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鏡を見たらおばあちゃんの顔…28歳で入れ歯となった女性が見出した光「同じ立場の人とつながるだけで涙が出るほど救われた」

2022-12-12 eltha

YouTubeをはじめSNSで入れ歯になった経緯を発信している、ろぺさん

YouTubeをはじめSNSで入れ歯になった経緯を発信している、ろぺさん

 摂食障害で嘔吐を繰り返し、胃酸で歯が溶けたことで20代のうちにほとんどの歯を失ったろぺさん。治療方針をなんとか受け入れられたものの、いざ入れ歯となって鏡を見てみると、自分の顔が“おばあちゃんの顔”のように見えたという。「自信も希望もない。人生が終わった」と感じたろぺさんは、どのようなところに光を見出したのか。「今、結構笑えているんですよ」と語る彼女に、どん底から立ち直るにいたった過程を聞いた。

入れ歯になって「人生が終わった」と絶望…心身にさまざまな変化

――入れ歯になってどのような変化があったのでしょうか?

ろぺ実際入れ歯になって、物理的には顔や首、肩がすごく凝るようになりました。入れ歯をしていることで変な力が入るようになって。私の場合だけかもしれないですけど、年中頭とかも痛くなるようになっちゃって。それが最初はすごいしんどかった。それと、バランス感覚が大分不安定になった感じがします。人間って歯でバランスをとる部分もあるらしくて。それがなくなって、歩いてて何もないところでつまずくようになったり、こけるようになったり、フラフラするような感覚があります。

――食べることについては、いかがでしたか?

ろぺ食事に関しては、当然噛みづらいし、味も感じづらいんですよ。味って舌だけじゃなく、舌と上あごを使って感じるらしくて。上あごは入れ歯のプラスチックで覆われちゃってるので、味が感じにくいんです。実際、普通に食べてた時より半分くらいの味の感覚しかない感じがします。また感覚が分かりづらいから、誤飲が多くなりました。食べ物の大きさも感じづらいですね。魚の骨も分かんなくて、そのまま飲み込んじゃうことがよくあります。元々食べることが人一倍好きだったんですけど、入れ歯になって食べる楽しみが半分以下になりました。それが当時はすごく苦しかったです。

――不便なことが多いのですね。ろぺさんの心境としてはいかがでしたか?

ろぺ最初「入れ歯になる」と聞いた時は、「ああ、やっぱり。しょうがないな」と思っていましたが、いざ入れ歯になったら「こんなに大変なのか、こんなに苦しいのか」って思いました。とにかく自分に全く自信が持てなくなったんですよね。元々見た目をすごく気にする人間だったから、摂食障害になったり細さを求めたりしてたんですけども。

ーー見た目の変化についてはいかがでしたか?

ろぺ歯がなくなって鏡を見た時、自分がおばあちゃんみたいな顔で……。その時にもう自信がなくなって希望もなくなって、「人生終わった」と思ったんです。人に会いたくないので、入れ歯になってからどんどん引きこもるようになって。興味を持つことがあっても、何もやりたくない、挑戦したくない、どうせ人生終わってるからって。そうやってどんどん後ろ向きな生き方になって。当時世界が真っ暗になった感じだったかな。恋愛も一切しないと思いました。今はいろいろと考え方も変わって前向きに生きられるようになったけど、当時は本当に人生終わったとしか思えなかったですね。

――入れ歯になったあと、過食症の症状は続いていた?

ろぺ入れ歯になったのは、過食症を発症して10年後の28歳頃でした。入れ歯になって症状が良くなったかと言うと、全然そんなことなくて。入れ歯になってもずっと過食をしていた感じです。

――18歳の頃から人生を振り返ったとして、もっとこういう選択をしておけばよかったと思う部分はありますか?

ろぺ周りの人にも病気のことをちゃんと話しておけば良かったのかなって。やっぱり隠してたことが私の場合はマイナスにしか働かなかったですね。もっと人に相談して人に頼るということを当時の自分ができていたら、また違ったかなと思います。元々プライドがすごく高くて、「弱いところを見せちゃいけない」みたいな感じで生きてたから、言えなかったんですよね。

 ただ、誰かれ構わず話してしまうのも注意が必要で、それで逆に自分が傷ついたり関係性が悪くなったりしたこともあるので、話す人は選んだ方がいいと思います。まずは自分の大切な人や身近な人(家族や恋人、仲のいい友人)に話してみて、そこで理解ある人がいたらその後も相談に乗ってもらうのがいいかもしれません。理解のない人にいくら相談しても傷つくだけで、余計に孤独感が増すことがあるので。

――病気のことは、ご家族に話されていましたか?

ろぺ病気のことは20代になって親にも話したんですけど、全然分かってもらえないから言わなくなったんですよね。で、結局わかってもらえないから、もう自分でどうにかするしかないと思って一人で頑張っていました。その後、私がSNSを始めてテレビの摂食障害の番組に出たんですよ。それを見た時に「こんなに辛かったんだね。全然知らなかったよ」と、初めて分かってもらえました。

「寂しさや苦しさ、虚しさを埋めてくれる」アートが救いに

――そんなろぺさんの気持ちが上向きになった転機を教えてください。

ろぺそれがまさしくSNSを始めてから出会った人たちの存在なんです。自分と同じ病気の人たちとつながれて、そこでお話しができて、苦しみを分かち合うことができた時に、「一人じゃないんだ。自分だけじゃないんだ」と思えたのがすごく大きかったです。これまで周りに理解してくれる人が誰もいなかったから、自分の気持ちをわかってくれる人がいて、その人たちと話しているだけで涙が出るほど救われたんですよね。病気については相変わらず治っていませんが、気持ちの面では全然違います。やっぱり孤独感が違いますね。いろんな人とつながっていられるし、筆文字アートもありますから。

――今ろぺさんは、クリエイターとして筆文字アートの作品作りも発信されています。筆文字アートを始められたのはいつ頃ですか?

ろぺSNSを始めたのと同じ頃ですね。最初は「苦しい」「死にたい」って自分の気持ちを書いていました。それをたまたまFacebookやTwitterとかにアップしたら、コメントやリプライ、DMをもらって。「苦しい」「死にたい」って文字をアップすると、必ず誰かが言葉をかけてくれたんです。「大丈夫だよ」「一人じゃないよ」って。たった一言でも言葉をもらえると本当に救われて涙が出ました。それから「勇気をもらいました」「元気が出ました」「私も頑張って生きようと思いました」っていう言葉を徐々にもらうようになりました。

ーーSNSの存在は大きかったですか?

ろぺ私の書く文字を見るだけで泣いてくれたり、感動してくれたりする人がいて、言葉や文字にはものすごい力があるんだなと思いました。「こんな何もない自分でも、人の役に立てることがあるんじゃないか。だったらもっと書いてみよう。書き続けていこう」と思うようになって。結局筆文字アートというものが自分の生きる支え、目的になり、それと心でつながれる皆さんとの出会いで光が差してきた感じです。

――今のろぺさんにとって、筆文字アートはどのような存在ですか?

ろぺ寂しさや苦しさ、虚しさを埋めてくれるものだと思います。アートに熱中している時って、不思議なもので、寂しさも苦しさも感じないんですよ。アートは真っ暗になっていた自分の現実世界に色を与えてくれたし、ガチガチに動かなくなっていた心を生き返らせてくれて、そこにまた温度をくれた存在なんですね。

 今は人生そのものがアートだと思っています。アートって、自分の頭で考えて「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤しながら作品を生み出すんですけど、それがまさしく人生と同じだなと思っていて。そのことを、アートを始めてから気づきました。以前の私は自分の頭で考えて人生を作ることをしてこなかったんです。誰かに人生を作ってもらうように、人に言われるままに生きてきたので。アートを始めて、初めて人生は自分で作れるものなんだと気づきました。

自己肯定は難しいが…「私、今結構笑えているんです」

――病気や入れ歯になって苦しかったことが多かったと思いますが、逆に笑顔になれたことはあったのでしょうか?

ろぺそれこそアートに出会えたことは、入れ歯になったお陰かもしれないです。そもそも病気になって入れ歯にならなければ、アートを書き始めることはなかったので。病気と入れ歯が私をアートに導いてくれたと思うんですよ、今は。病気になって辛かったけど、それを越えた先に、今まで出会えてなかった自分に出会えたことが大きかった。そもそも今やってることって、元々自分がやりたかったことなんです。そこに導いてくれたのが病気でした。今の自分になるために病気があったような感覚ですね。私、今、結構笑えているんですよ。やりたいことをやれているし、ずっと自分の中に閉じ込めていた自分を今出せていますから。病気も入れ歯も死にたいぐらい苦しかったけど、本当の自分に出会うために必要なものだったんだと今は思えます。

――同じ病気の方とか辛い思いをしてる方もいると思いますが、そんな方に向けてのメッセージをお願いします。

ろぺ私もそうでしたが、病気の期間というのは死にたいくらい辛いと思うんです。でも病気っていうのは、自分が生まれ変わるために必要なものなんじゃないかと、自分の経験からそう思うんです。よく病気がメッセージだって言うじゃないですか。自分らしくない人生を生きていると、病気がメッセージとしてやってくると聞いたことがあります。「今のあなたの生き方、間違ってるんじゃない?」「ちゃんと自分の人生を生きてますか?」とか、それぞれ人によってメッセージは違うと思いますが、病気って何かを気づかせようとしてくれていると思うんですね。

――病気は悪いイメージだけではない?

ろぺ普通に考えたら病気は悪いイメージですが、実はそうじゃないと知っていてほしいです。病気は敵じゃない。敵だと思って「あっち行け」みたいな感じでいると、逆に悪化することもある。病気をやっつけようとするんじゃなくて、病気に寄り添い、病気と向き合うことがすごく大事です。病気と向き合うってことは、イコール自分自身と向き合うってこと。自分の人生、今の生き方、考え方、生活習慣とか、そういうことを見直すことだと思います。

ーーどのように見つめ直してこられたのでしょうか?

ろぺ私は今よりもっと幸せな自分になるために病気はやってくると考えています。病気や苦しみは、心の中に押し込められているもう一人の自分からのメッセージなんですよね。だからそのメッセージに気づいて、無視しないでちゃんと受け取ってあげて、焦らないで一歩ずつ一歩ずつ、今自分が始められること、できることをとにかくコツコツと積み重ねていくことが大事だなと思います。

 あとは、とにかく一人で頑張らないこと。人に頼ること、一人で苦しまないで吐き出すことが大事です。病気の克服には人との繋がり……とくに「心の繋がり」がとても大切です。今はSNSで気持ちを言える場所や人と繋がれる環境があるので、とにかく苦しさや寂しさ、心の叫びを閉じ込めないで、どんな下手な言葉でもいいので発信してみてほしいと思います。どんな小さな行動でもいいんです、その小さな行動の積み重ねが、必ず未来の自分に繋がっていくと思います。

YouTube:「ろぺのあとりえ」
https://www.youtube.com/@RopeAtelier 
Twitter:@rope624
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