”ですが、海外ではろう者がミュージカル舞台で活躍しています。日本ではまだまだ認知されていませんが、どのようなことを望んでいますか?

中嶋元美 私はミュージカルが大好きで、たくさんの舞台を観劇しました。オーディションにも挑戦していますが、「審査対象にはできない」「どうやって歌うのか?」と言われたこともあります。いまはまだろう者の役しかできないイメージがあります。『ロミオとジュリエット』や『エリザベート』、『レ・ミゼラブル』などのメジャー作品を手話で歌い芝居する。そんな世の中が来ればいいなと思っています。日本では、ろう者がミュージカル舞台で活躍することは一般的ではないのですが、諦めずに挑戦したいです。

――中嶋さんは、「ボランティアのイメージが根強い手話での活動を、きちんと仕事として成立させていく」「活動の場が限られている」と言っていますが、当事者の皆さんを取り巻く環境について教えてください。

中嶋元美 手話には、優しさや思いやり、助けてあげる…そういった“福祉”のイメージが強くあり、ボランティアでの仕事が多く、活動場所も少ない。手話は、英語通訳と同じ“言葉”であるにも関わらず、職業として確立されていません。健聴者のために通訳がいるのではなく、対等にコミュニケーションができるようになるためにも、職業としての確立は必要なことだと思っています。
――中嶋さんは、ドラマや映画の手話監修・指導を始め、アイドルとして活動しています。エンタテインメントの現場はどうですか?

中嶋元美 「どのように活動するのか?」と聞かれたり、「前例がないのでサポートできない」と芸能事務所に言われたり、オーディションを受けるチャンスも少ない。最近では、「当事者の役は当事者に」という考えも増え、とても良いことだと思っています。健聴者でも、ある程度の知名度がないと大きな役がもらえない。そのなかでチャレンジし、手話という言語でのエンタテインメントがあることを、訴え続けたいです。

――現在ZERO PROJECTでは、どのような活動を行っているのでしょうか?

中嶋元美 毎週対バン公演があり、ファンの応援によって上のリーグに昇格できるため、特典会や街中でビラ配りもします。見た目では聞こえないことがわからないため、「なんであの子だけダンスなの?」と思われたり、ビラ配りをしていると聞こえないことにびっくりして避けられることもあります。ファンの方でも、どうしたらいいのかわからず、なかなか話かけられないので、興味を持ってくれる方を増やすのは大変です。勇気を持ってやり続けることで、心を開いてくれる人が増えたらいいなと思っています。

私の声は“手”…手話で歌って踊り、自分らしさを表現したい

――先日ソロライブを行いました。お客さんと温度差を感じることはあるのでしょうか?

中嶋元美 ソロライブということもあり、以前活動していた劇団のお客さまやYouTubeを観た人など、私のことを知っている人が多く、手話に興味を持ってくれているように感じました。amazarashiさんの「つじつま合わせに生まれた僕等」を手話でカバーしたのですが、お客さまが歌詞を目で見て感じて取ってくれていることが伝わり嬉しかったです。

――アップテンポの楽曲を手話パフォーマンスするのは、難しくないのでしょうか?

中嶋元美 私は、スローテンポの楽曲が苦手です。バラード曲は歌詞に抑揚ができ、どこで歌詞が終わるのか掴みにくい。手話に変な間ができてしまうので、テンポが遅い曲を覚える方が大変です。ソロで披露する時は、アップテンポの曲が多いです。

――音に合わせてパフォーマンスするのは、大変なのでしょうか?

中嶋元美 幼少期に鍛えたリズム感が、いまも残っています。それでもリズムを覚えるのは大変です。1曲覚えるのに1週間ほどかかりますが、体にしみつくまで練習しています。好きなことなので、大変だとは思っていないです。
――SNSでは、「すごく明るい方」「見ているこちらが笑顔になれるような素敵な方」といった声があります。子どもの頃から明るく活発的だったのでしょうか?

中嶋元美 昔の自分とは全く違います。難聴に気づいたのは中学生ですが、幼少期から聞こえない音もあったので、グループで会話することが苦手でした。補聴器をつけ始めてからは、女子特有のグループ行動がより苦手となり、わからなくても周囲に合わせてうなずき、笑って誤魔化していました。聞こえなくなって手話で会話するようになり、自分の意見を伝えることができて明るくなったと思います。

――どのような活動をしていきたいですか?

中嶋元美 いまは全く聞こえませんが、大好きな音楽を切り離すことはできません。芝居など、聞こえなくてもできることはたくさんありますが、自分らしさを表現できるのは、歌と踊りです。いま私の声は“手”なので、手話で歌って踊りたいです。

――表舞台と裏方と両方の仕事で活躍されていますが、どのようなことを伝えたいですか?

中嶋元美 ご縁があって裏方の仕事もさせていただいています。どちらも知っている私だからこそできることもあるのかなと感じています。どんな仕事であっても、私が私らしくいるために、手話や自分自身のこときちんと伝えていきたいです。

『silent』手話監修・指導したZERO PROJECTでアイドルとしても活躍の中嶋元美

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