美尻トレーナー・岡部友、筋トレでやせても「人生すべてうまくいくは幻想」
2018-06-29 eltha
英語力ゼロで単身渡米、そのときの小さな成功体験が自信になった
グラマラスな見た目とは裏腹に、自身でも「男勝りな性格」と話す岡部。それは、トレーニングを始めた頃から変わらない。ウェイトルームに女の子はひとりだったというが、周りの目は一切気にならなかった。
「放課後は陸上の練習をしたいから、お昼時間を利用してトレーニングしてましたね。お弁当を3時間目の授業のあとに食べて、4時間目が終わったらウェイトルームにまっしぐら。友達も“友は筋トレの時間だよね”って受け入れてくれていました」
「英語力はほぼゼロ。たまたま自分の勉強したいことが、その学校のその学部にあったから選んだんですが、向こうに行ったら、言葉が通じない、わからないことがすごく辛くて…。半年くらい泣いてましたね(笑)」
乗り越えるためには、ただ話すしかなかった。半年経つころには、少しずつ上達し、コミュニケーションがとれるようになっていった。そして、大学在学中にプロアスリートに指導できるスポーツトレーナーが保持する資格NSCA-CSCSを取得する。
「それが小さな成功体験として自信になりました。今でもしんどいことがあると、このときのことを思い出すんです。『それでもできたんだから、大丈夫!』って」
スポーツトレーナーからパーソナルトレーナーへの転換
日本の女の子たちは、世の中で可愛いとされているスタイルに合わせているだけで、自分がないように見えた。他人からの評価を重視するあまりクローン化してしまった彼女たちが、自己を確立するには、自信をつけることが大事ではないか? トレーニングで自分の身体と向き合い、自分の努力で見た目を変えることができたら、きっと大きな自信につながる……。
大学に戻るとスポーツ科学部からフィットネス学部に転部。フィットネスにまつわる心理学や運動生理学を学びながら、パーソナルトレーナーとしての知識を身につけた。
トレーニングで変えられない部分があることも、この時に学んだという。
「実は、自分のふくらはぎの形がコンプレックスで…“なんで私のふくらはぎはこんなに大きいんだろう。もう少し小さくて女子らしい、速そうな脚になりたい”と思っていたんです。でもトレーニングしても理想の形にはならなかった。父のふくらはぎを見てみたら、(大きさや筋肉のつき方が)私と一緒。“これは遺伝か”って(笑)」
遺伝や骨格など、努力ではどうにもならない部分がある。一方で、努力すれば理想までもっていける部分もある。さまざまなアプローチから、女性が美しく見えるボディメイクのメソッドを確立し、帰国後、女性専用のトレーニングジムを開設した。
トレーニングで外見がキレイになるのは“おまけ”
自身の著書『筋トレが折れない私をつくる』にも“伝えたいのは、自分の力で自分の理想までもっていく、というトレーニングの過程で、心を鍛えてほしいということ。外見がキレイになるのはおまけ”“トレーニングは自分らしく生きる力をつけるための手段”と記す。
「せっかく新しい自分になるためにトレーニングを始めても、なぜするのかという根底がしっかりしてないと、続かない。ダイエットジプシーにならないためにも、まずは心をしっかりさせることがとても大切なんです」
「最近のフィットネスブームはとても嬉しいこと。でも反面、間違った姿勢で取り組んでいる女性が多いようにも感じ、不安を覚えています。トレーニングでやせても人生がすべてうまくいくわけじゃない。人生うまくいかない時に乗り越える力をつけられるのがトレーニング。辛いことや大変なことが人生で起きても逃げずに乗り越える力をつけておく、自分と向き合う練習ができるのが身体づくりです」
これから挑戦する人には、心身を正しい方向に導ける専門知識のあるトレーナーを見極めて欲しいと話す。
「最初は誰かのようになりたいとか、そういうモチベーションがきっかけでも、行動に移したあとは、他人と比べないこと」
以前の自分と比べて今の自分がよくなっているか、客観視することがトレーニングを成功させる秘訣という。そして、そこから得た自信の積み重ねが“自立心”を作り、心を鍛える。日本に自立女子を増やすことが“尻トレ女神”の願いだ。
取材・文/今井洋子 撮影/臼田洋一郎
岡部友『筋トレが折れない私をつくる!』
宝島社/本体価格1,300円
PROFILE
岡部友(おかべとも) 株式会社ヴィーナスジャパン代表取締役。女性専門のパーソナルトレーナーとしてボディメイクからライフスタイルまでサポート。女性専用フリーウェイトジム「Spice up Fitness」を運営。著書に『美尻トレ 究極のヒップメイク』(文芸春秋)、『筋トレが折れない私をつくる!』(宝島社)がある。