『証明写真機』が女子中高生に流行なぜ? “盛らない”撮影に新ニーズ、アナログ体験をデジタル発信する若者たち
2023-01-16 eltha
スマホは手軽過ぎ、プリクラは盛り過ぎ? アナログ撮影に新鮮さ見出すデジタルネイティブ世代
「女子中高生の方たちに、逆に新しいと捉えていただけたことに非常に驚いています。新たな楽しみ方を見つけるのが上手いなと(笑)。若い世代からも使っていただける機会が増えて、うれしく思っております」(DNPフォトイメージングジャパン・企画本部企画第1部営業企画グループの山本梨沙さん/以下同)
「いまの若い世代は、生まれた時からスマートフォンが身近にあるデジタルネイティブです。写真撮影はアプリでの加工が定番で、アナログの機器や撮影方法を体験したことのない世代にとって、半個室で撮影できる証明写真機は斬新で、その体験自体を楽しんでいただけているのかなと思います」
「個室で撮影」に特別感? “街中にポツン”とあるからこその「お1人様需要」も
また、設置場所や稼働時間にも人気の秘密が。営業時間の決まっている商業施設やゲームセンターと違い、証明写真機は近場のスーパーやドラッグストアにも設置され、24時間稼働している場所も多い。人混みを避けて、好きな時に気軽に撮影ができるのも利点の一つのようだ。
「他撮りの写真、動画の撮影は友達がいるからあまり気にならないのですが、自撮りをしている所を見られるのってやっぱり恥ずかしい!って気持ちがあって、証明写真機は1人でも個室で撮影をしている所を見られないので、撮影しやすいんだと思います」
とはいえ、価格帯はプリクラの2倍ほど。takiさんは証明写真よりプリクラを撮る頻度のほうが圧倒的に多いそうで、やはり証明写真は“特別行事”化しているようだ。子どもの頃から身近にあった半個室空間に入り、大人たちの目を盗んで、本来の目的とは違うことをして楽しむことへのある種の背徳感も、このブームを後押ししているのかもしれない。
紙需要減少でも過去最高台数、多様コラボ展開で“自己証明ブース”として広がる可能性
「あくまで公的身分証明書に使用する証明写真を撮影する場なので、ご本人を正しく認証するキレイな写真が撮れる場であり続けたいというのが大前提です。その上で、若年層の方にも使っていただけるバリエーションとして、背景色を増やしたり、真顔だけでなく笑顔やカッコいい写真も撮れるような音声ガイダンスを検討したりと、満足度を上げられる商品開発を目指したいと思っています」(山本さん)
「まだ実績はないですが、撮影したデータを活用し、オンラインで様々な業界と連携して、新しいサービスを提供していきたいと思っています」(山本さん)
銭湯やレコード、純喫茶やシティポップなど、令和の若者の間で“レトロブーム”が沸き起こり、ここ10年で再発掘されている昭和モノは少なくない。デジタルネイティブの彼女たちが、アナログの“ひと手間”に新鮮さや魅力を感じるのも頷ける。しかし思えば、少し前には『写ルンです』ブームもあった。同じ写真業界で流行の移り変わりの早さを感じさせられるが、今度の「証明写真機」トレンドがいつまで続くのか、メーカー側の仕掛けも含め、楽しみに見守りたい。
(取材・文=辻内史佳)