ホーム 子育て > 賛否はあれど「登園準備のストレスを軽減したい!」 “荷物のいらない”認可保育園の挑戦

賛否はあれど「登園準備のストレスを軽減したい!」 “荷物のいらない”認可保育園の挑戦

2022-09-06 eltha

登園するため準備をする朝、保護者は慌ただしく子どもを着替えさせる

登園するため準備をする朝、保護者は慌ただしく子どもを着替えさせる

 オムツ、お尻拭き、エプロン、着替え、布団…幼稚園や保育園に持っていく荷物の多さに、子どもを園まで連れていくだけで一苦労。お迎え時に持ち帰る荷物もあり、帰宅後はその片付けや翌日の準備に追われる。登園グッズを準備する大変さを嘆く声が聞かれるが、それは荷物を紛失しないよう管理する園側も同様。保護者、保育者の両方に、大きなストレスや負担がのしかかっている。

子どもの目を見て会話もできず…帰宅後も登園準備に追われる保護者のストレス

 新学期が始まると、毎年保護者から負担の声が上がるのは、子どもが保育所や幼稚園に登園するためのセットを揃えることだ。eltha by ORICON NEWSが実施した意識調査では、 入園前に大変だった準備として「持ち物への名前書き」(36.8%)、「袋物(おけいこバッグ、弁当袋、靴袋)」(28.8%)、「制服、カバン、靴などの通園用品」(7.3%)の準備といった結果に(※)。入園前に大変な思いをしてもそれだけで終わるはずはなく、毎日の登園荷物を片付け、洗濯し、次の日の準備をするのにも時間が奪われる。

 「この現状をなんとかしたかった」と話すのは、千葉県内で13の認可保育園「キートス」を運営する日向 美奈子氏。保育者として働きながら、2人の子どもを保育園と幼稚園に預けていたことがあり、子どもとの時間が満足に取れなかったことで苦い経験をした過去があるという。

「子どもと保護者が一緒に過ごすことができるのは、朝起きてから保育園に行くまでと、保育園から帰宅して寝るまでの間です。片付け、次の日の準備、他の家事育児…たくさんのタスクが並行して行われます。私自身も効率よく進めるために考えをめぐらせていて、子どもと向き合うことができていない時期がありました。

 当時1歳だった上の子に話しかけられても、私は目を見ずに相槌を打っていて。子どもは忙しいお母さんの一瞬を逃してはならないと思ったのか、早く話さないといけないという意識が働いたのか、どもり始めてしまって…。そこまで焦らせてしまったことに、今でも罪悪感を覚えています。保育園の荷物のことを考えないで過ごせる夜の時間を確保したいというその時の思いが、現在の取り組みに繋がっています」

 日向氏が運営する認可保育園は「荷物のいらない保育園」として、数々のメディアで話題になっている。市町村が定めた保育料から追加料金をとらないかたちで、保護者の負担を削減する。それにより子どもとの関係や時間を充実したものにしてほしい思いがある。
登園風景。荷物が多すぎて、保護者は子どもと手をつなぐことがままならない

登園風景。荷物が多すぎて、保護者は子どもと手をつなぐことがままならない

「もともとは、認可外保育園からスタートしました。ある程度事業者の自由が利くので、このコンセプトを反映させやすいと考えました。しかし認可外から認可へと移行する際に自治体の審査が入り、手ぶらで通える保育園は『お母さんたちを甘やかすだけだからダメだ』と言われてしまったんです。子どもへの愛情に荷物は関係ないでしょというのが、率直な気持ちでした。職員に長く働いてもらうためにも認可への移行は必須だったので、コンセプトを初めから貫き通すのは泣く泣く諦め、園の規模を広げるなかで徐々に新しい取り組みとして実現させていければと考えました」

登園グッズの紛失・トラブルは日常茶飯事? 職員側のストレスにも繋がる

保護者が用意しなければならない荷物

保護者が用意しなければならない荷物

 オムツ、お尻拭き、食事用エプロン、手や口を拭くタオル、洗濯物の持ち帰り用袋、歯ブラシ、着替え、昼寝用の布団…。現在13か所あるキートスの施設では、これだけの荷物をすべて園側が準備している。そのうち一部の施設では、着替える回数の多い2歳児までの子どもに向けて着替えの用意も導入が開始されている。

「荷物の管理は保護者だけでなく園にとってもすごく神経を使う部分でした。返し忘れや入れ間違いを防ぐため、表や荷物自体の写真を撮って管理していました。私たちにとっては園に持ってきたものを揃えてお返しするのは絶対で、失くしてしまうことはあってはならないと考えているんですね。あれだけ管理していても、入れ間違えてお返ししてしまったり、どこか行方不明になったりすることが実際あるのですから…。荷物管理には職員の時間的な負荷もありますが、精神的な負荷も大きかった。そのアイテム自体がどのような背景で購入されたものなのか、私たちには分からないのでなおさら神経を使っていました」

 遠方にいる祖父母がプレゼントしてくれたもの、初めてできた友達とお揃いのもの、保護者と旅行に出かけた時に購入したもの…そのアイテムが何かしらの思い出とともに存在している場合もある。「同じものや似たようなものを買ってお返しすればいいというわけではありませんよね。だからこそ『これは誰ちゃんの』と区別しなくていい、オムツも名前は書かずにサイズさえ合っていればいい。それが保護者や子どもにとっても、職員にとってもよい影響をもたらしてくれます。実際に園で着る服を用意してくれるから、登園服はおしゃれができるようになったという声も出ています」。

“保育”には様々な解釈がある「ゆくゆくは世界共通語に」

「新しいことをやっていると、風当りが強いこともあります。なんでこんな勝手なことをするんだよというお考えもきっとあると思いますが、私たちは全ての園が同じようになればいいとはまったく考えておらず、利用者にとっての選択肢が増えたら良いと思っています。2歳までの子に導入している洋服については、成長するにつれて自分の洋服を選択するこだわりを持つ子も出てくるはずです。自分の洋服を着たいという子の妨げをするようなことはしないですね。保護者の方にも色々な方針があると思うので、お子さんにとって合うかどうかを含め、ご家庭に合うところを選んでほしいと思います」

 今後子育て世代が働き、色々な可能性を切り開いていくなかで、保育は絶対に外せないものだ。日向氏は「日本の保育は素晴らしいと思う」と展望を語る。

「“保育”は漢字で書くと『保つ育てる』という字ですが、例えばそれを『歩く育てる』として一緒に歩んでいくというスタイルをとることもできますし、「補って育てる」という方法もある。ただ日本における保育を海外で伝えようとすると、一気に難しくなってしまいます。寿司やカラオケが海外でそのまま通じるのと同じように「保育」も語られてほしい。考え方として同じ土台があってどの国の子どもたちもより良い育ちができるという意味で、「保育」がアルファベットの「HOIKU」として世界共通語になることを目指しています。そのためにも私たちはグローバルな視野をもって様々なチャレンジを続けていきたいと思います」

千葉県内に13カ所、荷物のいらない認可保育園「キートス」
https://www.kiitos-kids.net/ 


※【調査概要】
調査対象: OMR会員 男女20〜60代
サンプル数: 回答者全体 1073名
調査期間: 2022年3月23日(水)〜28日(月)
調査手法: インターネット調査
調査機関: オリコン・モニターリサーチ(https://omr.oricon.co.jp/?cat_id=omr-news

【オリコン調査データご利用上のご注意】
オリコン調査データの著作権その他の権利はオリコンに帰属しております。WEBサイト(PC、ブログ、携帯電話等)や電子メール、雑誌等の紙媒体等、いかなるメディアにおきましても、オリコンランキングを無断で掲載するといった行為は固く禁じております。
Facebook

関連リンク

あなたにおすすめの記事

おすすめコンテンツ


P R
お悩み調査実施中! アンケートモニター登録はコチラ

eltha(エルザ by オリコンニュース)

ページトップへ