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子どもの「確認病」は治る? 親はどうするべき? 専門家の見解

2024-01-06 eltha

 学校の宿題や準備を何度も確認する…お子さんのそんな行動に悩むパパママがいます。「忘れ物をするよりもいい」と思う方もいるかもしれませんが、その確認行動は時に1時間以上続いたり、夜中に起きて行ったりするケースもあります。子どものこれらの行動は、どのようなことに原因があるのでしょうか。また、パパママの望ましい対応とは。大阪カウンセリングセンターBellflower代表の町田奈穂さんにうかがいました。

日常生活や人間関係に影響し、子ども自身が苦しんでいることも

Q.「確認病」とも言われる子どもの行動、その正体について教えてください。

【町田さん】 「確認病」とは正式な病名ではなく、いわゆる「強迫性障害」のひとつで、“わかってはいるけど止められない”行動や不安感により日常生活へ支障がきている状態のことを言います。例えば、確認のために何度もランドセルを開け閉めする、食事中や遊び中にも確認しなければ気がおさまらないというのは心配な状況と言えます。

また、親や先生が「大丈夫だよ」と言っても、漢字の宿題を何度も何度も消して書き直すといった行為や、宿題が終わらなければ寝られないと泣きながら夜遅くまで宿題をしているという行為もよく聞かれます。これも一種の「確認病」と言えるでしょう。「〇〇しなければならない」といった強い不安や「〇〇でなければならない」という強いこだわりが行動としてあらわれてしまい、日常生活や人間関係に影響が生じてしまっている状態が「確認病」の正体と言えるでしょう。

Q.子どもの「確認病」はどのようなことに原因がありますか?

【町田さん】 強いストレスや性格、環境、特性など様々な原因が考えられます。例えば、家や学校で忘れ物や宿題について叱責を受けたり笑われたりしたことがきっかけとなり「次は忘れないようにしないと」と強い強迫観念にさいなまれ、「確認病」に繋がることもあるでしょう。また、入学式や始業式、運動会や音楽会といった大きなイベント事の前後は心身の疲れからストレスを感じやすく、いつもより睡眠時間が短くなってしまうこともあります。睡眠時間が短くなると、不安感受性が非常に高まり、些細なことにも不安になってしまい一時的な「確認病」へと繋がることも考えられます。他にも、広汎性発達障害の特性を持つお子さんは、独自のこだわりに強くとらわれてしまう傾向があります。物の位置や手順や行き方、日常の些細な選択であっても「間違えてはいけない」、自分は〇〇であらねばならない、など周囲には理解されにくいこだわりに自分自身も振り回され苦しんでいる状況が多く見られます。

確認病が始まった時の対処法、今後につながる症状緩和の対策とは

Q.パパママはどう対応したらよいのでしょうか。

【町田さん】 子どもの確認病が始まると、本人だけでなく周囲も同様の行動に巻き込まれることがあります。例えば、遊びに出かけた先で「ランドセルを確認したいから今すぐ家に帰って」と急に言い出すこともあるでしょう。そんな時、親が「家に帰りたい」という要求に応じないと泣き出したり、時には酷い癇癪を起こし暴れたりすることも少なくありません。そのような姿を見て、親はどうしても本人の言う通りに行動しがちです。

 しかし、これは“泣けば要求に応じてもらえる”、“暴れれば要求が通る”といった誤った行動を学習してしまうことになります。誤った学習をしてしまうことで、要求がどんどんエスカレートしていったり、自分で自分の気持ちをおさめたり、コントロールすることへ努力するのではなく、親や周囲の人にあたって気持ちを発散させることしか出来ないという未熟な精神発達に繋がってしまいます。ですので、子どもの確認病が始まった時は「今は帰れないよ。3時になったら車に乗ってお家に帰ろうね」といったように、状況を説明して見通しを持たせてあげ、少しでも気が紛れるように楽しいことへ誘導してあげてください。

 また、大勢の前で癇癪を起こしてしまった時は、トイレの個室やスペースの角や車の中など、刺激の少ない場所に連れていき、落ち着くまで声をかけずにそっと見守りましょう。落ち着いたタイミングで「じゃあ遊びに行こうか」と楽しいことへ誘導してあげてください。

Q.子どもの確認病は治りますか? 治すにはどうしたらよいでしょうか。

【町田さん】 非常に長い時間を要することになりますが、確認病を一時的に落ち着かせることはできます。うつ病などと同様、完治はなく、あくまで“寛解”と呼ばれ一時的に症状が消失した状態であるため、今後も寝不足が続き不安感受性が高まったり、強いストレスをきっかけとして再度同様の症状が見られたりすることもあります。

 しかし、具体的な対処法を身につけておけば、すぐにまた症状を落ち着かせることができます。対処法を身につける方法の一つとしておすすめなのが認知行動療法です。認知行動療法では認知や行動に働きかけて偏った考え方のバランスをとるほか、ストレスに上手に対処するこころの状態を作る具体的なスキルを身につけることが出来ます。

 中でも「段階的エクスポージャー療法」がおすすめです。不安や不快な感情を生じさせる事柄にあえて挑戦させることで、その感情に徐々に慣れさせていき不安や不快を生じさせる刺激と上手に付き合っていけるようになります。例えば、夜に何度もランドセルの確認をする子には、あえて“確認は1回まで”として翌日学校に行くように設定します。翌朝登校するまでは非常に苦しい時間が続きますが、翌朝学校へ行ってみて、忘れ物がなかったという結果が生じることで、安心につながります。これを何度も繰り返すことで、行き過ぎた不安や「確認しないといけない」というこだわりから解放され、本人が安心して日常生活が送れるようになります。

 8歳以上の子どもには薬を使った治療法もあります。一時的に強い不安やこだわりや衝動を抑えることができますので、落ち着いた状態の時間を利用して、ストレススキルを身につける練習をしたり、上記のような認知行動療法を試してみることで将来的なストレス対処能力の向上に繋がります。薬物治療は決して単独で行うのではなく、心理療法と組み合わせることでその効果をより一層長期的に発揮することができます。

 強い不安やこだわりのために日常生活や人間関係に支障が出来ている、大きなイベントが終わったけど症状が続いているということがあれば、ぜひ早めの受診を検討してください。受診の際には、児童精神科や心療内科がおすすめです。その医療機関が子どもの精神や発達の問題を取り扱っているか、カウンセリングが受けられるかもしくはカウンセリングの紹介をしてもらえるかなども確認されると良いでしょう。
町田奈穂さん

監修者 町田奈穂さん

大阪カウンセリングセンターBellflower代表。臨床心理士、公認心理師、日本睡眠学会所属。同志社大学大学院在学時より滋賀医科大学附属病院にて臨床・研究活動を行う。現在は、代表を務めるカウンセリングセンター事業のほか、精神・発達障害の人が活躍できるインクルーシブな職場づくりをサポートする人事コンサル活動を行う。

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