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ブラジャーの装飾、何のためにある? “リラックス”信仰の裏で、売り上げ145%増 “セクシー”の捉え方の変化がブランドを強固に

2024-01-26 eltha

 女性インナーのトレンドが変わりつつある。コロナ禍に需要が高まったブラトップやノンワイヤーブラといったリラックス重視かつ手に取りやすい価格の下着は今も一定の支持を得ているが、一方でその真逆ともいえる「劇的セクシー」をコンセプトにしたデコラティブでボディメイク重視、かつ高価格なランジェリーブランドが着実に売上を伸ばしているようだ。そのキーには“セクシー”の捉え方に変化があるという。

SNSには「#サルート女子」タグで注目 高価格でも「日常用と保存用を2セット買う」ファン途絶えないワケ

 一度ハマると他の下着は身につけられない──。そうした熱烈なファンを数多く持つ株式会社ワコールが展開する「サルート(Salute)」は、下着専門店限定のブランドとして1983年からインナーウェアの販売を開始した。特徴は細部にまでこだわりぬいた華やかかつ大胆なデザインで、中でもひと際目を引く大きな花のモチーフは「サルート」の象徴だ。「目指しているのは絵画のような芸術的な美しさ」(株式会社ワコール 商品本部 第1ブランドグループ サルートブランドチーム チーフデザイナー・小島沙弥香さん)というように、繊細な刺繍や立体感のあるアップリケ、独自性のあるカラーリングにより、他にはない唯一無二のデザインのランジェリーを展開している。

「当時は下着からおしゃれをするという感覚がまだ日本に定着していませんでした。ブラジャーとショーツなどコーディネートしてインナーウェアを楽しむという価値観を提案していったところから、『サルート』のファッション性が生まれたと聞いています」(同上)

 価格もそれなりに張り、ブラジャーとショーツをセットアップするだけでも1〜2万円はゆうに超える。それでも新作が出るたびに「同じシリーズを色違いで買いそろえる」「日常用と保存用を2セット買う」というファンは多く、SNSには「#サルート女子」というタグ付きで自慢のコレクションを披露する投稿も見られる。

「中には『昔のコレクションも大切にしている』『捨てるときはアップリケだけ取っておく』というお客さまもいらっしゃって、デザイナーとしてはうれしい限りですね」(同上)

 価格にしてもデザインにしても、マス受けというよりは一部の熱狂的なランジェリー好きとも思える「サルート」。しかも近年のインナーのトレンドは「シンプル」「リラックス」「プチプラ」が定説だったはず。ところが──。

「コロナが最も猛威を振るった2020年を除き、ここ10年の売上は右肩上がりです。2022年度の実績は、2013年度対比で145%と大きく伸長しています」(商品本部 第1ブランドグループ サルートブランドチーム MD・山本久美子さん)

大型ショッピングセンター増加で一時は危機…“劇的セクシー”路線にシフトチェンジの背景

 しかしながら、危機もあった。2000年代、大型ショッピングセンターの出店が盛んになったことによってサルートを取り扱う下着専門店は閉店が続いた。

「地方の下着専門店が廃業することで、“『サルート』を買える店”がなくなる地域が出てきました。販路面の課題やブランドを更に成長させていく為に既存の下着専門店で購入されているお客様のニーズを捉えながらも、20〜30代の女性をモデルにした都市型のデザインテイストにシフトチェンジしました」

 それが“劇的セクシー”というコンセプトにつながっていく。顧客が好きな「お店」として信頼関係を築くには、単なる「モノ」ではなく、顧客に支持される価値と明確な個性が必要不可欠と考え、下着をよりファッショナブルに、もっとセクシーに楽しんでいくという方向へ大胆にシフトしたのだ。また、技術の進化によって、より緻密で繊細なデザイン表現が可能になり、「サルート」らしい独自性のある世界観をつくりあげることができるようになった。

「『サルート』はいわばオンのインナー。近年のトレンドの1つとなっていた“飾らないリラックスインナー”とは真逆のコンセプトです。ただオン・オフ問わずサルートしか着けないというファンは多いですし、特に『勝負の日に『サルート』は欠かせない』とおっしゃいますね」(小島さん)

 勝負の日の下着といえば、対異性のためというイメージがある。

「もちろんデートの日の特別な1枚として『サルート』を選んでいただく方もいます。ただ現代の女性にとっての“勝負”はそれだけではありません。『絶対にキメたい仕事がある日は『サルート』を身に着ける』とおっしゃる方がいるように、勝負の相手は他者ではなく自分。肌に一番近いところに着ける下着は、身も心も高めて臨む“おまじない”のような存在になっているのではないでしょうか」(小島さん)

 「サルート」がブランド立ち上げ以来、一貫してこだわってきた“セクシー”の捉え方も時代によって変わっていった。

「かつては“セクシー=異性への性的アピール”の意味合いがあったと思います。しかし近年は男性ウケを狙うのではなく、“芯がある自立したカッコいい女性=セクシー”と捉えられるようになっています。ヒップを鍛えるなどボディメイクに勤しむ女性たちが口を揃えて『モテよりも自己表現のため』とおっしゃるのも、そうした価値観の現れだと思います」(小島さん)

 サルートのファンには夜職の女性も多い。華やかでパワフルな彼女たちを「サルート」がエンパワメントしていることは間違いない。

 また、「インフルエンサーとして同性からの憧れを集める方も多く、SNSでサルートを紹介してくださった際には、来店やお問い合わせが増えます」(山本さん)という証言からも、彼女たちが身につけるものに魅力を感じ、その強く美しく生きる姿に共感する女性もいるようだ。

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