心の奥にしまっていた感情があふれた。
「これまで平等だと思っていた母の愛情が、ふみちゃんの方に多く注がれているんだと思いました」
さらに追い打ちをかけるような出来事が続いた。“ちょっと変わった”ふみちゃんは、数ヵ月で就職先をクビになり、心配した母親ははちみつこさんにふみちゃんとの同居を提案した。料理も掃除も苦手なふみちゃん。一緒に暮らせば、働きながらサポートもしなければいけない。悩んだ末、母親の提案を断った。
その後、ふみちゃんは母親の支援を受けながら3年間就職活動を続け、障がい者枠で仕事に就いた。現在も元気に働いているという。当時、可愛い妹を突き放す罪悪感はあったものの、それ以上にふみちゃんや、大好きな母に腹が立ってしまう自分が嫌だったと話すはちみつこさん。離れて暮らす間に、結婚出産を経験し、2児の母になった。
「母は“母親としてできる精一杯のことをしてあげたい”と思っていたんだと思います。今まで理解できなかったその気持ちに、今は少しだけ寄り添えるようになったと思います」
一方で、『きょうだい児』として悩む当事者には「背負わなくていい」とアドバイスする。
「私自身、ふと将来のことを考えて『ゆくゆくは妹の面倒を見なければいけないのかな』という漠然とした不安を感じたことはありました。でも、今言えるのは、“背負わなくていい”んだということ。『きょうだい児だからこうあるべきだ』『きょうだい児だからこうしなきゃいけない』という考えに縛られることもあると思いますが、私は、『ここまでならできるから、こうしよう』と一定の線を引くことで、すごく気持ちが軽くなりました。妹とちょうど良い距離を保つことで、今とても良い関係を築けています」
広がりつつある支援の場の積極的な利用も呼び掛ける。
「様々な『きょうだい児』の形があると思います。どうしても切っても切り離せない環境に身を置かれる方もいると思います。親よりも兄弟の方が長い年月を共にすることになります。今現在少しずつ広がっている支援の場を、どうかたくさん利用して、1人で悩まないで欲しいです」
ふみちゃんとの日々、現在の関係を描いた漫画『妹の話〜きょうだい児の私が思うこと〜』をSNSで公開しているはちみつこさん。最後に「正直なところ、今でもこの先を考えたらどうすればいいんだろう…と考えてしまう事はあります。決して綺麗事だけではまとめられないのが現実ですが、色々あってたどり着いたかけがえのない今を、大事にしたい」と、心境を明かしてくれた。