“ポールダンス界のホープ”坂井絢香 バレエの挫折が「新たなチャンスを与えてくれた」
2018-11-02 eltha
12歳で決めたダンサーとしての将来、20代での挫折
【坂井絢香】 もともとやると決めたら、貫き通すタイプ。ミュージカルもできるダンサーになるためにと、母に頼んでバレエに声楽、ピアノを習わせてもらい、学校から帰るとレッスン漬けの毎日でした。だから、学生時代はいわゆる“青春時代”らしい経験をしていないんです。でも、やめたいと思ったことは一度もなかった。“好き”というのを超えて、踊ることが生活の一部になっていたんだと思います。
――ポールダンサーとして転機はいつでしょうか?
【坂井絢香】 バレエ科のある専門学校を卒業後、ヨガのインストラクターとして働くかたわら、「劇団四季」のオーディションやバレエ団の入団テストを受けました。けれど、四季は2回続けて落選。25歳の時、3度目の正直で「これが最後のチャンス」だと覚悟を決めたオーディションも、結局合格できませんでした。小学校の頃からバレエを続けてきた私の経歴が否定されたようで辛かったですね。でも、バレエを趣味で終わらせたくなかった。その想いが前に進む原動力になり、ポールダンスとの出会いにつながりました。
絶望の日々で見つけた新たな目標 ポールダンスの世界へ
【坂井絢香】 バレエダンサーとしての夢は絶たれましたが、バレエを生かして何かできないかと探していた時に目に留まったのがYouTubeの動画でした。外国の女性がポールダンスをしていて、とても芸術性が高くて、「これ、面白いかもしれない!」と。挑戦してみたいと思いましたが、当時はすぐに行動には移せなかったんです。
【坂井絢香】 2013年からアクロバットミュージカル『サムライ・ロック・オーケストラ』に出演しているのですが、まわりの出演者はみんな、金メダリストや銀メダリストなど、実績のあるアスリートばかり。それがコンプレックスで、私にも誇れるものが欲しかった。だから、なんとしても結果を残そうと、大会に挑みました。
【坂井絢香】 ありがとうございます。「ミス・ポールダンスジャパン」に出場する選手は、ポールダンスのインストラクターなど同業種の中でも有名な存在がほとんど。無名の私が勝つためには、得意のバレエを生かすしかないと考えました。振り付けにバレエの要素を取り入れるなど、徹底して戦略を練りました。ポールダンスの世界では他に誰もしたことのないダンスが新鮮で、優勝することができたんだと思います。優勝が決まった瞬間、これまでのバレエ人生が報われた気がしました。
チャンスを与えてくれたポールダンスの世界 いつか日本代表コーチに
【坂井絢香】 ポールダンスは、肌の摩擦を利用して、ポールの上で体を止まらせています。肌を露出している方が有利なので、必然的に面積の小さい衣裳となり、セクシーさが際立ってしまいます。私はポールダンスをスポーツとして広めたいと思っているので、露出の多い衣裳でもいかにカッコよく見せるかがテーマです。ポールダンス特有の妖艶さは大切にしながらも、力強い技や振り付けを取り入れるようにしています。
【坂井絢香】 近い将来、そんな日が来ることを願っています。実は今、それを見据えてポールダンスの規定を勉強している最中です。ミュージカルダンサー、バレエダンサーとして“舞台の上で輝く”という夢を絶たれた私に、もう一度、舞台上で輝くチャンスを与えてくれたポールダンス界への恩返しの意味も込めて、五輪日本代表のコーチとして従事できれば…と思っています。
――“ポールスポーツ”が五輪種目になる日も待ち遠しいですが、最近では、フィットネスの一環として楽しんでいる人も多いと聞きます。坂井さんの割れた腹筋、くびれたウエストを見ると、ポールダンスは確かにボディメイク効果がありそうですね。
【坂井絢香】 よく驚かれるんですが、実は私、ジムに通ったことがないんです。自重トレーニグも、気が向けば寝る前に腹筋を50回するぐらい。ポールダンスはとてもエネルギーを消費するので、ショーやレッスンの後に、ご飯やお肉を食べても、全く体重が変わらないんです。太ももの後ろの筋肉、ハムストリングスを使うのでお尻が垂れないし、脚も引き締まります。競技として真剣に取り組むと全体的に筋肉がつきボリュームのある体つきになりますが、軽度に楽しむ程度なら、全身の引き締めにつながると思います。
――現在、ポールダンススタジオのインストラクターにご自身のショーにと多忙な毎日だと思いますが、今後の目標を教えてください。
【坂井絢香】 ポールダンスはまだまだマイナーな競技で、トレーニングをする場所もショーを披露する場所も限られているので、いずれはトレーニングスタジオを作るのも目標です。ヨガもバレエもヒップホップもポールダンスも。私がこれまで経験したことを全部生かして、教え子をたくさん育てていくのが夢ですね。
インタビュー・文/宇治有美子 撮影/臼田洋一郎
INFORMATION
『マッスルファンタジー オズの魔法使い 川崎公演』
日時:2018年12月24日(月・祝)
会場:川崎市総合福祉センター
主催・企画:(株)サムライ・ロック・オーケストラ
【お問い合わせ先】
サムライ・ロック・オーケストラ公式ホームページ
SRO運営事務局 (03-5738-5438/平日 11:00〜18:00 土日祝休)
PROFILE
坂井絢香(さかい あやか) クラシックバレエ、新体操、ヨガの経験と、身体能力を生かして、ポールダンサーとしてショーなどに出演。2015年「ミス・ポールダンスジャパン大会で優勝、2018年にはアジアチャンピオンを決める「Asia Pole Champion Cup」で準優勝を果たす。2013年よりサムライ・ロック・オーケストラに出演。現在、「TRANSFORM」でインストラクターを務める。