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「黄色い鼻水は風邪が治りかけ」はウソ? インフルエンザや風邪が治っても油断できない副鼻腔炎とは【医師に聞いてみた】

2023-12-23 eltha

 インフルエンザや風邪をひいたときに、併発しやすい「副鼻腔炎」。鼻水だけでなく、頭痛や歯痛の原因になったりすることもあり、症状が重いと手術をするケースも。寒さが厳しくなり、風邪をひきやすい今だからこそ注意が必要ですが、予防策はあるのでしょうか。医療法人もたい耳鼻咽喉科・甕(もたい)久人医師に話を伺いしました。

副鼻腔内に膿がたまると、鼻の中に「生ゴミが腐ったような臭い」に

――副鼻腔炎とは具体的に何を指すのですか?

 頬、額(ひたい)など、鼻の周囲の顔の骨は分厚い骨ではなく中空(空洞)になっています。この鼻腔のまわりの骨の空洞が副鼻腔であり、鼻腔と小さな穴でつながっています。頬の部分の上顎洞〈じょうがくどう〉、額の前頭洞〈ぜんとうどう〉、目と鼻の間には篩骨洞〈しこつどう〉と三箇所、左右合わせ6つの副鼻腔があります。この副鼻腔の粘膜に炎症がおきた状態が副鼻腔炎であり副鼻腔に膿(うみ)が溜まることや、粘膜がむくみポリープができることもあります。「膿が溜まる」という意味で副鼻腔炎は「蓄膿(ちくのう症)」と呼ばれます。

――副鼻腔炎の主な原因は何ですか?

 副鼻腔炎の炎症は感染が原因の場合とアレルギー性の炎症によるものがあります。

 風邪などをきっかけに細菌やウイルスに感染し鼻腔粘膜に炎症が起きると副鼻腔は鼻腔とつながっているためさらに副鼻腔まで感染が波及し副鼻腔炎となり、細菌感染による膿が副鼻腔内に溜まります。また、アレルギー性鼻炎の免疫反応が強い場合も鼻腔、副鼻腔の粘膜が腫れ、副鼻腔内で粘液がたまり副鼻腔炎になります。

――副鼻腔炎の一般的な症状にはどのようなものがありますか?

 鼻詰まり、粘った鼻水は比較的早い段階で現れる症状です。さらに副鼻腔に膿がたまると、膿は鼻の中へ排泄されるため鼻水に粘った黄色〜黄緑の色の膿が混ざってきます。これがいわゆる「あおばな(青洟)」です。副鼻腔からの膿は鼻の奥の方に向かって流れるため、鼻水がのどに流れる後鼻漏という症状も副鼻腔炎の特徴です。進行すると膿が溜まった部位に痛みがでますので、頬が痛い、額が痛い、頭痛などがあらわれることになります。痛みが出始めた場合はもはや軽傷ではありません。嗅覚障害も珍しくはない症状です。

――「黄色い鼻水が出ると風邪がなおりかけている」とよく聞くのですが、あれは実は副鼻腔炎の症状なのでしょうか。

 はい。あれは治りがけではなく鼻風邪(急性鼻炎)から副鼻腔炎に進行していった結果なのです。かぜの数日後にうまく治る方と、こじれて副鼻腔炎になっていく方に分かれるのです。

――副鼻腔炎になると鼻の中が臭うといわれますが、どんな臭いがするのでしょうか?また、なぜそういった臭いを発するのでしょうか? 

 細菌感染による副鼻腔炎では副鼻腔内に膿がたまります。その膿は副鼻腔から鼻腔へつながる穴を通り鼻の中へ排泄され、鼻の中に常に膿が粘りつく状態になります。その膿の匂いを臭く感じ、生ゴミが腐ったような臭いと表現されることもあります。自分の鼻の中に匂いの原因があるので匂いを遠ざけることもできません。膿の混ざった鼻水は粘りつくため鼻の穴付近で粘着し鼻くそとして固まります。

副鼻腔炎の予防策「風邪をひかないことにつきる」

――副鼻腔炎の診断方法について教えてください。

 診断は医師による問診が基本となります。鼻水の色は?粘りは?いつ頃から?顔の痛みは?など症状を詳細に問診することで副鼻腔炎をおこしているかを診断します。さらに正確な診断のためには耳鼻科の受診が必要となります。耳鼻科では鼻の中を内視鏡などを用い粘膜の腫れ、ポリープの有無、膿の出ている部位などを観察し、さらに必要な場合はレントゲン検査、CT検査を行い確認をします。

――どのような場合に、医師の診察が必要となりますか?

 風邪をひき鼻水が垂れると思ったらいつの間にか粘り気のある色のついた鼻水に変わった場合は副鼻腔炎による鼻水である可能性が高いため医師の診察を受けてください。鼻水が外に出ず、のどに流れる(後鼻漏)ようになったら典型的な副鼻腔炎の症状ですので要注意です。それらの症状とともに頬、眉間に痛み感じるようになったらかなり重症ですので早急に医療機関を受診してください。匂いが鈍くなった時も副鼻腔炎の可能性があります。

――副鼻腔炎の治療方法にはどのようなものがありますか?

 鼻汁の吸引、鼻内への薬液処置、ネブライザー療法などの鼻処置を基本として急性副鼻腔炎の場合には1週間程度の短期間抗菌薬を使用、慢性副鼻腔炎の場合には抗菌薬を通常の半分の量で長期間内服する(マクロライド少量長期投与、3ヵ月程度)を行います。アレルギー性副鼻腔炎の場合は抗アレルギー剤を中心に治療します。

 副鼻腔炎が通院治療をつづけても治らず慢性化した場合は手術療法が必要となることもあります。

 昔の手術は、歯茎から切開を入れ頬の骨に穴を開けて手術するという方式でしたが、最近は内視鏡手術が主体で鼻の中から内視鏡により手術できますので精度も上がっておりますし、何より頬の骨に穴を開けるという残酷さがなくなりました。

――副鼻腔炎の予防策には何がありますか?

 感染性の副鼻腔炎の予防は風邪をひかないことにつきます。正常な鼻から急に副鼻腔炎をおこすことはまずありません。ウイルス感染などで鼻の粘膜に炎症が起きることから始まり、その炎症が副鼻腔へと波及していきます。また、アレルギー性の副鼻腔炎は、もともとアレルギーの病気をもっておられる人におきますので、自分が花粉症である、アレルギー性鼻炎であるとわかっている方は鼻炎の症状を感じたら我慢せず早めに鼻炎の治療を始めましょう。

――副鼻腔炎の再発を避けるための具体的な方法を教えていただけますか?

 副鼻腔炎で治療を始めたら医師に治癒と診断されるまで治療を継続しましょう。副鼻腔の粘膜の炎症がおさまるには案外日数のかかるもの。症状が少なくなったからといって治療を中止すると気がつけば慢性の副鼻腔炎になってしまったり、鼻内にポリープが残ったりします。確実に治療し、先の質問で述べた予防のための注意を怠らないことです。

――副鼻腔炎が長期化すると、どのような影響が身体に及ぼしますか?

 長期化し慢性副鼻腔炎となると常に鼻水がのどにおりる(後鼻漏)ことにより睡眠時に分泌物が喉を通り、気管にまで入っていくこともあるため慢性の咳が続くようになります。ポリープを発症するとポリープの部位によっては嗅覚が低下、消失します。嗅覚障害が発症すると味覚も分かりにくくなるだけではなく、ガス、腐敗臭など危険を察知する能力も低下します。

――副鼻腔炎にかかりやすい季節や特定の環境条件はありますか?

 季節の変わり目の風邪など呼吸器系の感染症が増える時期は副鼻腔炎の方が増えます。またアレルギー性鼻炎が悪化する花粉症の季節も要注意です。必ずというわけではありませんが水泳も鼻症状の悪化因子の一つです。風邪気味の時、水泳後に鼻水が継続するようになった時は要注意です。水泳は健康づくりには最適なスポーツですので自分の体調をみながら無理はしないようにしましょう。
甕(もたい)久人

監修者 甕(もたい)久人

「もたい耳鼻咽喉科」院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医、日本聴覚医学会会員。名古屋市立大学医学部卒業後、大学附属病院ではがんを専門に研究、豊橋市市民病院にて臨床経験をつんだのち、地域に根ざしたクリニックの実現のため「もたい耳鼻咽喉科」を開業。

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