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月経症状による労働損失5700億円…“ピル後進国”日本に変化、企業側も動き出す「女性の可能性を潰さない」支援

2024-03-08 eltha

パーク24グループ、低用量ピルに関するセミナーを受ける社員の様子

パーク24グループ、低用量ピルに関するセミナーを受ける社員の様子

タイムズパーキング運営会社も支援、「痛み止めで十分では」の声に全社員に向けセミナー

 同じく、低用量ピルの補助をしているのは、時間貸駐車場のタイムズパーキングなどを運営するパーク24グループだ。オンライン診療による低用量ピルの処方に対して、診療費・送料・薬剤費の総額から30%を法人負担している。

 「女性活躍を推進することを目的に、出産や育児前後に限らず、広い世代の働く女性従業員により生き生きと活躍していただくための新たな施策として、PMSや月経随伴症状による生産性低下に着目して導入しました」(パーク24担当者、以下同)

 経済産業省の発表によると、月経にまつわる症状があっても出勤する割合は86.4%。うちパフォーマンスが低下すると感じている人は90%にものぼるという。それらのデータを踏まえ、同社では導入に向けた検討を重ねてきた。検討段階でのヒアリングや打ち合わせ内では、「気になっていたけれど使う勇気やタイミングがなかった」「使っているけれど、ちゃんとしたセミナーを受けたことがない」という声や、「診察を伴うピル処方は費用が高い」「痛み止めで十分では」という反応から、ピルについての正しい知識やメリットデメリットを知る機会を提供するため、全従業員に向けての活用セミナーを実施したという。

 「男性社員からは『全従業員向けに月経と生産性の関係に触れることについて、抵抗のある女性もいるのではないか』という心配の声もあがりました。しかし、男女や年齢に関係なく、誰しも心身の不調を感じる瞬間はあり、多様な人財の活躍を推進していくダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)の観点から考えると、今後は年齢・ジェンダーを超えて従業員全体で仕事と様々な心身の健康の両立について理解を深めることが大切と考え、本制度をスタートさせました」

月経随伴症状による損失は約5,700億円…、社員と会社の双方にメリットとなる支援を

 先の村田医師は、自身の体験も踏まえ、女性活躍推進における低用量ピルのメリットをこう語る。

 「私も生理痛が強く、妊娠を考えるまではずっとピルを飲んでいました。1ヵ月に数日、そうした日があるのは本当につらいですし、気分の変調も大きいために仕事の効率も落ちます。ピルはそうした不調を軽減するだけでなく、月経を移動できるタイプもあるので、大事な仕事や出張はもちろん、旅行などプライベートの予定を組む際にも役立ちます。福利厚生でピルの服用の支援を行う会社が増えることは、社員と会社の双方にとってメリットが大きいと思います」

 3月8日は世界女性デー。女性活躍推進のもと、経済産業省ヘルスケア産業課が今年発表した調査によると、月経随伴症状などによる労働生産性損失は、欠勤が約1,200億円、パフォーマンス低下が約4,500億円の計約5,700億円と試算されている。労働人口が減り続けている日本は、女性の活躍なしには成長はおぼつかない。職場でも、単に女性の気持ちを理解するよう心がければいいという時代から、女性が働く上での障害を取り除くために、職場のシステムを積極的に見直す時代へと変わってきたようだ。
村田佳菜子(ムラタカナコ) / クリニックフォア監修医

監修者 村田佳菜子(ムラタカナコ) / クリニックフォア監修医

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医/日本性科学会所属/女性性機能外来担当医師
婦人科医として勤務する傍ら、2019年から女性医療クリニックLUNAで女性性機能外来を担当。クライアントの気持ちや状況に寄り添いながら、あらゆる性の悩みに対し医学的にアプローチを行う。

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