【不倫漫画】“専業主婦の負い目”感じていた妻がモラハラ不倫夫に逆襲「必ず一番苦しむ方法で打ちのめす」、パワーバランスの変化に読者も応援
2023-02-06 eltha
「稼いでない…」勝手な“負い目”が夫のモラハラを助長する?
岩島朋未さん主人公の明日実は元舞台役者で、本来はとても実力のある女優なんです。ところが、結婚・出産で家事と育児に追われる日々が続く中、旦那が次第にモラハラ化していき、「自分には価値がないんじゃないか」と思い込むようになってしまったんです。旦那に「誰のおかげで生活できてると思うんだ」「お前には生産性がない」と言われ、苦しめられます。私もかつて専業主婦という立場に負い目を感じていたことがあって、その経験を明日実とモラハラ夫のキャラクターに落とし込んでいます。
──家事や育児が立派な仕事だという理解が広まる一方、専業主婦を軽んじる傾向はなくなりません。
岩島さん私の場合は夫にモラハラされていたわけではなく、専業主婦として子育てをメインにするのも夫婦で決めたことでした。ただ、結婚するまで正社員として働いていたこともあり、自分がお金を稼いでいないことに勝手に負い目を感じてしまっていたんです。結婚や出産でキャリアをストップした女性には、そんなモヤモヤを抱えている方も多いんじゃないかと思います。
──復讐と社会復帰を鮮やかに果たしていく明日実が、読者から共感されるポイントになっています。
岩島さん子どもの幼稚園や小学校のママさんと話してると、「この人すごく仕事できたんだろうな…」と思う方が本当に多いんです。読者の中に、もしも専業主婦という立場にもどかしい思いを感じている方がいたら、明日実が輝いていく姿に希望を感じてほしいですね。そして何かを始めるきっかけになったら、作家としてこんなにうれしいことはありません。
映像作品と“分業制”ウェブコミックの違い「脚本の精度がより問われる」
岩島さん「セイサイ」は3つの意味を持たせていて、主要キャラクター3人の立ち位置を1つのタイトルに収めたいと考えて付けました。「精彩」な脚本を書くモラハラ夫と、「正妻」の座を狙う愛人、そしてその2人に「制裁」を下す主人公の3人です。最近は長いタイトルのウェブコミックが人気なので、シンプルすぎると埋もれてしまわないかな? とも懸念しましたが、タイトルも含めてこだわりたかったので、当初のアイデアのまま進めさせていただきました。
──岩島さんは、映画やドラマなどの脚本を手掛けられているとのこと。本作はどのような経緯で誕生したのですか?
岩島さん制作会社SORAJIMAの代表の方から、「不倫をテーマにした企画を出してみませんか?」とお声がけをいただいたのがきっかけでした。SORAJIMAさんでは、その前からYouTubeアニメの脚本を書かせていただいていたのですが、ウェブトゥーン事業部を立ち上げるにあたって、「不倫」を注力テーマの1つにするということで企画を募集されていたんです。と言っても、最初はコンペだったんですけどね。
──「不倫ものなら書ける」という自信が?
岩島さん自信というより、濃厚な人間ドラマが描けるテーマとしてチャレンジしがいがあると思ったんです。ただ、これだけ不倫テーマの漫画が多いだけあって、読者のみなさんもとても目が肥えていて、いろんなコメントから気づきをいただくことも多いです。不倫漫画の熟練の読み手の方々を、どれだけ楽しませられるかが勝負だと思って、日々書いています。
──クレジットでは「制作:SORAJIMA」となっていますが、作画にはどんな方が携わっているんですか?
岩島さんキャラクターデザインやネーム、線画、着彩、背景、仕上げなど、各分野専門の10人ほどの方々が分業体制でスタジオ制作されています。そのチームを1人の編集者さんがまとめる感じですね。私は編集者さん以外、ほとんど関わることがないので、絵が上がってくるのをいつも楽しみにしています。
──多くの方が分業で関わることで、どこかでストーリーの意図がズレてしまうなどの懸念はありませんか?
岩島さんそうならないよう、脚本にはかなり細かく情報を入れるようにしています。たとえば、主人公と不倫相手が向き合って座る場面で、座る順番まで指定したり、参考になりそうな画像があれば添付したりすることも…。ただ、「怒り」や「悲しみ」と言った感情の度合いを言葉で伝えるのがけっこう難しくて、ネームの段階で「もっとこうお願いします」とコメントさせていただくこともありました。
──映像作品で監督や演出家、役者に脚本を委ねるのとは、どんな違いがありますか?
岩島さん映像作品は、監督のカラー、役者さんのお芝居などが、脚本を想定以上に面白くしてくれることが多いです。担当の編集者さんも言っていたのですが、ウェブトゥーンも実はあまり変わらないんじゃないかと思います。役者さんにあたるネームや線画のクリエイターさん達が、脚本の魅力を何倍にもしてくださいます。その分、脚本の精度が問われている気がしますね。そうした中で「愛人の表情をここまでゲスに描いてくださるとは!」と驚かされることもよくあって、作画チームのみなさんにはいつも感謝しています。
『セイサイのシナリオ』
原案:岩島朋未/制作:SORAJIMA
劇団員時代に出会った脚本家の良平と結婚し、一児の母となった明日実は家事や育児に追われる忙しい毎日を送っていた。一方の良平もテレビドラマを手掛けるまでの人気脚本家となり、お互いの溝は深まるばかり。そんな中、良平がドラマの原作小説を担当する敏腕編集者と浮気をしていることが判明する。明日実から良平を奪い取ろうと画策する愛人と夫の策略に、明日実はドラマ業界を巻き込んだ復讐を決心するのだが…。