賛否はあれど「登園準備のストレスを軽減したい!」 “荷物のいらない”認可保育園の挑戦
2022-09-06 eltha
登園するため準備をする朝、保護者は慌ただしく子どもを着替えさせる
子どもの目を見て会話もできず…帰宅後も登園準備に追われる保護者のストレス
「この現状をなんとかしたかった」と話すのは、千葉県内で13の認可保育園「キートス」を運営する日向 美奈子氏。保育者として働きながら、2人の子どもを保育園と幼稚園に預けていたことがあり、子どもとの時間が満足に取れなかったことで苦い経験をした過去があるという。
「子どもと保護者が一緒に過ごすことができるのは、朝起きてから保育園に行くまでと、保育園から帰宅して寝るまでの間です。片付け、次の日の準備、他の家事育児…たくさんのタスクが並行して行われます。私自身も効率よく進めるために考えをめぐらせていて、子どもと向き合うことができていない時期がありました。
当時1歳だった上の子に話しかけられても、私は目を見ずに相槌を打っていて。子どもは忙しいお母さんの一瞬を逃してはならないと思ったのか、早く話さないといけないという意識が働いたのか、どもり始めてしまって…。そこまで焦らせてしまったことに、今でも罪悪感を覚えています。保育園の荷物のことを考えないで過ごせる夜の時間を確保したいというその時の思いが、現在の取り組みに繋がっています」
日向氏が運営する認可保育園は「荷物のいらない保育園」として、数々のメディアで話題になっている。市町村が定めた保育料から追加料金をとらないかたちで、保護者の負担を削減する。それにより子どもとの関係や時間を充実したものにしてほしい思いがある。
登園風景。荷物が多すぎて、保護者は子どもと手をつなぐことがままならない
登園グッズの紛失・トラブルは日常茶飯事? 職員側のストレスにも繋がる
保護者が用意しなければならない荷物
「荷物の管理は保護者だけでなく園にとってもすごく神経を使う部分でした。返し忘れや入れ間違いを防ぐため、表や荷物自体の写真を撮って管理していました。私たちにとっては園に持ってきたものを揃えてお返しするのは絶対で、失くしてしまうことはあってはならないと考えているんですね。あれだけ管理していても、入れ間違えてお返ししてしまったり、どこか行方不明になったりすることが実際あるのですから…。荷物管理には職員の時間的な負荷もありますが、精神的な負荷も大きかった。そのアイテム自体がどのような背景で購入されたものなのか、私たちには分からないのでなおさら神経を使っていました」
遠方にいる祖父母がプレゼントしてくれたもの、初めてできた友達とお揃いのもの、保護者と旅行に出かけた時に購入したもの…そのアイテムが何かしらの思い出とともに存在している場合もある。「同じものや似たようなものを買ってお返しすればいいというわけではありませんよね。だからこそ『これは誰ちゃんの』と区別しなくていい、オムツも名前は書かずにサイズさえ合っていればいい。それが保護者や子どもにとっても、職員にとってもよい影響をもたらしてくれます。実際に園で着る服を用意してくれるから、登園服はおしゃれができるようになったという声も出ています」。
“保育”には様々な解釈がある「ゆくゆくは世界共通語に」
今後子育て世代が働き、色々な可能性を切り開いていくなかで、保育は絶対に外せないものだ。日向氏は「日本の保育は素晴らしいと思う」と展望を語る。
「“保育”は漢字で書くと『保つ育てる』という字ですが、例えばそれを『歩く育てる』として一緒に歩んでいくというスタイルをとることもできますし、「補って育てる」という方法もある。ただ日本における保育を海外で伝えようとすると、一気に難しくなってしまいます。寿司やカラオケが海外でそのまま通じるのと同じように「保育」も語られてほしい。考え方として同じ土台があってどの国の子どもたちもより良い育ちができるという意味で、「保育」がアルファベットの「HOIKU」として世界共通語になることを目指しています。そのためにも私たちはグローバルな視野をもって様々なチャレンジを続けていきたいと思います」
千葉県内に13カ所、荷物のいらない認可保育園「キートス」
https://www.kiitos-kids.net/
※【調査概要】
調査対象: OMR会員 男女20〜60代
サンプル数: 回答者全体 1073名
調査期間: 2022年3月23日(水)〜28日(月)
調査手法: インターネット調査
調査機関: オリコン・モニターリサーチ(https://omr.oricon.co.jp/?cat_id=omr-news)
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