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大忙しな小6受験生の夏休み…勉強計画や親の関わりに必要な“余白”と“バランス”とは? 専門家に聞いた

2023-07-29 eltha

 中学受験を控えている小学6年生の夏休みは、“天王山の戦い”とも言われており、受験勉強に集中する重要な時間に。夏休みの宿題はもちろん、塾の夏期講習や課題、模試の解き直し、苦手分野の分析など、大忙しの日々を送っている親子が多いのでは。大手進学塾の講師として公立中高一貫校対策クラスから多くの生徒を合格へと導き、現在は、オンラインサロンで受験対策を指導しているケイティ先生は、夏休みの勉強計画について毎年多くの保護者から相談が寄せられると言います。夏休みを親子で乗り切るために、どのような考え方が必要なのでしょうか?

勉強計画は「いかに“余白”を作れるか」、必要ならスケジュールの見直しを

━━公立・私立に関わらず、受験学年の子どもの夏休みについて、先生がもっとも懸念されることはなんですか。

ケイティ 毎年、親御さんから30〜40日という長い期間、勉強へのモチベーションをどう持続させたらいいかというご相談をたくさん受けます。実際、前半は夏期講習が始まったり、周りのムードに影響されていいペースで勉強を進められても、後半に入ると疲れてきたり、集中力が保てなくなる子はひじょうに多くいます。また、親の「これもやらせたかったのに終わらなそうだ」という焦りや緊張感が子どもに伝わり、それが悪循環となって8月のお盆明けくらいから失速してしまう子や、ずっと根を詰めてやってきたために、後半になって体調不良になったり、メンタル的に崩れてしまう子もいます。中学受験する子は精神レベルが高く、期待に応えようという責任感が大きい子も多いので、注意が必要です。

━━子どもが息切れすることなく、夏休み期間中、効率的に勉強を続けるためには、どのような環境を整えてあげたらいいのでしょう。

ケイティ スケジュールを組む際、余白を作っておくことです。一番おススメしているのは、夏休みを前半後半に分けて、前半は早く終わらせるべきことをやってしまい、後半は、前半やるべきことが持ち越されることを前提に、ちょっとゆとりをもたせて、量より質を重視してスケジュールを組むことです。最近では夏休みの途中に修学旅行に行く学校もありますが、8月の上旬あたりには塾の合宿など大きなイベントが入るケースが多いと思いますので、そのイベントを区切りにして、夏休みを前半後半に分けて考えるといいでしょう。

 また、保護者の方がお仕事をなさっていて、お子さんが自宅で一人学習をする場合は、「今日はこれをやっておきなさい」と一日全体のプランを渡すのではなく、午前中はこれ、午後はこれ、夕方は…というように、時間帯ごとに取り組みを区切り、LINE等を使って進捗確認をするのも有効です。

━━夏休みの勉強法で取り入れたほうがいいことはありますか?

ケイティ 塾に通われている方に多いのが、買わされたけれど使っていない教材があるというケースです。塾の教材は大変考え抜かれて作られていますので、子どもが今、何の教材を持っていて、どの程度使っているのかを確かめていただきたいと思います。そのうえで、たとえば5年生の教材でまっさらなままのものがあれば、この単元は苦手だから復習で夏休みの間にやらせようとか、レベルアップにやったほうがいいと思える教材であれば、それを後半、活用するなどするといいと思います。

「あれやったの?」はNG、親子喧嘩にならないために“一歩先の提案”を示す

━━子どもに任せきりにするのではなく、保護者が介入することが必要なのですね。

ケイティ いろいろな考え方がありますが、私は介入を薦めます。たとえば、電話番号を覚えるとき、1回では覚えられないけれど、何度も何度も使ったり書いたりしているうちに長期間覚えていられるようになることを大人は体験から知っています。しかし、子どもには反復して長期記憶的に定着させるという感覚はないため、今日習ったことは今日で終わりになってしまいます。ですから、親が常にノートや小テストを見てその子の今の状態を確認し、今日間違えた問題を2ヵ月後にもう1回やらせるとか、反復させることが大切です。6月に模試を受けた子も多いと思いますので、親御さんはその結果を分析し、できなかったところを改善するためには何が有効か、考える時間を夏休み期間中に半日でいいのでとっていただきたいと思います。

━━子どもの勉強に寄りそう際、声がけで注意することはありますか?

ケイティ 「あれやったの?」「これやったの?」という声がけは、反発の種になってバトルの引き金になりがちです。そうではなく、前に間違えた問題をもう1回やらせるのであれば「これやってみてくれる?」と言い、やはりできなかったら「これ苦手だね、じゃあ先生に言ってみてもらおう」など、子どもと一緒の方向を見て、提案をする姿勢をとることです。“口を出す”とか“叱る”のではなく、“勉強のリズムを作る”とか“やり方を教える”というように、親は子どもにとってプランナーのような立場であってほしいと思います。

━━夏休みは、友達からの遊びの誘いも増えると思います。どのくらい許容・制限をするべきか。また、子ども同士の関係性が崩れないようにする断り方についてアドバイスをお願いします。

ケイティ 遊ぶのはこの曜日だけとか、この範囲までというように親がルールを決めることです。ルールをしっかり決めておいた方が、お互いにストレスなく過ごすことができます。また、まわりの子たちも、この曜日しか遊べないということを本人から聞かされれば、納得してくれるケースがほとんどです。「なんで遊べないんだよ」とか「いつも断られる」と言われることもあるかもしれませんが、そういうときは親が悪役になることです。「ママがダメって言うから」と言って断らせるようにしておけば、子どもが板挟みにならずに済みます。

━━勉強と勉強の合間の息抜きの遊びについてはいかがですか?

ケイティ 気をつけてほしいのは、時間より遊びの内容です。散歩する、YouTubeを見る、ゲームをする、興味のある本を読む、ピアノを弾くなど様々あると思いますが、注意してほしいのがYouTubeとウェブマンガです。これらは次から次へと面白いものが自動的に出てきて、中毒性があるだけに、受験生には与えることのほうが可哀想だと思います。本人は「それがあるから頑張れる」と言うかもしれませんが、絶対そんなことはありません。途中で見るのをやめることは難しいし、続きが気になって落ち着かないし、良いことはひとつもありませんので、心を鬼にしてでも切ったほうがいいです。もちろん、最初はすごく反発されるし、荒れるかもしれません。ですから、ある日、突然なしにするのではなく、徐々に減らして、9月からオフにするなどするといいと思います。なければないでその状態に子どもは慣れますし、受験が終わったあとの春休み期間、まとめて見る楽しみもできますから。

━━受験勉強を乗り切るために親子で並走していくなかで、親はお子さんにとってどんな存在でいてあげてほしいと感じますか?

ケイティ まだ小学生で、親としても自分と切り離せない存在なので、扱いが難しかったり、自分と同じと思って接していたら違った、と難しさを感じる部分も多いと思います。そのなかで、大人であるからできることとして、親は「一歩引いて、バランスをとる存在」であるべきだと思います。親子で楽観的すぎてもダメですし、逆に子どもがネガティブで、親もできないことに目がいってしまうタイプで、2人してどんよりした雰囲気になってしまう場合もあります。でも、意識して振舞えるのが大人だと思うので、子どもの性質を見て、あえてその逆のふるまいをしてバランスをとること。子供のやる気を引き出すトリガーは自分のトリガーと違うことを把握したうえで、子どもにとって何がきっかけになるのかを把握し、あえて誘導する。そのシナリオ、ストーリーを作ってあげるのも親ができることです。

――中学受験というと、詰め込み教育のイメージを強く抱かれる保護者も多い。つらい経験として認識しているお子さんもいるかと思いますが、そうならないようにするのも親次第?

ケイティ はい。今のような思考型ではなく、センター試験世代、暗記して詰め込む世代の保護者が大半で、偏差値がすべてという考えのご家庭も多い。でも今は、日本が目指そうとしている教育の方向性すら手探りで、二転三転している難しい時期です。誰も正解を知らないからこそ、保護者は頑張っている子どもを尊重していただきたい。塾などの集団のなかにいると、受験することが当たり前、はみ出すことはドロップアウトと思い込みがちですが、決してそうではなない。なぜ受験させたいと思ったのか、何の力をつけさせたかったか、最初のきっかけや願いを忘れずに。この夏、プレッシャーを感じていると思ったら少し引いたり、休ませたり、「1日2日休んだって大丈夫だよ」と言える関係性であってほしいと思います。

取材・文/河上いつ子
ケイティ

PROFILE ケイティ

公立中高一貫合格アドバイザー。適性検査対策の情報を配信する「ケイティサロン」主宰。都内大手進学塾の講師として2007年から多くの生徒を合格へ導いた人気講師。担任した公立中高一貫校対策クラスでは6割を超える生徒が合格し、一躍有名に。Instagram:katy_goukaku ブログ:ケイティブログ

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