「結婚を意識したのは私だけ…?」、11年付き合った彼氏に浮気されたアラサー女子の決断
2021-05-24 eltha
務めていた会社を辞めて漫画家に、初作品でいきなりデビュー
漫画を描いたのは、韓国の漫画家・イゼイさん。本作が日韓でのデビュー作であり、さらには漫画初挑戦だったというから驚きだ。
「昔から漫画家に憧れがありました。いつか私も作品を描いてみたいと思い続けていたので、勤めていた会社を辞めたタイミングでチャレンジしてみようと思い立ったんです」とイゼイさんは語る。
日本でも、SNSや投稿サイトでの作品発表などが盛んになるなど漫画家への門戸は広がっているが、韓国にも同様の文化がある。イゼイさんも、韓国の漫画ポータルサイトに「練習のつもりで描いてみた」という本作をアップしたところ、comicoの編集者からデビューしないかと声がかかったという。
「漫画を初めて描いたのが6年前、35歳の時です。その翌年にはcomicoでデビューできました。最初の作品がまさかこんなに読んでいただけるものになるなんて、夢のようです」
韓国が舞台である本作。日本での配信にあたって、変更したのは名前や地名のみだという。
目指したのは「エッセイ」のような漫画
本作を描くにあたり、イゼイさんが取り入れようと意識したのは「エッセイの要素」だと言う。
「もともと漫画を描くことは未経験で、知識もありませんでした。でも、昔から好きだったエッセイのように、主人公の視点で話が語られるような物語にしたいという思いがあったんです」
このエッセイのような語り口のおかげで、千鶴が優の浮気に勘付く瞬間や、別れへの葛藤が、まるで自分のことのようにアラサー読者たちの胸に突き刺さるのかもしれない。実際に、読者のコメント欄には、「自分が体験しているようで引き込まれる」「わかり過ぎるほどわかる!」「自分と重ねて読んだ」など共感のコメントが多く見られる。
作品に込めたのは「リアリティ」と「少しの幸福感」
「私は千鶴と同じように、グラフィックデザイナーとして会社に勤めていました。作中に出てくる意地悪な女の先輩も、同じような人が職場にいたことがあったので参考にしたんです。そして何より、千鶴と優が11年付き合っていたということも、じつは私の経験をもとにしたエピソードです。私の場合は13年でしたが(笑)」
他にも、優、そして優を千鶴から奪った浮気相手の若い彼女にも、それぞれの思いや事情があった。一見悪者に見える登場人物も、そう決めつけられない一面が垣間見えるところや、セクハラ、職場でのパワハラなど、読者を取り巻く「ある!」「わかる!」というリアルなエピソードが満載だ。さらにイゼイさんは続ける。
「千鶴と優の11年を、楽しかったいい思い出として終わらせたかったんです。主人公が前に進んでいく人生を描くことで、読者のみなさんが“少しいい気分”になってくれたらうれしいですね」
人生には、いいことも嫌なことも起きる。そんなリアリティが追求されているからこそ、この「少しの幸福感」で救われる人も多いはず。人気の理由はこういうポイントなのかもしれない。
「日本の作品では太宰治の『人間失格』などに影響を受けました。もちろん漫画も大好きで、小さな頃からたくさん読んでいます。最近だと『進撃の巨人』がお気に入りです」と語るイゼイさん。今後は恋愛物を中心に新作を描きつつ、「ファンタジーが大好きで、いつか描いてみたいです」と語ってくれた。
(文/渕上文恵)
『11年後、私たちは』(C)イゼイ/Wisdomhouse