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「男なら立ち向かえ!」いじめ受ける息子に価値観押し付ける父親、「自称イクメン」が引き起こす家庭内モラハラ

2022-04-25 eltha

 子どものいじめ問題が深刻化している。原因はひとつではないが、人気連載中のウェブコミック『エンドレス離婚〜もしも結婚生活をやり直せたなら〜』は、夫婦関係のゆがみや子どもへの親の関わり方、声がけの仕方の側面からも切り込んだ内容だ。愛する家族のために仕事に打ち込んできた“自称・いい夫”が、家庭崩壊を招いてしまったのはなぜか。子どもの生きづらさと、もっとも身近な大人である親の影響を描いた意図について、作者のびばるさんに話を聞いた。

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子どもの個性は無視、「男はこうあるべき」押し付ける父親

──モラハラ夫が主人公である本作に、子どものいじめ問題を盛り込んだ意図を教えてください。

びばるさん私自身、子どもの頃に過酷ないじめにあった経験があり、さらにほかのいじめられている子に何もできなかった経験もあります。当時を振り返ると、「人間関係でトラブルを生じさせてしまった要因のひとつに、親との関係のゆがみもあったのでは?」と思い当たる節があったんです。もちろんそれがすべてのいじめの原因ではないと思いますが、家族問題をテーマにした漫画を描くにあたって、子どもたちのエピソードは必ず入れたいと考えていて、プロットの段階から「いじめられている息子」、「いじめの加害者側になっていく娘」というキャラクターを想定していました。

──9歳の虎太郎くんは、クラスメイトを見下すようなところがあって、それがいじめられる原因となっているようです。

びばるさん彼は、勉強はできるんですけど、体育が苦手なんです。だけど父親の聡は、その個性をまったく見ることなく、「男の子なら、精神的にも肉体的にも強くあらねばならない!」みたいな価値観の持ち主なんです。

──たしかに「男なら」という発言が端々に出てきますね。

びばるさんそんな聡の影響で、虎太郎は体育ができない自分を恥ずかしく思うようになってしまったんですね。虎太郎がクラスメイトを「あいつらはバカだから」と見下げるのは、そんな自分を“肯定”するための自己防衛本能みたいなものなんです。だけどクラスメイトとしてはムカつくだろうし、それによっていじめがどんどんエスカレートしてしまう、というイメージで描いています。

「いじめから逃げる選択肢を持ってほしい」作者の想い

──いじめられている子どもに対して、父親は何をするべきか。聡は「ウェブ検索」で安易に答えを出そうとしますが、それが痛ましい出来事を引き起こしてしまいます。

びばるさんウェブ検索では、虎太郎個人の悩みはヒットしませんからね…。聡は一例として参考にすることはあっても、虎太郎という一個人のケースに短絡的に当てはめることはできないという事に気づくことができませんでした。

──でも、誤った選択肢を取りながらも、聡は虎太郎も含めた家族を心から愛しているんですよね。

びばるさんそうなんです。だから必死に虎太郎を守ろうとするのですが、虎太郎自身が見えていないためにかみ合わず、結局モラハラになってしまう。これは、聡の中に「男は苦難から逃げてはいけない」という凝り固まった価値観があるからなんですよね。

──妻の紀子が転校を提案したときも、「ここで逃がして甘やかしたって、虎太郎の将来のためにならない」みたいなことを言ってますよね。

びばるさん私も、いじめられていたときに同じようなことを親に言われて、泣きながら叩き出されたことがありました。当時はそれが当たり前のような価値観でしたし、親も私の将来を思ってそうしたと思うんです。だけど今の時代は、大人も子どもも「ポジティブに逃げる」という選択肢を持っておくことって大事だと思うんですよ。

──その選択肢を与えられなかったら、子どもは追い詰められてしまいますね。

びばるさん子どももそうですし、聡も気付かないまま自分で自分を追い詰めていたんです。どんなに嫌な思いをしても、家族を守るためにはこの会社にしがみつくしかないんだと。でもそうした思い込みが、「夫は外で働き、妻は家を守るもの」という価値観の固定につながっていて、ひいては「家のこと何も考えてないくせに、家族の一員になれると思わないで!」と離婚を突きつけられる原因になっていたんですよね。

──本作は、聡が離婚を回避しようとループして過去の過ちに気付いていくストーリーです。その過程で、虎太郎の転校について聡が一緒に悩んでくれたことを、紀子は「うれしい」と漏らしています。

びばるさん現代のいじめは複雑な問題が絡んでいますし、逃げることと立ち向かうこと、どちらがより良い選択肢かはその子の性格や状況によると思うんです。だからこそ短絡的に答えを出そうとせず、その子にとって一番いい解決方法を夫婦でもしっかり考えてあげることが理想ですよね。

──紀子が離婚を決意したのは、子どものためでもあったのでしょうか?

びばるさん要因はひとつではないですが、この父親のもとで育ったら子どもに悪影響だと考えたら、母親は子どもを守ろうとしますよね。また虎太郎に、「友だちを見下す態度」を植えつけてしまった原因は聡にあったわけで、聡自身が自分の問題に1つ1つ気づかない限りは、この漫画のモチーフである無限ループ地獄は続くと思います。

──理想の家族や、夫婦の関係性について考えさせられます。

びばるさん結婚して人生をともに過ごしていくなら、お互いの苦しみを分かち合って助け合っていけたらいいですよね。漫画では、ループを繰り返しながら聡もそのことに少しずつ気付いていくわけです。その過程を、エンタメ作品として楽しんでいただけたらと思います。

■「日本いのちの電話連盟」
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