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「恋愛NG」の女性限定マッチングアプリが需要拡大 “SNS友達”に疑心暗鬼…本音で話せる“親友”への羨望

2024-09-27 09:10 eltha

 男女の恋愛を目的としたマッチングアプリが市場拡大を続けるなか、一線を画しているのが、恋愛は禁止、純粋な友達作りを目的とした女性限定のマッチングアプリ「Touch(タッチ)」だ。スマホひとつで簡単に誰かと繋がれる世の中ではあるが、コロナ禍以降、「“孤独”を感じる頻度が増えた人が多い」という。マッチングアプリといえば男女の恋愛というイメージが強いなか、なぜ恋愛目的ではない女性限定のマッチングアプリが生み出されたのか。アプリを開発した、クルージュ株式会社の代表取締役社長・林田色さんに話を聞いた。

友達作りの女性限定マッチングアプリ「Touch」

友達作りの女性限定マッチングアプリ「Touch」

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■目に見えない孤独が蔓延する現代社会、「男女のマッチングアプリはもうおなかいっぱい」の声

 「Touch」は、趣味や仕事の話をできる友達探しの場として提供されているマッチングアプリ。純粋に友達作りを目的としたユーザーのみで構成され、“恋愛トーク”はOKだが、“恋愛目的”の声掛けや交際はNGとされている。アプリを使用できるのは、戸籍上の女性のみ。公的な身分証明書で本人確認を行うなど、男性が入り込まないよう徹底されている。

 “女性限定”の“友達作り”に特化した背景として、そもそも女性は異性と出会うことに「疲れ切っている」現状があると話すのは、アプリを開発したクルージュ株式会社の林田さん。

 「もともと男女のマッチングアプリを作ろうと、アンケート調査をしていたのですが、その際、男性からは『そのサービスいいね!』と言われる一方で、女性からは『男女のマッチングアプリはもうおなかいっぱい』『私は女性同士で繋がりたい』という声が多かったんです。始めはその声を信じきれなかったのですが、2000人以上の聞き取りを経て、あまりにも同様の意見が多いことに驚き、開発を検討することになりました」(林田さん/以下同)

 さらに、自身の母親の体験も、アプリ開発の決め手になったという。ライフステージが変わりゆく女性が感じる“見えない孤独”に気付いた経験を林田さんは明かす。

 「母は地方出身で、結婚を機に上京してきた人です。初めて子育てするなか、周りに相談できる友達がいなくて、辛かったことを話していたんです。私自身、小さいながらも母親が毎日泣いていたことは知っていたので、孤独を埋める…ではないですが、同じ境遇の女性と繋がれるアプリがあったら当時の私の母も救われたのではないかと。調査結果をふまえて、確信しました」

 リリース後、約1年で累計マッチング数20万回を突破。2024年8月の段階では80万回を超えている。実績を伸ばした理由のひとつは、“友達作り”というアプリの特性だ。夫や恋人を探すのとは違い、友達は何人作っても問題はない。コロナ禍以降に増えたリモート化されるコミュニケーションも、ユーザーの“つながりたい気持ち”を後押ししている。

■ライフステージの変化で“本音が言えない”関係性に「SNSは繊細な話を相談できる場所として機能していない」

「Touch」を開発した林田色氏

「Touch」を開発した林田色氏

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 現代はSNSなどのコミュニケーションツールが多く存在し、スマホひとつで誰でも簡単に孤独を埋められるようにも思えるが、実際は多くの人が「目に見えない孤独」を抱える現状がある。SNSで双方でのコミュニケーションがとれることは稀で、ほとんどが“見る専門”に留まっている。「自分の本当の気持ちを吐露したり、繊細な話を相談できる場所としては機能していない」という。

 「結婚した友達や赤ちゃんを産んだ友達のSNSを見れば、情報は共有できるし、友達という根っこの部分では変わらない繋がりがある。でも以前のような何でも言い合える関係性を保てているかと言われると、ライフステージがそれぞれ違うので、興味や関心、悩みなども噛み合わなくなってしまう。そんな時、自分と同じ環境の人と繋がりたいと思ったら、それが叶う世界線がタッチにはある。同志を探せる点が一般的なSNSとは大きく違う点だと思います」

 アプリ内を整備するだけではなく、リアルでのイベントも過去に2度ほど開催。ユーザー同士の新しいコミュニケーションの場を作ろうと試行錯誤を重ねている。

 「就活中の学生が普段接することのない社会人ユーザーとの会話を通し、仕事の熱量や生き方に触れ、参加して良かったと話をしていました。アプリでのつながりも大事ですが、やはりリアルで顔を合わせて、話をしたり何かを一緒にしたりする体験は精神衛生上も良いですし、その時間の幸福度は高いのかなと感じています」

■繋がりから生まれる前向きな気持ち、第二の人生を見つけ命を救われた女性も

 アプリの利用者は20代のいわゆる“Z世代”が約7割。マッチングアプリやSNSに慣れていることから、気軽に登録して、気軽に友達を作って楽しんでいるという。

 「美容整形にお勧めのクリニックは?」「就活生だけど、この仕事について知りたい!」など、情報収集系のマッチングも多く、世代を超えた繋がりが生まれることも。40代以上はマッチングアプリへの抵抗が強い傾向にあるが、人生経験を経たからこそ「人と繋がる喜びを感じる人も多い」のだという。

 「1年以上毎日アプリを利用している40代の方に聞き取り調査をしたのですが、その方は初めてのマッチングで、隣の駅に住んでいる方と出会い、自転車で待ち合わせをしたそうで『普通の生活では隣の駅に住んでいる人とは出会えない。これは発明ですね!』と喜んでいらっしゃいました。出かけることが楽しくなり、3ヵ月で約20キロのダイエットにも成功したと。『第二の人生をどうしようか考えている時にタッチに出会えて、今、幸せです!』と話してくださいました」

 その一方で、辛いときに誰かに寄り添ってもらえたことで、命が救われたという出来事も。深夜0時過ぎ、23歳の女性が「死にたい』とつぶやいたとき、47歳の女性が反応し、“命の電話”のリンクを送り、メッセージのやりとりが行われた。

 「その女性は、過去に自分も死にたいと思うほどの苦しい経験をしていたそうで、23歳の女性に『少しでも話を聞くよ』と伝えました。彼女の孤独感を少しでも和らげられたらとの思いで、言葉を掛けたのだそうです。何度かメッセージのやり取りをした後、一時的に連絡が途絶えてしまいましたが、次の日に『大丈夫』との連絡があり、ほっとしたというエピソードをユーザー様から伺いました」

 辛いときにたった一人では前向きな気持ちになれない。いかに寄り添い、共感してくれる人がいるか。「“目に見えない孤独”を埋めてくれる存在がきっとみつかる。そういう場を提供することがいかに重要であるかを考えさせられました」。

■男性が無双するSNSやマッチングアプリ、疲弊する女性たちの心に寄り添うサードプレイスの必要性

ランニングイベントの様子

ランニングイベントの様子

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 出会い系アプリが怖いと思われる理由の一つが、恋愛トラブルや怪しいビジネスへの勧誘、詐欺などのトラブル。しかし、タッチが始まってから約2年間、男性とのトラブルは一度もないという。アプリ内の治安が保たれている理由は、「ユーザーの質」。登録の際、厳しい関門を設けることと、違反者の徹底排除を行うことで、治安維持に努めている。

 「ユーザー登録する際、必ず公的な身分証明書での本人確認をお願いしています。戸籍上の性別が女性の方のみが利用できるサービスで、例外は設けていないので、男性が入ってのトラブルは1度も発生していません。違反報告があり、事実が認められたら即アカウント停止という厳しい措置を取っているので、純粋に友達作りを楽しめるプラットフォームを維持できていると自負しています」

 徹底した違反行為の排除、ユーザーの質の向上を目指した結果、アプリ内の空気感は、温かいものになり、男性が関わることで発生する誤解やトラブルに辟易していた女性にとっては、安息の地といえそうだ。

 「表現が難しいのですが、他のSNSやマッチングアプリは、男性が無双している状態。女性たちが集まって話している時に変な男が現れてスカートめくりしてくる、そんな感覚です。女性同士の会話中、男性にちょっかいをかけられるとウザイですよね。でも、そんな状況が横行しているんです」

 実際、男性と女性のアカウントが対立し、大炎上するなどの“事件”も起きている。ポテトサラダぐらい自分で作れというバトル、いわゆる「ポテサラ論争」などは、記憶に新しい。「SNSや男女のマッチングアプリは発達しましたが、女性たちは、そういった場所に疲れてしまっているのだと思います」と林田さん。

 「この5年10年、アプリで人と出会うことに抵抗がなくなりましたが、秩序というところまでセットで伸びきれていないのかマッチングアプリの現状なのかなと。孤独は1日15本タバコを吸うのと同等の健康悪であると言われていますが、孤独が蔓延している現代社会では、ピュアに繋がれる場所はとても重要だと感じています。タッチがそういった女性たちの居場所、いわゆるサードプレイス(学校や職場、家庭とは異なる心地の良い第三の場所)となってくれるよう、これからも居心地の良い場所を提供していきたいと思います」

(取材・文/森下なつ)



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