ホーム メイク・コスメ・スキンケア > 「美容部員の”敷居高い”イメージを払拭させる」創業150周年の老舗化粧品メーカーが”社員インフルエンサー”に取り組む意味

「美容部員の”敷居高い”イメージを払拭させる」創業150周年の老舗化粧品メーカーが”社員インフルエンサー”に取り組む意味

2022-06-01 eltha

資生堂では、46名のビューティーコンサルタント(BC)がSNSで発信している

資生堂では、46名のビューティーコンサルタント(BC)がSNSで発信している

 大手化粧品メーカー資生堂が行った”SNS戦略”がツイッターで話題になった。46名の美容部員がインフルエンサー化し、一斉にアカウントを開設したのだ。ユーザーからは「資生堂が本気出してきた」「社員のSNS投稿はリスクがあることだけど、信頼における人材をこれだけ揃えるのはすごい」などと反響を集めている。創業150年の節目を迎える老舗が考える、SNSとの向き合い方とは?

SNSに関わるのは「新しいチームで」 大きな組織だからこそのデジタル戦略

資生堂ビューティーコンサルタント(BC)の原点。誕生当時は「ミスシセイドウ」という名称だった

資生堂ビューティーコンサルタント(BC)の原点。1934年の誕生当時は「ミスシセイドウ」という名称だった

 eltha by ORICON NEWSの取材に回答してくれたのは、資生堂インタラクティブビューティーの河原由香理さん。資生堂で”ビューティーコンサルタント(BC)”と呼ばれる美容部員からSNS発信などのデジタル活動を行う候補者を募り、選抜された46名の社員インフルエンサーを統括している。

「SNSを含むデジタル化の取り組みは、プロモーション施策として実施したわけではなく、デジタル、SNSを用いてお客さまとの関係を深めたいと思い始めた取り組みでした。当社は規模が大きいので、何かを変えようとすると莫大な時間とパワーが必要なことが多く、特にデジタルとなるとその傾向が強いです。そのため、デジタルを専門的に扱う部隊をつくるべくBCを公募したという流れです。新しい会社、チームなので、『失敗を恐れることなく、新しいことにどんどんチャレンジしていこう』という気持ちで、自分たちでPDCAを回しながら進めています」

 SNSの取り組みが始まったのは、2021年4月だったという。コロナによる緊急事態宣言下で、コスメカウンターにおける接客の手法も変更を余儀なくされていた時期だった。

「デジタル化の流れは、たとえコロナ禍じゃなくても、ある程度進められていたとは思います。以前はお店で待っていれば、お客様にお越しいただけました。でも、店も閉めなければいけなくなった。再開しても、これまで行っていた接客ができなくなり、どうすればいいのかを考えるタイミングではありました。コロナ禍があって、さらに加速度を増して取り組みが進んでいきました」

美容部員の”敷居が高い”イメージを変える「SNSから自分に合う人を見つけてほしい」

 SNSですべてが可視化されるようになってから、度々話題にあがっていたのが美容部員のイメージ問題。ネガティブなうわさは拡散されやすく、さらに大きな問題となって広がっていく。「もともと、美容部員のイメージとして”話していると緊張する”、”敷居が高い”といったイメージがある。そのイメージをとにかく払拭させたかった」と河原さん。

「実際はそんなことはなく、接客を受けてみると『親身になって話を聞いてくれた』『知らないことを教えてくれた』という声もいただきます。美容部員を身近に感じてもらいたかったというのも、SNSの施策を行った理由のひとつなんです。あえて個性を出して、46人のBCを揃えました。それぞれお客様によって共感するポイントは異なると思いますので、自分に合う人を見つけていただきたいです。

 投稿のルールについては、「個性を出してほしいので、トンマナなどこちらで指示・指定することはない」という。「写真の撮影から文章のクリエイティブまで、それぞれの自主性に任せています。投稿する前にチーム内の複数人でチェックはします。必要に応じて、社内の専門部門に相談することもあります。私や他のマネージャー陣が見ると、『なんでこんな言葉使うんだろう? ここにくる絵文字の意味はなんだろう?』と投稿文の表現まで気になってしまうんですが(笑)、そこを修正するのはナンセンス。SNSに通じる世代の表現を損なわないようにしています」

美容法からヘアアレンジまで投稿…個性や経歴を活かした発信

 同社でビューティーコンサルタント(BC)として情報発信をするmaimaiさんは、美容部員として働く以前、ブライダルのヘアメイクを担当していた。彼女のインスタグラムには「イエベ春」「乾燥肌」「丸顔」「30歳」「ヘアメイクが得意」と自身を表すキーワードが並び、その内容はヘアアレンジのテクニックにまで及ぶ。自社の商品を直接的に紹介する方法だけではなく、「ヘアアレンジとセットでメイクを楽しんでほしいから」と自身の得意な分野を発信することで個性を出している。

「46名のなかで、私のカラーをどう出していくかを考えました。30代という年齢、パーソナルカラー、肌質など、自分の特徴をまとめて判断してもらえるようにしています。メイクに合わせたヘアアレンジまで発信していて、私の経歴も強味になっています。最初はだいぶ苦労しましたが、今は慣れてきて色々な切り口で投稿を試せるようになりました。様々な美容インフルエンサーさんを見て、日々研究しています」(maimaiさん)

 河原さんは「チームでやっていること、お客様からの反響をいただけていることがモチベーションになっている」と話す。

「お客様との距離は確実に近づいています。発信していくなかで、人(BC)を介してブランドや商品を伝えるニーズが高まっているのを感じています。お客様は『あなたはどう思ったの?』ということが知りたいのです。当社が老舗であることは関係なく、社員がSNSを発信するのは当然の流れでした」

 資生堂の一番の資産は、”ブランド・商品”と”美容部員”だという。「これからはブランドが発信するものもあれば、人を介して発信する情報があってもいい。この取り組みが、全国に8000人いるBCの働き方をも変えるものになればいい」と、美容部員の職業が今後さらに多様化していく可能性を示した。

「デジタルがさらに進めば、北海道のBCが沖縄県在住のお客様を接客することもできますし、世界へ広がっていく可能性だってあります。変わるもの、変わらないものがあるなかで、新しいものをどう作るか。場所、時間にとらわれることなく、今後もお客様とのコミュニケーションを作っていきます」

1 2 >

Facebook

関連リンク

あなたにおすすめの記事

おすすめコンテンツ


P R
お悩み調査実施中! アンケートモニター登録はコチラ

eltha(エルザ by オリコンニュース)

ページトップへ