ドラマでは「ろう者の約8割はろう者同士で結婚する」というセリフがあった。ととさんは「実際そうだし、『silent』はきちんと現実に向き合ってくれている」と証言する。
「これを言っていいかどうかわからないんですが──。ろう者としてはろう者と一緒にいるほうが気持ち的に楽なところもあるんです。僕も正直、聴者といて緊張してしまうことは今でもあります。おそらく聴者もそうだと思うんですけど」(ととさん)「ととさんがろう学校時代の友だちと話が弾んでいる横で、寂しいなと思ったことはたしかにありましたね。私は手話が完全に完璧というわけではないですから」(ゆうこさん) それでも2人は「ほかの誰でもなく、この人と人生を送りたい」と家族になった。人間は1人1人違うものであり、夏がだめだったりセロリが好きだったり、耳が聞こえたり聞こえなかったりする。そうした違いを受け入れながら距離を縮めた先に、夫婦やパートナーという形がある。ととさんとゆうこさんはそんなシンプルな幸せの答えにたどり着いた2人だ。
「紬ちゃんと想くんも大丈夫だよって言ってあげたいですね。周りが心配するのはとてもよくわかるけど大丈夫」(ととさん) 多くの視聴者と同じように、ととさんもゆうこさんも『silent』の2人のハッピーエンドを願っている。恋愛ドラマを見ながら恋人時代のような気持ちになることもあるのだろうか。
「ありますね、昔を思い出してちょっとときめいたりとか(照)」(ととさん)「私はそれはないですね(キッパリ)。純粋にドラマとして楽しんでいます」(ゆうこさん) ただ、伝える手段が違うだけ。2人のやりとりを見ていると、それは“障害”ではなく、また違うベクトルでお互いの気持ちを見つめ直すあり方なのだと思わされた。
(取材・文/児玉澄子)