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生後10ヵ月から義眼だった義眼少女ぴぴるさん”普通”に囚われながらたどり着いた答え「無理して普通に憧れるなんてコスパ悪すぎ」

2023-04-25 eltha

「義眼少女ぴぴる」として義眼で生活するリアルな日々を発信している女性がいる。自身のYouTubeチャンネルでは義眼を着脱する様子も映しており、「閲覧注意」と注意書きされたその映像は一瞬ハッとさせられるが、メイクやファッションを楽しむさまは等身大の若い女性そのものだ。“普通”とは違うことで心ない声を浴びせられ、生きづらさを抱えてきたぴぴるさんが「無理して普通に憧れるなんてコスパ悪すぎ」という境地に至った背景とは?

「目が変なヤツ」クラスの男子から陰口が“義眼=普通じゃない”を自覚するきっかけに

 ぴぴるさんは、右目の眼球が育たない「小眼球症」の状態で生まれ、生後10ヵ月から義眼を装着して生活してきた。

「よく『生活に不便はないですか?』と聞かれるんですが、私にとってはこれが普通。生まれてから一度も両目でものを見たことがないので、ほかの方の“普通”とは比べられないんです。むしろ病気や怪我などで後天的に義眼になった方のほうが、ご不便な思いをされてるんじゃないかなと思います」

 2019年5月にYouTubeチャンネル「義眼少女ぴぴる」を開設。義眼のメンテナンス方法や義眼メイクなど、義眼でより快適に生活する方法を発信している。

「義眼は1日5〜6回外して洗います。幼稚園くらいまではそれが普通だと思ってましたね。みんな休み時間とかに外して洗ってるんだろうなって」
 自分が“普通”とは違うことに決定的に気づいたのは小学3年生の頃。クラスの男子から「目が変なやつ」と陰口を叩かれ、義眼にコンプレックスを抱くようになった。

「あとは『目の中どうなってるの?』と聞かれることもよくあって。子どもって遠慮がないから、平気でプライバシーに踏み込んでくるんです。純粋に知りたいのかもしれないけど、私にとってはそれがすごくストレスだったし、同じような思いを抱えてる義眼ユーザーの子もいると思うんです。だったら私が情報として『こうなってるんだよ』と見せてあげれば、傷つく子も減るんじゃないかと思ってYouTubeで公開するようになりました」

右目失明でも障がい認定されないハードル 「義眼よりも眼帯のほうがいいのでは?」声への疑問視

 YouTubeチャンネルでは視聴者の義眼についての疑問や質問に答える形の動画も多数投稿している。

「『義眼って球体だと思ってました』というコメントはすごく多いですね。あるゲームで義眼がゴロッと出てくるシーンが有名みたいで。あとたまに『義眼カッコいい』というコメントもあります。アニメとか漫画で義眼キャラが特殊能力を持ってるように描かれることがあるからなのかもしれないですけど、『いやいや、そんないいものじゃないですよ』って思います(苦笑)」
 生まれつき右目失明のぴぴるさんだが、左目の矯正視力が基準以上あるため障がい認定はされない。義眼の費用も全額負担で、安くても15万円前後と若い女性にとっては重い負担だ。厚労省では2年に一度の交換を推奨しているが、ぴぴるさんは「5年以上、新しい義眼を作っていない」という。

「特に多いのが『義眼よりも眼帯のほうがいいのでは?』というコメント。これは面と向かっても本当によく言われるので、義眼の身体的なメリットや眼帯を選択しない理由も動画に上げました。でもその理由を知る前になぜ『眼帯のほうがいい』と言うのかが、私にとっては逆に疑問です。やっぱり眼帯のほうが違和感なく普通に見えるからなのかな、人にも普通であってほしいのかなとか……いろいろ考えちゃいますね」

「“普通”じゃない面を生かしたほうが、自分にとっても社会にとっても有益なんじゃないか」

 自分の目は普通とは違う。そう自覚しながらも、学生時代は必死で“普通”を目指していた。

「学校という狭い社会で浮くのって怖いじゃないですか。だから自分を抑えて周りに合わせて、傷つくことを言われても聞こえないふりしてやり過ごしてたんです。だけどどう頑張っても“普通の目”にはなれない。結果が出ないことを無理して頑張るなんて『コスパ悪すぎ』だって気づいてからは、普通を諦めました。それよりも“普通”じゃない面を生かしたほうが、自分にとっても社会にとっても有益なんじゃないかなと考えるようになったんです」

 義眼による就職差別を受けたことも動画で明かしている。現在、動画の更新はしばらく休んでいるが、YouTubeは今後も続ける意向だ。

「いただいた質問にも一通り返せたので、また新たな質問が来たら動画をアップしたいです。義眼のほかにも自分にしかできないことを発信していけたらいいなと思ってます」

 そんな彼女がロールモデルにしているのが、声優の田村ゆかりだ。

「田村さんは子どもの頃に学校に馴染めなかったそうですが、今は作品やライブで多くの人に夢を与えていらっしゃいます。私も学生時代はなるべく目立たないように振る舞っていましたが、普通とは違うことにコンプレックスを抱く前はお遊戯会などが人前で表現することが大好きでした。YouTubeを始めたことで、本来の自分に戻れたような気がします」
(取材・文/児玉澄子)
義眼少女ぴぴる
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@user-vc4en9pp5b/videos

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