女性の死亡率1位の「大腸がん」それでも検査をためらう理由は…40代になったら要注意、症状や原因を医師に聞いた
2023-11-27 eltha
死亡率1位なのに検診を受ける女性が少ない理由は
「そのため症状がしっかりと出てから受診し、進行性大腸がんになって見つかることも少なくありません。大腸がんが女性の死亡率1位のがんであることも、女性に定期的な大腸検査が十分に行われていないことを反映しているのかもしれません」(井藤先生/以下同)
男女ともに言えることですが、大腸がんが増えている背景は「日本人の食生活の欧米化」があります。肉食、特に赤み肉や加工肉は大腸がんの原因の一つです。
「近代社会ではデスクワークが増え、運動不足に陥りやすく、肥満やメタボリックシンドロームが増加していることは誰もが耳にしたことがあるでしょう。これも大腸がんの原因に。他にも過度な飲酒や喫煙習慣がある方もなりやすいと言えるでしょう。遺伝性の大腸がんもありますので家族が大腸がんの方も注意が必要です」
※人口動態統計がん死亡データ(がん死亡数の順位(2021年)より)
大腸がん検査の種類は? どんな病変が確認できるの?
(1)便潜血検査
便の一部を採取して便の中に混ざった血液を検出する検査です。大腸がんからの出血を間接的に見ています。しかし、あくまで見ているのは出血ですので痔などの別の病気で陽性になることもあります。大腸がん検診の一次検診で用いられます。
(2)大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入し大腸の一番奥まで入れ、ゆっくりと抜きながら大腸内を観察していきます。検査時間は15〜20分程。検査前日から消化の良い検査食に切り替え、当日は2リットルほどの下剤をゆっくり内服して腸内を洗浄します。
直接的に腸内を観察するため1〜2mmの病変から確認ができ、必要があればその場で切除することや組織をとって病理検査を行うことが可能です。大腸がん検診の二次検診で用いられます。
(3)大腸3DCT検査
肛門に太さ6mm程度の柔らかいチューブを5cmほど挿入し、炭酸ガスを注入し大腸を拡張させてCT撮影します。撮影はテストも含めて3回ほどで、実際の検査時間は15分程。内視鏡検査のように大量の下剤内服は必要なく、前日の食事の際に造影剤のシロップを内服するだけです。
発見できる病変のサイズは5〜6mm以上のもので、病変があったらその後に大腸内視鏡検査が推奨されます。
無症状で気づきにくい…初期症状は?
「無痛MRI乳がん検査(痛くない乳がん検査)として、2018年より検査が開始された新しい乳がん検査です。DWIBS法という撮影方法を利用しており、放射線被曝がないこと、造影剤が不要なこと、デンスブレストに影響されないこと、着衣のまま受けられることがメリットです」
検査としては、15分うつ伏せになっているだけ。井藤先生の病院で受診が可能。乳がんは気になるけれど検査が心配…という人は一度相談してみては。
早期の自覚症状は“ほぼない”、セルフチェックと定期的な検診が重要に
「肛門に近い大腸であれば比較的早く血便や便が細くなるという症状が出ますが、遠い右側の大腸は症状が出にくく症状が出た時はかなり大きくなった状態である場合も少なくありません。そのため大腸がんの早期発見には定期的な検査が大切になります」
女性ならではの症状はあるのでしょうか?
「女性においては慢性的な便秘が多いことが知られています。肛門からの出血など便秘と大腸がんの初期症状が似ているため早期の兆候を見逃しやすいことは覚えておく必要があります」
予防方法や生活習慣で心がけることは?
ですが、違う病気で陽性になることや、早期の大腸がんでは出血がなく反応しないことも。そのため、大腸内視鏡検査や大腸3DCT検査を受けることも必要になってきます。
生活習慣改善においては、運動不足の方は適度な運動を生活に取り入れたり、赤み肉や加工肉が好きな人は野菜、魚を中心に摂取する日を作ってみたりと、生活の一部を工夫してみることが予防に効果的。過度な飲酒を避け、禁煙することは大腸がんだけでなく他疾患の予防にも有効です。
「40歳を過ぎたら定期的ながん検査や人間ドックを受診するとともに、バランスのとれた食生活・運動を心がけて過ごしましょう」
監修者 井藤尚武先生
医療法人社団斗南堂八王子クリニック新町院長。日本外科学会専門医。2013年、愛知医科大学医学部卒業。東京女子医科大学東医療センター、中通総合病院、流山中央病院、Weill Cornell Medicine(米国留学)を経て2021年から八王子クリニック新町の院長となる。消化器の外来診療、肛門病の日帰り手術、消化器内視鏡をはじめ、健診や人間ドックなどの予防医学、在宅医療に従事している。また、AIを得意としComputer visonによる転倒検知システム、院内の予約システム、人間ドックのコメント作成システムなどを現場の視点で自らが作成している。専門分野は一般外科、消化器全般、肛門病、AI関連業務。