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整形に700万円投じた女性「美醜から離れたところで生きたい」 踏み出した新たな一歩

2023-02-25 eltha

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

 継母からの虐待によって自分を認められなくなり、引きこもり、過食、鬱病と困難な青春期を過ごしたSeinaさん(29歳)。「美しくなれば人生が変わるかも」という一心で整形を繰り返し、12年間で総額700万円を投じたという。その経験を活かして美容整形カウンセラーとして活動するも、次第に「美醜から離れたところで生きたい」という思いに苛まれるように。整形依存を断ち切り新たな夢に向けて奮起している今、「やっと自分の人生のスタート地点に立てた気がする」と微笑む。壮絶な過去のトラウマやコンプレックスにどう整理をつけ、整形への欲求を断ち切ることができたのか。新たな一歩を踏み出した“今の思い”を聞いた。

存在を否定される暴言と虐待…整形は唯一の“希望の光”だった

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

 Seinaさんが初めて整形に踏み切ったのは、思春期に差しかかった中学1年生の時。重たい一重の目がコンプレックスで、「二重になれば少しは自己嫌悪感が減るのではないか」と、すがるような思いで、反対する父を説得した。整形したら、“何か”が変わるーー。当時、自分の顔が気持ち悪くてしょうがないと感じていたSeinaさんにとって、整形は唯一の希望の光のようなものだった。

 それほどまでに容姿コンプレックスに陥る原因となったのは、複雑な家庭環境と継母からの虐待だった。

「3歳のときに両親が離婚して父方の実家に預けられ、7歳のときに父の再婚をきっかけに家族で暮らし始めたのですが、継母から存在を否定するような暴言に加え、身体的暴力、食事を与えられないなどの虐待を受けました。自分は自分のままでいいという自己肯定感が育まれないまま成長し、過剰に容姿を気にするようになってしまいました」

 追い打ちをかけたのが、片思いをしていた同級生の男の子からの「お前ブサイクだな」というひと言だった。

 しかし、まぶたを二重にしても、Seinaさんの人生は好転しなかった。

 初整形を受ける1年前、父は継母と離婚。ようやく親子水入らず、平穏な暮らしが始まったと思った矢先に、父にがんが発覚。14歳で父を亡くしてからは、将来に対する希望を何ひとつ持てないまま引きこもりとなり、満たされない心を埋めるように過食に走り体重が激増。親戚の勧めで通信制の高校に通い、大学進学を果たすも、鬱病を発症し、中退。勇気を振り絞って一歩踏み出しては、挫折して引きこもる。その繰り返しだった。

価値観を突き詰めることの難しさ「死ぬことがある施術を私が勧めてしまっている」

容姿に悩んでいた頃のSeinaさん

容姿に悩んでいた頃のSeinaさん

 そんなSeinaさんが頼らざるを得なかったのが、気のすむまで容姿を整える=整形だった。大学を中退した20歳からは夜職で整形費用を貯めては鼻や目の整形を繰り返した。

「当時は整形をするために働いていました。とにかく自分に対して自信がなかったので、顔をキレイにすれば、ダイエットして容姿を美しくすれば、自分に自信が持てるようになるんじゃないかと、その一心でのめり込んでいきました」

 洗練され見た目への意識は高まったが、それを保つには並大抵のメンタルでは太刀打ちできなかったという。

「何より辛かったのは、整形を繰り返しても決して自分に満足できないことでした。整形する前って期待値がすごく高くなるけれど、実際やってみると、『こんなもんか』という感覚で、思ったほどの変化は得られないんです。満たされないからまた整形するの繰り返し。終わりが見えなくて、やめ時がどこかもわからなくなっていました」

 そして24歳の時、「あちこちいじってみたけれど、最後は骨かなと思って」輪郭を変える手術を実施。最もコンプレックスだった部分を緩和したことで、精神的な安定を得られたという。その後26歳のときにメンタルケア心理士の資格を取得。自分と同じように容姿に悩む人の支えになれたらと美容整形カウンセラーとしての道を歩み始めた。
Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

 “整形アカウント”として、SNSで自身の整形を発信したSeinaさんの元には、同じ容姿への悩みを抱える人からの相談が多く寄せられた。自身が施術したクリニックに人が殺到していることも耳にした。しかし活動から1年が経ったとき、Seinaさんは整形にこだわる自身の活動や行動について、大きな疑問を抱くようになる。

「よい方向に変わる人もいるけれど、悪い方向に変わる可能性もあるのが整形です。とくに骨切りは、顔の変化が大きい分、リスクも大きくなります。ところが、自分が情報発信することによって、手術を受ける人が増えてしまったんです。最悪、死ぬことがある施術を私が勧めてしまっている。すごく怖いことをしているのではないかと、情報発信する責任の重みを感じたことがまずひとつありました。

 同時に、美への欲が強いことによって、自分の中で沸き起こるマイナスな感情も無視できないところまできていました。たぶん、いくらお金をかけても自分の顔に満足することなんてないだろうという自己理解とともに、過剰な欲は毒になるというか、欲が多いと辛いし、疲れることを痛感し、手放したほうが楽になれるのではと思い至ったんです」

「あなたはあなたのままでいい」親になった時、我が子に伝えたい言葉

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

Seinaさん(撮影:岡田一也) (C)oricon ME inc.

 「止まらない整形への執着を捨て、美醜とは関わりのない世界で生きたい」。そんな思いから飲食店の経営を目指して、地元で人気のイタリアンcafeレストランで働き始めたのが27歳の時。素のままの自分で体当たりした初めての職場は、Seinaさんに大きな気づきをもたらし、自信を与えるきっかけにもなった。

「忙しいお店で常に戦場みたいでしたが、一生懸命働くみなさんの姿を見て、視野が一気に開けていったのを感じました。働くことの喜びを知れたのは、この時からです。大切なのは容姿じゃないと、外見ばっかり気にしてきた自分がすごく愚かで恥ずかしくなりました」

 その陰には、何も言わずに見守りSeinaさんの意思を尊重してくれていた夫の存在も大きかったという。

「夫と出会ったのは22歳のときで、交際2ヵ月目くらいで整形や生い立ちについて打ち明けました。この人には、ありのままの自分を見てほしいと思えたんです。私の悩みを理解してくれ、受け入れてもらえた。今まで生きてきたなかで初めて安らぎを得られた気がしましたし、過去にとらわれずに新しい人生を歩みたいという気持ちにもなれました。

 もちろん、今も過去のトラウマは完全に断ち切れていないですし、一生消えないだろうと思います。でも、うまく消化し始めているというか、よく笑わせてくれる夫のおかげで、過去を思い出して泣くということはほとんどなくなりました」
 夫の助言でテイクアウト中心のパン屋の開業を決め、2年間の準備期間を経て、今年、ハードパン専門店をオープンさせたSeinaさん。「今、自分の人生のスタート地点にやっと立てた気がする」と瞳を輝かせて微笑む。

「お客様から喜んでもらえたり認めてもらえると精神的にも満たされ、もっとがんばろうと前向きにもなれています。美醜とは違うところで、自分の能力を認めてもらいたいのかもしれませんね」

 仕事も人生も充実しているからこそ、夫婦の今後、子どもへの考えも頭をめぐることがあるという。

「どんな容姿で生まれてくるのかという不安はもちろんありますし、虐待は連鎖するという話が頭をよぎることもあります。でも、いつか夫に見せてあげたい。急いではいないけれど、恵まれたらいいなと思っています。どういうふうに育てたらいいのか、正直、わからないですが、自分の生い立ちを反面教師に、私が育ってきた環境とは正反対なことをしてあげたいです。自分のようにはなってほしくないから、しっかりそばにいて、愛情をかけて、あなたはあなたのままでいいのよということを伝えられたらいいなって」

 壮絶な過去に苛まれながらも自らと対峙し、人生を切り開いているSeinaさん。「今も決して自分の顔に満足しているわけではない」と苦笑しながらも、決意した表情でこう胸を張る。

「自分の顔を愛おしめるようになれるとは思えませんが、今後の生き方でそう変わることもあるかもしれません。とにかく今は、仕事に没頭している時間がすごく好きだし、今を一生懸命生きている実感があります。もう後ろは振り返らないと決めたので、ただ前を向いて生きていきたい。昔のトラウマやコンプレックスを切り離すのは、今を大事に生きることなのかもしれません」

※この記事は、eltha by ORICON NEWSとYahoo!ニュースとの共同連携企画です

(取材・文/河上いつ子 撮影/岡田一也)
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