ホーム コラム > 【管理栄養士解説】冬は塩分摂取量が多くなる? 塩分過多のリスクと減塩のコツ

【管理栄養士解説】冬は塩分摂取量が多くなる? 塩分過多のリスクと減塩のコツ

2023-12-20 eltha

近年、健康づくりに欠かせない考え方として知られる「減塩」。市販の調味料や加工食品などでも「減塩」「塩分ひかえめ」を謳ったものが多く販売され、気を付けている方も多いのではないでしょうか。そんな方に注意して欲しいのが、今の季節。実は、冬になると塩分摂取量が多くなるとされています。その理由と塩分過多による健康・美容リスク、減塩のコツをたいや内科クリニックの管理栄養士、林安津美さんにうかがいました。

健康的な生活と美容のバランスを保つためには、適切な塩分摂取量の維持が鍵

Q.冬になると塩分摂取量が多くなると聞きますが、なぜですか?

【林さん】 寒い季節になると、体温を維持するためにエネルギーを消費しやすくなります。そのため、多くの人が冬季に食欲が増す傾向があります。食欲が増すと、塩辛い食べ物や体力をつけるための重い料理などが好まれ、これらの食品には通常、多くの塩分が含まれています。「食欲の増加」以外にも、「季節的な食品の変化」「保温と代謝」「味覚感度の低下」「汗をかかなくなる」などもあげられます。

季節的な食品の変化
冬季には一部の季節限定の食材が豊富になり、これらの食材を使った料理が増えます。例えば、塩漬けの魚や肉・保存食品などは冷暖房が効いた室内での長期間保存に適しており、これらを食べることで塩分摂取量が増えることがあります。寒い時期に好まれるスープやシチューなども塩分を多く含むことがあり、塩分摂取の一因となります。
保温と代謝
寒い環境では体を温めるために代謝が活発になります。塩分は体の水分バランスを調整し、体温を維持するのに役立つため、無意識のうちに塩分摂取量が増えることがあります。
味覚感度の低下
冬は寒さで口の中が乾燥し、唾液が出づらくなります。そのため、味覚感度が下がり、濃い味を求める傾向にあります。
汗をかかなくなる
汗をかかなくなると塩分が排泄されないため、塩分過多になる可能性があります。

Q.そもそも塩分の摂りすぎはなぜいけないのでしょうか。

【林さん】 人間の体内では、水分と塩分が一定の濃度で保たれています。しかし、塩分を過剰に摂取すると、塩分濃度のバランスを保つために体内に水分が溜まります。これにより血液量が増加し、血管にかかる圧力が増すことで高血圧のリスクが高まります。塩分の過剰摂取はその他にもさまざまな疾患との関連が指摘されており、長期的に見て、健康的な生活と美容のバランスを保つためには、適切な塩分摂取量の維持が鍵となります。

胃がん
体内の塩分濃度が高いと、胃の粘膜が傷つきやすくなり、胃炎の発生リスクが高まります。これにより、発がん物質の影響を受けやすくなる可能性があります。
腎結石
塩分の過剰摂取によって尿中のカルシウム排泄量が増え、尿酸ナトリウム塩の生成が促進されることが一因です。さらに、結石を防ぐ尿中クエン酸の排泄量も減少します。
骨粗鬆症
体外へ排出されるカルシウムが過剰な塩分と結合することで促進され、カルシウム摂取の効果が薄れることがあります。
美容面
塩分の過剰摂取は体内の水分バランスを乱し、むくみの原因になることがあります。また、皮膚の乾燥や老化の進行を促進する可能性もあります。肌の弾力や明るさを保つためには、塩分の適切な摂取が重要です。

▼健康な大人のための1日の塩分摂取量の目安
男性(15歳以上):7.5g未満
女性(12歳以上):6.5g未満

▼子供の年齢別1日の塩分摂取量の目安
  1〜2歳:3.0g未満
 3〜5歳:3.5g未満
 6〜7歳:4.5g未満
 8〜9歳:5.0g未満
 10〜11歳:6.0g未満
 12〜14歳:(男性)7.0g未満、(女性)6.5g未満

食事の塩分量は徐々に減らすことで味覚が適応、無理なく減塩が可能に

Q.塩分過多になる要注意な食事・食事の仕方について教えてください。

【林さん】 塩分の多い食べ物には、ラーメン、うどん、丼物などが含まれます。また、漬物、焼き魚、加工食品、味噌汁などは1品あたりの塩分量は少ないものの、一緒に食べると塩分が積み重なります。無意識のうちに塩分を過剰に摂取しがちな状況を改善するためには、塩分の少ない調味料を選ぶことが重要です。

例えば、和え物は醤油よりも麺つゆやポン酢で味付けすると、塩分を半分以下に抑えることができます。塩分の高い調味料を使用した料理がある場合は、他の料理には塩分を控えた酢の物を選ぶのが良いでしょう。加工食品の塩分にも気を付けましょう。

Q.減塩につながる調理法や行動を教えてください。

【林さん】 自宅で料理をすることで、塩分量を自分でコントロールできます。ハーブやスパイスを使用した味付けも有効です。野菜、果物、全粒穀物を多く摂ることで、食事のバリエーションを増やし、健康的な食生活をサポートできます。減塩塩やうまみ調味料を使うことで、味を保ちながら塩分を削減することもできます。食事の前に計画を立て、塩分摂取を抑えることが重要です。適切な塩分制限は健康な生活をサポートするための鍵となります。

スパイスや酸味、薬味の使用
塩の代わりにスパイスや酸味、薬味を使うことも減塩のコツです。わさび、生姜、胡椒、唐辛子、山椒、カレー粉などの香辛料や薬味を用いると、味にメリハリがつき、塩分を減らしても満足感を得られます。また、レモン、ゆず、酢などで酸味を加えると、味に深みが出ます。しそ、みょうが、生姜、ねぎなどの香味野菜も味のアクセントになり、減塩による薄味感を補います。
スープを飲み干さない
スープ類を飲み干さないことも減塩のために重要です。例えば、麺料理では麺とスープに塩分が含まれています。塩分量6.3gのラーメンを食べた場合、スープを全て残せば塩分量は約2.3gに、半分残せば約4.2gに抑えられます。味噌汁では、インスタント製品は家庭で作るものより塩分量が多いことがあります。外食時の味噌汁も味が濃く、塩分が多いことがあるため注意が必要です。家で味噌汁を作る際は、多様な具材を使用することで、塩分を含む味噌や顆粒だしの量を減らしても味わい深くなります。
塩蔵品を控える
塩蔵品、例えば漬物、練り物、ハム・ソーセージ類には元々塩分が多く含まれています。これらを控えることで塩分摂取量を減らしましょう。加工肉を調理する際は、塩分を控え、胡椒などのスパイスで味付けすると良いです。ハムやベーコンを下茹ですると、塩分や脂が減ります。カレーライスや親子丼に添えられる福神漬けや紅生姜、梅干しなども塩分が多いため、注意が必要です。
腹八分目を心掛ける
食事の量を控えることも減塩につながります。食べ過ぎると、塩分控えめの食事であっても塩分の摂取量が多くなる可能性があります。また、過食は高血圧の原因となる肥満へのリスクも高めます。

加工食品を購入する際は、塩分量を確認し、低塩分の製品を選ぶことが望ましいです。急に塩分を減らすと食事が味気なく感じられることがありますが、徐々に減らすことで味覚が適応します。新鮮な食材を使用すると、そのままの風味が楽しめます。食材本来の味を活かす調理法を取り入れることも重要です。これらの方法を実践することで、健康に配慮しながらも美味しい食事を楽しむことができます。
林安津美さん

監修者 林安津美さん

管理栄養士。大学卒業後、JAあいち厚生連に入職。37年間、病院の管理栄養士として勤務、その間豊田厚生病院・安城更生病院の技師長として17年間在籍。病態栄養専門管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・腎臓病療養指導士・がん病態栄養専門管理栄養士・和漢薬膳師等の資格を生かし、現在はたいや内科クリニックで患者に寄り添った医療を届けている。
たいや内科クリニック:https://taiya-naika.com

Facebook

関連リンク

あなたにおすすめの記事

おすすめコンテンツ


P R
お悩み調査実施中! アンケートモニター登録はコチラ

eltha(エルザ by オリコンニュース)

ページトップへ