相武紗季デビュー20周年、王道ヒロインの呪縛吹っ切れた“悪女役”が転機に「いい子イメージが恐怖だった」
2023-03-22 eltha
多忙極めた10代は“絶望”の日々だった…「自分を取り繕うのに精一杯でした」
「デビューして最初の5年くらいは、記憶がないぐらい忙しかったです(笑)。とにかくがむしゃらにやっていましたね。器用なタイプではないので、人一倍やらないとついていけないと思って、寝る間も惜しんで日々のお仕事に臨んでいました」
「なんで自分だけできないんだろうって、ずっと自問自答していました。毎日壁にぶつかって、『明日が来なければいいのに…』って願ったりもしていましたね。でも、現場に行ったら自信を持たないとお仕事ができないし、とりあえず自分を取り繕うのに精一杯でした」
「10代の頃は特に、人からの見られ方を敏感に感じ取っていたんですよね。周りからの声にいちいち傷ついて、絶望して。でも、どんなに忙しくてもセリフは完璧に覚えて現場に入ろうとか、絶対に噛まないとか、下手なりにできることは何か考えていた気がします。全力すぎて楽しめていなかったかもしれないけど、やろうと思ったことはクリアしたから大丈夫と自分で自分をなだめて、なんとか乗り越えていましたね」
『ブザー・ビート』オファー時は姉妹役だった「顔合わせ後、なぜか悪女役に(笑)」
「いい子の役をやると、“ちょっと態度が悪かったら性格が悪く思われるかも”という恐怖があったし、そういう目線を繊細に感じていたんですよね。常に礼儀正しくしていないと、そういう役ももらえなくなっちゃうと思っていたので」
「今まで出会えなかった悪い役を演じることができて、すごく嬉しかったです。それまで主演じゃないと共感してもらえないと思っていたけど、そうじゃなくても受け入れてもらえたことが、私にとって新たな気づきでした。それまではコソコソしてたのが、悪い役やってるやつでーすみたいな感じで、ちょっと吹っ切れたというか(笑)」
「それが、最初オファーをいただいた時は、確かちょっとめんどくさい姉妹の役だったんですよ。顔合わせでスタッフの方とお話した後に、なぜか設定が変わっていて(笑)。私のどこかに悪女の要素を感じたのかな?って若干悩んだんですけど、演じれば演じるほどに、『えー』っていうキャラクターが出来上がっていきました(笑)」
それまで散々、一途で純粋な女の子を演じてきた相武。初の悪女役と向き合い、自分に“いい子クセ”が付いてしまっていたこと、演技のレパートリーの少なさを痛感した。
「たばこを吸ったり、長いキスシーンがあったり、私にとって初めての挑戦ばかりでした。それまでのいい子要素がつい出てしまうと胡散臭くなってしまって、監督に『もっと悪く!』って言われてましたね。悪く見えるにはどういう目線がいいか研究したり、生々しいラブシーンのあるドラマをたくさん見たり…。試行錯誤しながら演じていました」
「途中ぐらいから、街で年上のお姉様方からも声をかけていただけるようになったんですよ。『悪い役だけど、私はアナタ派!』みたいな(笑)。それがすごく嬉しくて、やる気に火も付いて、楽しんで演じることができました。自分が加わることで話が面白いと言ってもらえたことが初めての経験だったので、作品を見る着眼点も変わりました。今にも通じますが、メインよりサポートする役が好きだし、向いてるなと気づきました。自分が一員になることで、いいスパイスになるといいなと思いながら演じています」
人気絶頂期に27歳で単身渡米した理由「留学するか、仕事を辞めるかの二択でした」
「16歳からこの世界に入って、必死に目の前の仕事をする毎日だったので、吸収できていないことがたくさんあったんですよね。だから27歳の時に、留学するか、仕事を辞めるかどっちかにしたいと事務所の方にお願いしました。お芝居は好きでしたけど、自分が空っぽのまま、できない、できないって思いながらやることに負い目があったんです。留学ができないんだったら、まだやり直せる年齢だから、別の仕事も考えたいと伝えました」
「最初はサンフランシスコの語学学校に通って、自分のお金を使っているから、絶対に英語も習得したいと思って、猛勉強の日々。でも、3ヵ月くらい経った時に、そこまで語学力が伸びないことに気がついて。そこから全部解約して、ボストンへ。カナダにも旅行したり…飛行機や住む場所の手配も全部自分でやって、その方がよっぽど英語力がつきましたね(笑)」
「帰国してすぐの作品が『ミス・パイロット』だったんですけど、英語を話すシーンもあって。しかも、演じた役がちょっと気の強い女の子。留学中に気の強い女の子にもたくさん会っていたので、つながるなって思いました(笑)。なんて良いタイミングで行かせてもらえたんだろうって」
「帰国後は、自分の中での仕事に対する心持ちも違ったし、みんなを支えたいって思いながら楽しんで演じることができました。お芝居が好きな気持ちや楽しさも再確認できましたし、インプットしたことをアウトプットする喜びを知るきっかけにもなりました。今後も、いろいろなものを吸収しながら、続けていけたらと思っています」
20年もの時を経て、王道ヒロインの呪縛を打ち破り、主演に助演、良い女に悪い女のレパートリーをも手にした相武紗季。「良妻」も「不倫相手」も見事に演じ分ける今の相武には、“どっちに転がるか分からない”面白みを物語に加える力がある。そして、現在2児の母となった彼女が、今後さらなる引き出しを増やしていくことは間違いないだろう。
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『リバーサルオーケストラ』
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